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魔法の剣
魔法使いの一族
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ショーン=ビップは、生まれついての魔法使いだ。
人にとって魔法は、禁忌であると同時に後天的、つまり生まれた後に学ばないと使えないモノだ。
だがビップの一族は、先天的に魔法の感覚が備わっている。魔法の開祖にあたる一族、ビップ族の子孫であるために、どうしても、望まなくとも魔法を使えてしまうのだ。
「普通は、魔法の感覚を鍛えることが魔法を学ぶスタートライン。だけどボクらは魔法の感覚を意識しない事、押さえ込む事を学ばないといけない。うっかり感情的になっただけで魔法が出てしまうのが、ボクらビップ族が持つ魔法使いの遺伝子。だから、魔法を撃てないように気持ちのコントロールをしていく」
「まさか、魔法大戦争を始めたのはショーンの一族・・・?」
「そ、それは本当に違う。ビップ族以外にもエクラド族っていう一族がいて、彼らの中でも極悪人って言われていたマヤリトっていうヤツの仕業なんだ。だからボクたちは被害者。たとえ魔法条約があっても、声を大にして魔法使いとは言えない」
「じゃあ、なんで俺にはそれを教えてくれるんだ」
「限界だからだよ。今も言ったけど魔法条約はボクらを必ずしも自由にはしてくれない。魔法大戦争を始めたマヤリトがいたという歴史が、普通の人たちにボクらを疑わせる。それはボクらだけでは、戦いきれない疑いの連続に違いないんだ」
マヤリトが始めた魔法大戦争に、ビップ族は誰一人参加していない。しかし戦争の混乱の中でうっかり魔法を暴発してしまい、魔法難民になってしまった者が、ショーンの一族にいるのは事実だ。
「ショーン。もっと早く言って欲しかったぜ」
「言えるわけないよ。誰を信じれば良いのか分からないくらいの、ひどい時代が続いたんだ。魔法難民がいる一族は、ちゃんと調べたら分かってしまう。だからそうだってバレて、疑われたら逃げなくちゃならないんだ」
「―――そんな、バカな」
「それが現実なんだよ。何度かバレて、そのたびにどんなに色んな人に殴られて蹴られても菜にもしちゃいけなかった。魔法はもちろん、戦争に参加なんてしてないって分かってもらうには、攻撃されたからって戦ってもいけなかったんだ」
「でも、逃げ続けるのは無理だろ。いつかは向き合わないと、逃げるのも戦いのきっかけになっちまうと俺は思うぜ」
「そうさ、分かってはいる。でも、逃げる以外にどうしろって言うんだ?魔法難民と呼ばれてないだけで、ボクの一族はみんな難民なんだよ。分かってくれ」
魔法大戦争以来ビップ族は、各地を転々とするしかない人生を余儀なくされてきた。安息の地はどこにもない。被害者だと訴えた一族の者もいたが、周りからは「そうやって戦争の利益に預かる卑怯者」の烙印を押された。
何をしても、何もしなくてもダメ。自分が悪くなくてもダメという日々を送り続けてきたのだ。
「そんな人たちがいるなんて、俺は知らなかった」
「普通はそうだ。そしてそんな人たちはやっぱり言うよね。知りたくなかった、って」
「俺はそんな事は言わないけど、まあ言うヤツは言うかもな」
「ああ。言う人は絶体にいる、逃げても逃げなくても。逃げないなんて出来っこないし、魔法を使えない人は多すぎる。ムデュマ老師くらい名を上げたら話は別だけど、魔法を使える人がみんなあんなに凄いわけじゃないんだよ。実際、ボクらビップ族が使える魔法は弱すぎて、人助けにすらなりゃしない」
「じゃあ老師くらい強くなって、魔法を必要とする人を正しい道に導いていけばいい。道がない人なんていないさ。そうだとしてみなよ、ショーンのずっと昔のご先祖さまは、そうしたらどうやって生きてきたんだ?」
「さあね。でも確かにそれしか道はないかもしれない。これは神さまが、強くなるためにボクたちに与えた試練なのかもしれない」
「そうとも。そんで、俺たちは友だちになるために巡りあったんだ。もちろん、アナもさ」
「テック、ありがとう」
「水くせえなあ、ありがとうなんてよ。それはこっちの台詞さ。そんなツラい事を正直に話してくれて、ありがとな」
ショーンはどこかスッキリした表情になり、テックと別れた。
「老師を目指すなんて、簡単じゃないかもしれないな。ムデュマ老師―――俺がまず会ってみるか」
十三傑のキアに魔法を教えたという老師、ムデュマ。あれだけの魔法がショーンに使えれば、魔法を人の役に立てられる立派な人間になれるに違いない。
テックはそう考え、ムデュマの居所がどこなのかを突き止める決心をした。
「お、テックさん。今日はパーティーじゃなかったっけ」
「ヤン先輩。俺、ムデュマ老師の居場所を知りたいんです」
