マテリアー

永井 彰

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魔法の剣

杖魔

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「テック、ちょっと組手でもしねぇか」

 ガーンダムが、テックに話しかけてきた。宿はいわゆる民宿で、一ヶ所あたり十名ほどが割り当てられる。
 そして、テックはガーンダムと同じ宿だったのだ。

「ええ、面倒くせえよ。釣りに向けて、今日は早く寝てえしな」
「どっせい」

 勝手に組手を仕掛けてきたガーンダムを無視していると、夕食の時間となった。
 観光地として力を入れ出したのもあり、至高の島ならではの魚介料理だ。ソテーや魚介パエリア、パスタなど結構な量でお腹が満足しないわけがなく、テックたちは皆、完食した後でお腹をさすっていた。

「さあ、組手やろうぜ」
「いや、風呂入って、寝るし」
「じゃあせめて、夜風に当たろうじゃないか」

 よく分からないテンションのガーンダムと外に出た。
 冒険者会ギルドからの要請で、武器などの最低限の装備は室内でない時には着用が義務付けられている。
 冒険者を人材として扱うギルドは冒険学校の上部組織なので、という事情があるが、ここでそこまで気にして読む必要はない。

「テックはなんで、冒険者になりたいんだ」
「強くならないといけねえ人生なんだ」
「なんだ、そりゃ。なら、真空弾くらい使えるようになったか」

 ガーンダムとしては、心配のつもりだろう。しかしテックは、それがしゃくに触わるのだ。

「別に、お前には関係ねえだろ」
「おい。なんだその態度は」

 「ケンカ売ってんのか」とでも言おうとしたのであろうガーンダムは、急にテックを押し退けた。二人とも倒れた格好だ。

「何をするんだ、ガーンダム。この野郎」
「マジにやめろ。で、すぐに適当な向きに避けろ」

 言うなりガーンダムは起き上がりざまに何か・・に真空弾を放った。
 そして言われたように、テックはテックで適当に動いたが、次の瞬間、我が目を疑った。


「剣の勇者よ。久しぶりだな」
「お前。ムオル・・・!」

 刺客〈錆の者〉ムオル。それが黒界カオスを展開せず、遂に現実世界に姿を現したのだ。

「テック。化け物と知り合いなんて聞いてねえぞ」

 会話を聞くや否や、ガーンダムはもっともな反応を見せた。ガーンダムは強いが、魔法剣とは無関係の冒険学校の学生に過ぎないからだ。
 ただ、言葉からすると、どうやらガーンダムも刺客の姿は認識しているらしいのだ。

「刺客め、覚悟しろ」

 テックは決断を下し、第二剣コマンドメントを召喚した。決断と言うのは、ガーンダムという部外者に正体を明かす決断だ。

「テック、お前のそれは、何だ」
「魔法剣。俺、ちょっとだけ魔法使いなんだ」
「何者なんだ、お前は」
「死の女神に選ばれた、刺客ぶっ倒し男」

 分かりやすく説明したつもりのテックだが、どこまでを理解し、どこまでを信じたかは分からない。しかしガーンダムは未知の怪物に動じないテックを、ただ見守ることにしたようだ。

杖魔じょうまだ。我々は杖魔。刺客とは、貴殿らの勝手な呼び名。我らこそ魂の杖より生まれし者。人間に裁きを与える者」
「ムオル。俺は、お前に勝つ。勝ち続ける」
「いや、それがしは戦わない。魂の杖の力を見るが良い」

 言うなり、ムオルは魂の杖を取り出した。

「杖はお前が壊したぞ。予備でもあんのか?」
「某が存在すれば、杖は消えない。杖魔は魂の杖その物なのだ」

 そして、ムオルは魂の杖を掲げた。杖は怪しい輝きを放ち、邪悪な気すら漂わせた。

 すると、ムオルを小さくしたような黒い小鬼が百以上出現したのだ。

黒小鬼こくしょうきども。人間を全て殺すのだ」

 そう告げると、ムオルは煙のように消えてしまった。

「げっ、テック。コイツらは、どうすりゃ良いんだ」
「そんな事より、みんなを連れて遠くに逃げろ。とりあえず、俺が倒せるだけ倒す」

 ガーンダムは頷き、一心不乱に宿に入っていった。他の学生や、民宿の人たちも連れて行かねばならない。ガーンダムはこの状況下でそうした判断力を持つ点で、頼りになる存在だ。


「キギャーッギィイ」
「ギュラーッキギギキ」
「ギーオォオオォオ」

 だが、黒小鬼と呼ばれたミニ・ムオルは素早く、様々に飛び去ってしまった。

「あっ、クソ。速すぎる」

 しかも更に悪い事に、残った10匹程度はテックに向かって連携攻撃を間断なく繰り出してきたのだ。

「ぐっ、第五剣フィフス点星てんせい

 乱れ突きをしつつ、足を止めずに攻撃の支点を悟らせない第二剣剣技の最後の型だ。

「ギョバギ」
「ババギギーバッ」
「ギョン」

 ダメージを負った黒小鬼は次々に消滅していった。魔法剣が持つ反魔法アンチ・マジックの力が、常にテックの実力以上の効果を刺客やその手先に与えるのである。

「ちっ、仕方ない。癪だけど第三剣マントラだ」

 マントラでテックが転移したのは、神託の庭だ。

「ババア、どうせ見えてたろ?キジュアが必要なんだ」
「安心しな。もう送り込んだんだぜ」

 そしてここから、勇者たちの快進撃が始まるのだった。
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