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魔法の剣
老師
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ムデュマは猫人の生き残りである。
かつて、アイナムという猫人が一族を裏切って大魔王のしもべとなった時、多くの同胞を失った過去を持つ。
また、大魔王の配下に同族がいるのは、普通は忌み嫌われる所以になるものだ。しかしムデュマは、その揺るぎない信念と類いまれな指導力により数々の弟子を育て上げることで、その汚名を幾度も返上してきた苦労人なのだ。
「ミルキーちゃん、下がってなさい」
テックを通せんぼしている猫人の少女に向かって、ムデュマは話しかけた。
テックがいるのは、ムデュマがいると聞きつけやって来たハザ山だ。世界級鬼や暗黒剣との戦いで近くにこそいたものの、標高72600メートルの世界最高峰は登る気にもならなかったらしい。
「因果じゃのう」
「魔法剣を知ってんのか、ジジイ」
「魔法剣?ああ、オヌシの中にある魂の剣の事かね」
「な?!見えるのか、ジジイには」
「ああ。心の目が開ければ、見えぬモノなど何もあるまいて。あと、―――いや、ジジイでええわい」
ハザ山の頂上は、本来ならふもとから実力で登って来なければならないらしい。
しかしテックは、ハザ山の頂上にムデュマがいるというヤンからの情報を聞いた後に横着した。
神託の庭に行き、フレイアから教えてもらった方陣を使い、頂上にあるムデュマの庵までショートカットしたのだ。
「カルマとは、因果。すなわち因縁じゃ」
「魔法剣じゃなく、ただの因果の話か」
「オヌシは、何度かこの辺りに来ただろう。しかも戦いのために。それこそが因果なのじゃよ」
「よく分からねえ。俺は魔法剣を、半分くらいは魔力で無理やり使ってるんだ」
テックの場合、第五剣以降は、魔力を神薬で底上げする事で仮に解放しているに過ぎないのだ。
「うむ、それはあまり良くないのう。その内、剣に使われるぞい」
「やっぱりヤベえのかよ」
「ああ、めっちゃんこヤベえ」
魔法剣を心から理解出来ていて、始めて魔法剣は宿主、つまり持ち主を主人と真に認める。そのプロセスを無視し、魔力により力ずくで剣を振るうならば、それは魔法剣の試練を無視し、魔法剣を侮る事になってしまうのだ。
「ショーンの事で来たのに、俺もヤベえのかあ」
「ビップ族もまた因果の中にあるわな」
「なんでもお見通しかよ」
「ああ、な~~んでもじゃ」
ビップ族は先天的に魔法を使えるが、決して強い魔法使いでないがために困難な生を強いられている。その事をムデュマは分かっているようだ。
「だったら、助けてやってくれねえかな。俺は自分の事ならなんとか出来る」
「ふーむ。タダでか?」
「か、金取るの?」
「商売じゃもん」
明らかに働くには早い若者に金をせびるほど、ムデュマはその輝かしい実績とは裏腹に金欠だ。
「1000000メニーじゃ。これ以上は曲げられんよ」
「ひゃ、百万だってぇ?そんなん十三傑でもないと、とても無理だぞ」
「そうじゃよ?」
「なら、アンタをぶっ飛ばして帰るわ」
テックは第二剣を召喚した。
「待て待て待て。すぐに払えとは言うとらん。実はとっておき・スペシャル・ワンダホー・プランがあるんじゃ」
指定する五体の魔物を全て倒したら50年、料金支払いを延長出来る夢のプランをムデュマは説明した。
「えっ、そんなんで良いのか?」
「ああ。しかも、これは修行者と修行卒業者、さらに将来の修行希望者、全員が対象なんじゃ。いずれの魔物も伝説級、まだ誰も倒しとらん。達成出来たら、全員がプラン適用じゃ」
50年もありゃ、流石に払えるじゃろう?と、ムデュマはニヤリと笑った。
「でも、十三傑すら倒せてない魔物なんて俺たちに倒せっかな」
「さあ?」
「無茶苦茶だなあ」
五体の魔物は、いずれもフェセナ大陸にいる。
炎のメテオ・トロール。
雪のフリーズ・ウィスプ。
影のワイド・ワイト。
剛の鉄ゴブリン侍。
戦のテラ・アンバライト。
「倒せなくても良いからの。1000000メニー、きっちり払えば稽古は付けちゃる」
「そ、そんな」
「あと、次からはちゃんと登ってくるようにの」
テックはティンフシーの学生寮に帰ってきた。
「ショーン、いるか」
ショーンも学生寮住まいだ。
「なんだい、テック」
「1000000メニーあるか」
「どうしたの急に」
かくかくしかじかを、テックは説明した。
「1000000メニーあったとしても、そんな険しい山なんて登れないよ」
「あ、ショーンの場合、そもそもそうだよな」
「登れるの?!」
ショーンなら口が固そうだと思い、魔法剣を見せた上でテックはかいつまんで今までの戦いの日々を説明した。
「テック、道理で風格があるわけだ」
「思ったより、驚かねえな」
「いや、そりゃ驚くけど、色々と隠してるのはみんな一緒なのかもね」
「う、まあ、そうなのかな」
とりあえずショーンが納得しているので、テックは、よしとしたのだ。
「で、俺なら五体の魔物、退治出来るかもしれねえ。任せてくれねえかな」