テックは暁鴉を訪れた。世界的鬼や暗黒剣で忙しく、中々来られない時はあったが、牙の洞窟の依頼を受けた時に顔を出していたのでそれほど久しいわけでもない。
「魔法を使えるようにしないといけない友達がいるんです。しかも、十三傑並みに」
テックの無茶な要求は、しかし意外な方向に進んでいく。
人にとって魔法は、禁忌であると同時に後天的、つまり生まれた後に学ばないと使えないモノだ。
だがビップの一族は、先天的に魔法の感覚が備わっている。魔法の開祖にあたる一族、ビップ族の子孫であるために、どうしても、望まなくとも魔法を使えてしまうのだ。
「普通は、魔法の感覚を鍛えることが魔法を学ぶスタートライン。だけどボクらは魔法の感覚を意識しない事、押さえ込む事を学ばないといけない。うっかり感情的になっただけで魔法が出てしまうのが、ボクらビップ族が持つ魔法使いの遺伝子。だから、魔法を撃てないように気持ちのコントロールをしていく」
「まさか、魔法大戦争を始めたのはショーンの一族・・・?」
「そ、それは本当に違う。ビップ族以外にもエクラド族っていう一族がいて、彼らの中でも極悪人って言われていたマヤリトっていうヤツの仕業なんだ。だからボクたちは被害者。たとえ魔法条約があっても、声を大にして魔法使いとは言えない」
「じゃあ、なんで俺にはそれを教えてくれるんだ」
「限界だからだよ。今も言ったけど魔法条約はボクらを必ずしも自由にはしてくれない。魔法大戦争を始めたマヤリトがいたという歴史が、普通の人たちにボクらを疑わせる。それはボクらだけでは、戦いきれない疑いの連続に違いないんだ」
マヤリトが始めた魔法大戦争に、ビップ族は誰一人参加していない。しかし戦争の混乱の中でうっかり魔法を暴発してしまい、魔法難民になってしまった者が、ショーンの一族にいるのは事実だ。
「ショーン。もっと早く言って欲しかったぜ」
「言えるわけないよ。誰を信じれば良いのか分からないくらいの、ひどい時代が続いたんだ。魔法難民がいる一族は、ちゃんと調べたら分かってしまう。だからそうだってバレて、疑われたら逃げなくちゃならないんだ」
「―――そんな、バカな」
「それが現実なんだよ。何度かバレて、そのたびにどんなに色んな人に殴られて蹴られても菜にもしちゃいけなかった。魔法はもちろん、戦争に参加なんてしてないって分かってもらうには、攻撃されたからって戦ってもいけなかったんだ」
「でも、逃げ続けるのは無理だろ。いつかは向き合わないと、逃げるのも戦いのきっかけになっちまうと俺は思うぜ」
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魔法大戦争以来ビップ族は、各地を転々とするしかない人生を余儀なくされてきた。安息の地はどこにもない。被害者だと訴えた一族の者もいたが、周りからは「そうやって戦争の利益に預かる卑怯者」の烙印を押された。
何をしても、何もしなくてもダメ。自分が悪くなくてもダメという日々を送り続けてきたのだ。
「そんな人たちがいるなんて、俺は知らなかった」
「普通はそうだ。そしてそんな人たちはやっぱり言うよね。知りたくなかった、って」
「俺はそんな事は言わないけど、まあ言うヤツは言うかもな」
「ああ。言う人は絶体にいる、逃げても逃げなくても。逃げないなんて出来っこないし、魔法を使えない人は多すぎる。ムデュマ老師くらい名を上げたら話は別だけど、魔法を使える人がみんなあんなに凄いわけじゃないんだよ。実際、ボクらビップ族が使える魔法は弱すぎて、人助けにすらなりゃしない」
「じゃあ老師くらい強くなって、魔法を必要とする人を正しい道に導いていけばいい。道がない人なんていないさ。そうだとしてみなよ、ショーンのずっと昔のご先祖さまは、そうしたらどうやって生きてきたんだ?」
「さあね。でも確かにそれしか道はないかもしれない。これは神さまが、強くなるためにボクたちに与えた試練なのかもしれない」
「そうとも。そんで、俺たちは友だちになるために巡りあったんだ。もちろん、アナもさ」
「テック、ありがとう」
「水くせえなあ、ありがとうなんてよ。それはこっちの台詞さ。そんなツラい事を正直に話してくれて、ありがとな」
ショーンはどこかスッキリした表情になり、テックと別れた。
「老師を目指すなんて、簡単じゃないかもしれないな。ムデュマ老師―――俺がまず会ってみるか」
十三傑のキアに魔法を教えたという老師、ムデュマ。あれだけの魔法がショーンに使えれば、魔法を人の役に立てられる立派な人間になれるに違いない。
テックはそう考え、ムデュマの居所がどこなのかを突き止める決心をした。
「お、テックさん。今日はパーティーじゃなかったっけ」
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