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魔法の剣
鬼面ビッグファング
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第三剣、真言。
人間の住む世界と、神の世界を行き来するための転移装置としての魔法剣だ。
しかしテックが神薬修行で手にした魔力は、第三剣を進化させた。
数メートルの短い距離なら、方陣転移のように扱えるのだ。ちなみに、この物語における方陣は魔方陣と同義とする。
方陣転移とは、方陣に肉体を預け霊体に近い、魔力だけの体に変えてもらう。そして軽くなった体を、方陣ごと飛ばすのが方陣転移だ。
原理は方陣転移そのものだが、本来は高度な方陣が必要なのを第三剣が簡単にしている。よって、結局テックがしたのは方陣転移なのである。
そしてテックは方陣転移を駆使し、次々に鬼化した魔物を倒していった。
鬼化していても、今のテックには普通の魔物が速くなったヤツ、程度にしか分からない。それ以上の特殊な技を持っていても一瞬で倒してしまうからだ。
ビッグファング以外の魔物は、再び倒した。よほど強力な強化がされていれば別だが、更に復活してくる事はないだろう。
鬼の顔になった、鬼面と呼ぶべきであろう強化ビッグファング。まるでムオルがそのままヘビになったような凄みの効いた迫力だけで、一般人は戦意を喪失してしまうはずだ。
しゅるる。
鬼面蛇はただ移動しただけだが、まるで方陣転移を使ったかのように瞬間的に数メートルを移動した。
(くあっ、コイツは本当に強えぞ)
噛みつきだけで、1秒に70連続ほど来るのがテックには手にとるように分かった。
日頃の鍛練がなければ、魔法剣だけでは回避が間に合わなかっただろう。
しゅるっしゅるるるる!
高速巻き付きだ。テックの全身を包むように、強い締め付けと共にビッグファング本来の得意技が、鬼化により凄まじい圧迫となってテックを苦しめる。
「ぐぐ、ぐるじい」
その声すら顔への巻き付きによって、うまく発音は出来ていない。
本当に狂暴な蛇が恐ろしいのは、巻き付きの締め付ける筋力のみで、人を骨折に至らしめる事にある。蛇を絞め殺す蛇が実在するのも、一部の業界では常識だ。
ばき、めりめり、めり。
肋骨にヒビが入る。テックは痛みをこらえきれず絶叫した。
「んんんばああああぁあ」
魔法剣が握れない。腕すらも絡み付かれて、自由が利かないのだ。
「ぐぐい、ぎぐ」
何か策はないかと、必死に頭を働かせようとするが、ただの巻き付きにもかかわらず力がとんでもなく強いために、痛みのあまり思考する自由すら奪われていた。
(死ぬ、死ぬ。死ぬ。これは本当に死ぬ)
魔法剣がなければ、鍛えただけの人間でしかない。テックは今、まさに絶体絶命だ。
(そ、そうだ。第三剣でテレパシーしたらいいか)
テックはようやく、誰かとテレパシーで通信する事を閃いた。一人にでも通じれば、助けが来てなんとかなるかもしれないのである。
【ハトゥル、ハトゥル。俺だ。聞こえるか】
返事はない。忙しい時には無理に返事をしなくてもいいなでと甘い妥協をした結果がこれだ。
【デートだろ、どうせ。こっちはヘビで死にかけてんだ。ハトゥル、返事してくれ】
余談だが、テックは実際にデートかどうかなんて知らない。今日は休日なので年頃の女子にはありがちだ、ただそうした理由からの当てずっぽうである。
しかしいずれにせよ、返事はない。
【うおー、人殺し、アホ間抜け、税金ちょろまかし予備群】
半分パニックで、わけの分からない暴言も混じってきた。
【キジュア。牙の洞窟に来てくれ。本当に死ぬかもしれねえ】
キジュアにも繋いでみるが、返事はない。
【暇だろ?魔法剣なくていいから、適当に手伝ってくれよ。死んじゃうから、死んじゃうから】
ハトゥルに魔剣を託したため、キジュアには魔剣は使えない。今はそんな事すら言っていられないのだが、キジュアの回線も応答はない。
【チッ、私まで戦うのか。もっと上手く立ち回りやがれ】
フレイアの声がし、そしてビッグファングがようやく離れていった。
「首ねっこを押さえれば、蛇は基本的に何も出来ない。これ、常識だぜ」
普段は黒字に白いまだら模様の着物で過ごしている彼女だが、いつ着替えたのか、戦闘のためだろう幾らか動きやすそうなバトル・ドレスを着こなしている。
「破ッ」
そして気合いだけで、ビッグファングを吹き飛ばした。石の壁にめり込み、すぐには動けなさそうだ。
「テック、早く。とどめだぜ」
言われるがまま、テックは第一剣の炎で、牙の洞窟の鬼化したボスを燃やし尽くすのだった。
「た、助かったぞババア」
「本当に感謝があるなら、二人称がおかしいんだぜ。あと、折れてるなら、しゃべるな」
肋骨を指差し、的確にダメ出しされたテックである。
神託の庭には、ハイテクな治療カプセルがある。中に入るだけで骨折すら治るスゴい設備だ。
そして、その中に入りながらテックは、フレイアの猛烈に長い説教を聞いていた。
