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黄金の果実
門番
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門真 蔵王。
皆さんはゲーム・キングを覚えているだろうか。ゲーム・キングとは、スレイプニルにおける彼のユーザーとしての名前である。
つまり、現実世界ではなく、スレイプニルというゲーム世界における有名人なのだ。
ネット・テロと呼ばれる世界規模の情報網破壊事件により、スレイプニルにしかアクセス出来ないインターネットになって以来、門真の人生は一変した。
スレイプニルの開発陣に加わったのだ。
つまり、門真にとってスレイプニルは幸運のシンボルとなった。ゲーム廃人で人生を終えるはずが、仕事に繋がったからである。
幾つもの課金アイテムを提案し次々に採用。ゲーム好きたちの楽園と化していたインターネットにおいては、門真の独壇場により熱狂したスレイプニルのユーザー、それはこの上ない資金源である。
「変な宗教にハマるくらいなら、スレイプニルにハマろうよ」
雑誌からの取材にも、廃人経験で得た集中力により、ある種のカリスマ性をもって受け答えしていく門真。ゲーム・キングの名義でサインを求められる事がある、あるいはランキングを勝ち取るための戦略など、トークのネタにも余念がない。
成功者への階段を駆け上がる男。門真と言えば、今やそうしたスターダムを連想させる存在となっていたのだ。
ゲーム・キングとしても、その実力は未だに衰え知らずであった。どんなオンライン・ゲームにも圧倒的実力者は発生するものだが、門真の得点力は「何の不正もないなら常軌を逸している」「凄すぎて気持ち悪い」など数々の評価を得ているほどに、ずば抜けていた。
コラムの執筆や公式サイトのコーナーなど、関連する仕事が次々に舞い込み、SNSの更新にも追われる毎日。ゲーム以外でこれほど幸せに感じられる事がある、そう理解した門真の快進撃は留まる事を知らない。
ゲーム製作スタッフとしては異例のドラマ出演、果てはアイドルのプロデュースなど、出来る事には何でも挑戦した。
欲張りすぎという批判も多かったが、自由で素晴らしいという称賛もまた多かったのが不思議な門真の魅力を端的に物語っているのである。
そして、そうした脇道の仕事は本業であるスレイプニルに反映された。
ドラマを舞台にしたイベントや、アイドルをモデルにした新キャラなど、飽くなきまでに仕事に繋げていくのが門真のやり方であるからだ。
「生きるから、お金になるんだ」
「楽しい事がいつも正解」
「欲望という仕事だよ」
名言らしき言葉を次々に放つ様は、一部のコアなファンからは武勇伝として語り草にさえなった。
スレイプニルというコンテンツの守り手、いわば門番という肩書きは、ゲーム・キングに代わる新たなイメージとしていつしか門真に定着していた。
たかがゲームであっても妥協しない姿勢が、特定の世代に支持されたようだ。
そうこうする内にインターネットも復旧し、スレイプニルは臨時に設けていた一般向け連絡掲示板やチャットなどを撤去。平常運行に戻っていった。
そして、一時的に過熱していた門真に対するブームも去っていく。
それは、門真が実力で現在の地位を得たわけではない事を痛烈に示していた。
運が良かったのだ。
どさくさに紛れて、よくよく見ればどこにでもいるゲーム廃人が、やはりたまたま拾われただけなのである。
しかし、門真の災難はここから始まる。
つまりそれでも、門真は勘違いしているのだ。
真の友人のように近付いてきた有名人は、未だにみんな親友だと思っているし、自らの知名度はこれからも鰻登りと信じて疑わないのである。
そう、門真という人間は、超が付くほどお人好しなのだ。
ゲーム関係の仕事が高学歴の若手に奪われ、半ばタレント兼ゲーム実況のような扱いと化してもなお、一貫してその態度である。
そこまで来れば、ある意味では幸せ者である。正しい道かどうかは別として、門真本人は幸せと感じているのだ。
「ところでさあ、凄くお金になる話があるんだよ」
そう切り出したのは、門真の初代マネージャーである志釜という中年女性だ。普通なら胡散臭いと一蹴される都市伝説さえ、門真は信じてしまう。
だから志釜に限らず、誰もが調子に乗ってしまうのだ。
「黄金の果実って覚えてる?」
「ああ、アレですよね。あの、覚えてはないですけどめっちゃ気になります」
門真は大抵、この調子である。
黄金の果実。それは北欧神話に限らず多くの伝説に登場する、金色の林檎として知られる存在である。
そして北欧神話において、黄金の果実は不老不死の効果を持つとされている。
「なんか、あるらしいのよ。それが」
「え、マジっすか?そう言えば見た事あるかも」
「いやいや、そんな簡単に見れるもんじゃないから」
次の課金アイテムとして黄金の果実はネタになるくらいにしか思っていない門真。しかし、お人好しなので彼なりには一生懸命に話に着いていく。
黄金の果実には、神が宿る。
それが現代における黄金の果実の伝説らしい。何の神なのかは知らないらしいが、門真はこうして新たなるお人好し人生の第一歩を踏み出した。