ショーンは長い間、沈黙していた。
かつて、アイナムという猫人が一族を裏切って大魔王のしもべとなった時、多くの同胞を失った過去を持つ。
また、大魔王の配下に同族がいるのは、普通は忌み嫌われる所以になるものだ。しかしムデュマは、その揺るぎない信念と類いまれな指導力により数々の弟子を育て上げることで、その汚名を幾度も返上してきた苦労人なのだ。
「ミルキーちゃん、下がってなさい」
テックを通せんぼしている猫人の少女に向かって、ムデュマは話しかけた。
テックがいるのは、ムデュマがいると聞きつけやって来たハザ山だ。世界級鬼や暗黒剣との戦いで近くにこそいたものの、標高72600メートルの世界最高峰は登る気にもならなかったらしい。
「因果じゃのう」
「魔法剣を知ってんのか、ジジイ」
「魔法剣?ああ、オヌシの中にある魂の剣の事かね」
「な?!見えるのか、ジジイには」
「ああ。心の目が開ければ、見えぬモノなど何もあるまいて。あと、―――いや、ジジイでええわい」
ハザ山の頂上は、本来ならふもとから実力で登って来なければならないらしい。
しかしテックは、ハザ山の頂上にムデュマがいるというヤンからの情報を聞いた後に横着した。
神託の庭に行き、フレイアから教えてもらった方陣を使い、頂上にあるムデュマの庵までショートカットしたのだ。
「カルマとは、因果。すなわち因縁じゃ」
「魔法剣じゃなく、ただの因果の話か」
「オヌシは、何度かこの辺りに来ただろう。しかも戦いのために。それこそが因果なのじゃよ」
「よく分からねえ。俺は魔法剣を、半分くらいは魔力で無理やり使ってるんだ」
テックの場合、第五剣以降は、魔力を神薬で底上げする事で仮に解放しているに過ぎないのだ。
「うむ、それはあまり良くないのう。その内、剣に使われるぞい」
「やっぱりヤベえのかよ」
「ああ、めっちゃんこヤベえ」
魔法剣を心から理解出来ていて、始めて魔法剣は宿主、つまり持ち主を主人と真に認める。そのプロセスを無視し、魔力により力ずくで剣を振るうならば、それは魔法剣の試練を無視し、魔法剣を侮る事になってしまうのだ。
「ショーンの事で来たのに、俺もヤベえのかあ」
「ビップ族もまた因果の中にあるわな」
「なんでもお見通しかよ」
「ああ、な~~んでもじゃ」
ビップ族は先天的に魔法を使えるが、決して強い魔法使いでないがために困難な生を強いられている。その事をムデュマは分かっているようだ。
「だったら、助けてやってくれねえかな。俺は自分の事ならなんとか出来る」
「ふーむ。タダでか?」
「か、金取るの?」
「商売じゃもん」
明らかに働くには早い若者に金をせびるほど、ムデュマはその輝かしい実績とは裏腹に金欠だ。
「1000000メニーじゃ。これ以上は曲げられんよ」
「ひゃ、百万だってぇ?そんなん十三傑でもないと、とても無理だぞ」
「そうじゃよ?」
「なら、アンタをぶっ飛ばして帰るわ」
テックは第二剣を召喚した。
「待て待て待て。すぐに払えとは言うとらん。実はとっておき・スペシャル・ワンダホー・プランがあるんじゃ」
指定する五体の魔物を全て倒したら50年、料金支払いを延長出来る夢のプランをムデュマは説明した。
「えっ、そんなんで良いのか?」
「ああ。しかも、これは修行者と修行卒業者、さらに将来の修行希望者、全員が対象なんじゃ。いずれの魔物も伝説級、まだ誰も倒しとらん。達成出来たら、全員がプラン適用じゃ」
50年もありゃ、流石に払えるじゃろう?と、ムデュマはニヤリと笑った。
「でも、十三傑すら倒せてない魔物なんて俺たちに倒せっかな」
「さあ?」
「無茶苦茶だなあ」
五体の魔物は、いずれもフェセナ大陸にいる。
炎のメテオ・トロール。
雪のフリーズ・ウィスプ。
影のワイド・ワイト。
剛の鉄ゴブリン侍。
戦のテラ・アンバライト。
「倒せなくても良いからの。1000000メニー、きっちり払えば稽古は付けちゃる」
「そ、そんな」
「あと、次からはちゃんと登ってくるようにの」
テックはティンフシーの学生寮に帰ってきた。
「ショーン、いるか」
ショーンも学生寮住まいだ。
「なんだい、テック」
「1000000メニーあるか」
「どうしたの急に」
かくかくしかじかを、テックは説明した。
「1000000メニーあったとしても、そんな険しい山なんて登れないよ」
「あ、ショーンの場合、そもそもそうだよな」
「登れるの?!」
ショーンなら口が固そうだと思い、魔法剣を見せた上でテックはかいつまんで今までの戦いの日々を説明した。
「テック、道理で風格があるわけだ」
「思ったより、驚かねえな」
「いや、そりゃ驚くけど、色々と隠してるのはみんな一緒なのかもね」
「う、まあ、そうなのかな」
とりあえずショーンが納得しているので、テックは、よしとしたのだ。
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ショーンは長い間、沈黙していた。
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