「というわけで、魔物にも杖魔が干渉出来る。これを踏まえた行動を」
しかしあまりに長すぎて、テックはカプセルの中で、すやすやと寝息を立てて寝ていたのだった。
人間の住む世界と、神の世界を行き来するための転移装置としての魔法剣だ。
しかしテックが神薬修行で手にした魔力は、第三剣を進化させた。
数メートルの短い距離なら、方陣転移のように扱えるのだ。ちなみに、この物語における方陣は魔方陣と同義とする。
方陣転移とは、方陣に肉体を預け霊体に近い、魔力だけの体に変えてもらう。そして軽くなった体を、方陣ごと飛ばすのが方陣転移だ。
原理は方陣転移そのものだが、本来は高度な方陣が必要なのを第三剣が簡単にしている。よって、結局テックがしたのは方陣転移なのである。
そしてテックは方陣転移を駆使し、次々に鬼化した魔物を倒していった。
鬼化していても、今のテックには普通の魔物が速くなったヤツ、程度にしか分からない。それ以上の特殊な技を持っていても一瞬で倒してしまうからだ。
ビッグファング以外の魔物は、再び倒した。よほど強力な強化がされていれば別だが、更に復活してくる事はないだろう。
鬼の顔になった、鬼面と呼ぶべきであろう強化ビッグファング。まるでムオルがそのままヘビになったような凄みの効いた迫力だけで、一般人は戦意を喪失してしまうはずだ。
しゅるる。
鬼面蛇はただ移動しただけだが、まるで方陣転移を使ったかのように瞬間的に数メートルを移動した。
(くあっ、コイツは本当に強えぞ)
噛みつきだけで、1秒に70連続ほど来るのがテックには手にとるように分かった。
日頃の鍛練がなければ、魔法剣だけでは回避が間に合わなかっただろう。
しゅるっしゅるるるる!
高速巻き付きだ。テックの全身を包むように、強い締め付けと共にビッグファング本来の得意技が、鬼化により凄まじい圧迫となってテックを苦しめる。
「ぐぐ、ぐるじい」
その声すら顔への巻き付きによって、うまく発音は出来ていない。
本当に狂暴な蛇が恐ろしいのは、巻き付きの締め付ける筋力のみで、人を骨折に至らしめる事にある。蛇を絞め殺す蛇が実在するのも、一部の業界では常識だ。
ばき、めりめり、めり。
肋骨にヒビが入る。テックは痛みをこらえきれず絶叫した。
「んんんばああああぁあ」
魔法剣が握れない。腕すらも絡み付かれて、自由が利かないのだ。
「ぐぐい、ぎぐ」
何か策はないかと、必死に頭を働かせようとするが、ただの巻き付きにもかかわらず力がとんでもなく強いために、痛みのあまり思考する自由すら奪われていた。
(死ぬ、死ぬ。死ぬ。これは本当に死ぬ)
魔法剣がなければ、鍛えただけの人間でしかない。テックは今、まさに絶体絶命だ。
(そ、そうだ。第三剣でテレパシーしたらいいか)
テックはようやく、誰かとテレパシーで通信する事を閃いた。一人にでも通じれば、助けが来てなんとかなるかもしれないのである。
【ハトゥル、ハトゥル。俺だ。聞こえるか】
返事はない。忙しい時には無理に返事をしなくてもいいなでと甘い妥協をした結果がこれだ。
【デートだろ、どうせ。こっちはヘビで死にかけてんだ。ハトゥル、返事してくれ】
余談だが、テックは実際にデートかどうかなんて知らない。今日は休日なので年頃の女子にはありがちだ、ただそうした理由からの当てずっぽうである。
しかしいずれにせよ、返事はない。
【うおー、人殺し、アホ間抜け、税金ちょろまかし予備群】
半分パニックで、わけの分からない暴言も混じってきた。
【キジュア。牙の洞窟に来てくれ。本当に死ぬかもしれねえ】
キジュアにも繋いでみるが、返事はない。
【暇だろ?魔法剣なくていいから、適当に手伝ってくれよ。死んじゃうから、死んじゃうから】
ハトゥルに魔剣を託したため、キジュアには魔剣は使えない。今はそんな事すら言っていられないのだが、キジュアの回線も応答はない。
【チッ、私まで戦うのか。もっと上手く立ち回りやがれ】
フレイアの声がし、そしてビッグファングがようやく離れていった。
「首ねっこを押さえれば、蛇は基本的に何も出来ない。これ、常識だぜ」
普段は黒字に白いまだら模様の着物で過ごしている彼女だが、いつ着替えたのか、戦闘のためだろう幾らか動きやすそうなバトル・ドレスを着こなしている。
「破ッ」
そして気合いだけで、ビッグファングを吹き飛ばした。石の壁にめり込み、すぐには動けなさそうだ。
「テック、早く。とどめだぜ」
言われるがまま、テックは第一剣の炎で、牙の洞窟の鬼化したボスを燃やし尽くすのだった。
「た、助かったぞババア」
「本当に感謝があるなら、二人称がおかしいんだぜ。あと、折れてるなら、しゃべるな」
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神託の庭には、ハイテクな治療カプセルがある。中に入るだけで骨折すら治るスゴい設備だ。
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