そこに恐ろしい悪魔が潜むとも知らずに。
皆さんはゲーム・キングを覚えているだろうか。ゲーム・キングとは、スレイプニルにおける彼のユーザーとしての名前である。
つまり、現実世界ではなく、スレイプニルというゲーム世界における有名人なのだ。
ネット・テロと呼ばれる世界規模の情報網破壊事件により、スレイプニルにしかアクセス出来ないインターネットになって以来、門真の人生は一変した。
スレイプニルの開発陣に加わったのだ。
つまり、門真にとってスレイプニルは幸運のシンボルとなった。ゲーム廃人で人生を終えるはずが、仕事に繋がったからである。
幾つもの課金アイテムを提案し次々に採用。ゲーム好きたちの楽園と化していたインターネットにおいては、門真の独壇場により熱狂したスレイプニルのユーザー、それはこの上ない資金源である。
「変な宗教にハマるくらいなら、スレイプニルにハマろうよ」
雑誌からの取材にも、廃人経験で得た集中力により、ある種のカリスマ性をもって受け答えしていく門真。ゲーム・キングの名義でサインを求められる事がある、あるいはランキングを勝ち取るための戦略など、トークのネタにも余念がない。
成功者への階段を駆け上がる男。門真と言えば、今やそうしたスターダムを連想させる存在となっていたのだ。
ゲーム・キングとしても、その実力は未だに衰え知らずであった。どんなオンライン・ゲームにも圧倒的実力者は発生するものだが、門真の得点力は「何の不正もないなら常軌を逸している」「凄すぎて気持ち悪い」など数々の評価を得ているほどに、ずば抜けていた。
コラムの執筆や公式サイトのコーナーなど、関連する仕事が次々に舞い込み、SNSの更新にも追われる毎日。ゲーム以外でこれほど幸せに感じられる事がある、そう理解した門真の快進撃は留まる事を知らない。
ゲーム製作スタッフとしては異例のドラマ出演、果てはアイドルのプロデュースなど、出来る事には何でも挑戦した。
欲張りすぎという批判も多かったが、自由で素晴らしいという称賛もまた多かったのが不思議な門真の魅力を端的に物語っているのである。
そして、そうした脇道の仕事は本業であるスレイプニルに反映された。
ドラマを舞台にしたイベントや、アイドルをモデルにした新キャラなど、飽くなきまでに仕事に繋げていくのが門真のやり方であるからだ。
「生きるから、お金になるんだ」
「楽しい事がいつも正解」
「欲望という仕事だよ」
名言らしき言葉を次々に放つ様は、一部のコアなファンからは武勇伝として語り草にさえなった。
スレイプニルというコンテンツの守り手、いわば門番という肩書きは、ゲーム・キングに代わる新たなイメージとしていつしか門真に定着していた。
たかがゲームであっても妥協しない姿勢が、特定の世代に支持されたようだ。
そうこうする内にインターネットも復旧し、スレイプニルは臨時に設けていた一般向け連絡掲示板やチャットなどを撤去。平常運行に戻っていった。
そして、一時的に過熱していた門真に対するブームも去っていく。
それは、門真が実力で現在の地位を得たわけではない事を痛烈に示していた。
運が良かったのだ。
どさくさに紛れて、よくよく見ればどこにでもいるゲーム廃人が、やはりたまたま拾われただけなのである。
しかし、門真の災難はここから始まる。
つまりそれでも、門真は勘違いしているのだ。
真の友人のように近付いてきた有名人は、未だにみんな親友だと思っているし、自らの知名度はこれからも鰻登りと信じて疑わないのである。
そう、門真という人間は、超が付くほどお人好しなのだ。
ゲーム関係の仕事が高学歴の若手に奪われ、半ばタレント兼ゲーム実況のような扱いと化してもなお、一貫してその態度である。
そこまで来れば、ある意味では幸せ者である。正しい道かどうかは別として、門真本人は幸せと感じているのだ。
「ところでさあ、凄くお金になる話があるんだよ」
そう切り出したのは、門真の初代マネージャーである志釜という中年女性だ。普通なら胡散臭いと一蹴される都市伝説さえ、門真は信じてしまう。
だから志釜に限らず、誰もが調子に乗ってしまうのだ。
「黄金の果実って覚えてる?」
「ああ、アレですよね。あの、覚えてはないですけどめっちゃ気になります」
門真は大抵、この調子である。
黄金の果実。それは北欧神話に限らず多くの伝説に登場する、金色の林檎として知られる存在である。
そして北欧神話において、黄金の果実は不老不死の効果を持つとされている。
「なんか、あるらしいのよ。それが」
「え、マジっすか?そう言えば見た事あるかも」
「いやいや、そんな簡単に見れるもんじゃないから」
次の課金アイテムとして黄金の果実はネタになるくらいにしか思っていない門真。しかし、お人好しなので彼なりには一生懸命に話に着いていく。
黄金の果実には、神が宿る。
それが現代における黄金の果実の伝説らしい。何の神なのかは知らないらしいが、門真はこうして新たなるお人好し人生の第一歩を踏み出した。
そこに恐ろしい悪魔が潜むとも知らずに。
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