創世樹

mk-2

文字の大きさ
212 / 223

第211話 最後の力

しおりを挟む
 ――――創世樹の最奥にある繭。




 グロウは繭の中に入った途端に、うっとりとした気分になった。心地良い眠気も感じる。




 そして、アルスリアの存在もより強く感じる。




 繭の中から? それとも、自分自身の中から? 




 融合を始めたグロウとアルスリア。互いの精神も肉体も溶け合い、自我も存在も同一のものへとなろうとしている。





「――――何だろう、ここは…………気持ちいい…………ぼーっとしていて、身体も心も温かい…………。」




 ――アルスリアの存在もさらに近く感じられてきた。




「――アルスリア…………?」





「――ああ…………これこそ、私が求めていたことだ…………やっと、こうなれた。一体どのくらいの間…………この瞬間を待ち焦がれただろう――――好きだよ。グロウ。何て夢見心地だろう……大好きだ…………グロウ――――」





 繭の中で睦み合い、徐々にその精神と肉体、そして存在そのものが融合していく二人。





 それは本来、どんな激しい情交も、どんなに優しいコミュニケーションをも超越した…………魂の神聖なる同化だった。





「――あああ……アルスリアが僕とひとつになっていく…………もう、外からの声も聴こえないや…………。」




 ――アルスリアが右手を、グロウの胸元へ伸ばした。右手は溶けるように、根を張るようにグロウの中へと侵食し、同化していく。




 だが――――ここでグロウは違和感を抱いた。




「――外からの、声――――?」




「――ウ……グ……ロウ…………!」





「――この声……エリーお姉ちゃんの声だ――――あれ? エリーお姉ちゃんって…………誰だっけ――――?」




「――グロウ!! 目を醒まして!! グロウッ!!」




「――――お姉ちゃん…………エリーお姉ちゃん――――!?」





 グロウはエリーの存在を感じ、外へと意識を向けた――――





「――――ぐうううううううッッッ!!」





「――――お姉ちゃん!?」





 ――繭の中の眠りから一時覚醒したグロウ。繭の外では――――エリーが全身全霊の力を込め、繭を引き千切ろうとしていた。





「――ちいっ……ダーリンとの初夜を、邪魔するんじゃあない!! 創世樹の『セキュリティ』よ!!」





 繭から僅かばかり顔を出しているグロウ。エリーが繭を引き千切ろうとしているのを感じ、アルスリアも顔を出し、創世樹に念じた。




 忽ち、先ほどガイたちが戦ったものとは比べ物にならぬほど強く、速い木枝と触手がエリーを刺し貫いた!!




「――――があはっ…………!!」




「――お姉ちゃん……お姉ちゃんッ!!」





 激しいダメージに、今にも気を失いそうになるエリー。





「――――まだッ!! まだまだよ!! あたしの中の『鬼』でも『人』でも…………強い力なら何でもいい!! この生命を燃やし尽くさないで…………いつ使い切るってのよーーーッッッ!!」





 ――――エリーはとうとう、練気《チャクラ》の力を臨界を遙かに超えるところまで上げた。





 エリーの身体中から…………異形の物と思わせる四肢や翼が、エリーの身体を食い破るように、夥しい出血を伴いながら出て来る――――限界を超え過ぎた力は、エリーを『鬼』……あるいは、全く別の種へと進化させようとしていた。





「――よっ……よせエリーッ!! それ以上力を高めたら、人の姿を保てなくなる!!」




 テイテツが叫び、ガイも叫ぶ――




「――――やめろおおおおおッッッ!!」





 ――ガイがそう叫んだのも虚しく……黒い光を放った次の瞬間。




 エリーは、もう元の人間の姿ではなかった――――




「――――エ……リー…………嘘……だろ――――」





 ――6本の腕。背には悪魔のような翼。頭部から伸びる赤き4本の角。そして顔には仮面を思わせるような人外の顔――――エリーはとうとう、滅び去ったはずの『鬼』と化してしまったのか――――





「――はははは!! とうとう人ではなくなったか!! 創世樹の代わりに、お前が人間を滅ぼすかい? ははははは――――」



「――お姉ちゃん!! しっかりして――――お姉ちゃん!!」




 アルスリアが嗤い、グロウが悲痛に叫ぶ。




 だが――――グロウの叫びに反応したかのように、エリーの仮面のような顔にヒビが入った――――




 ――一瞬の破裂音と共に、仮面は砕けた。




 中から現れたのは――――




「――待ってて。お姉ちゃん、グロウのこと、死んでも助けるから――――。」




「――――お姉ちゃん!!」




 ――元の朗らかな顔をした、エリーの素顔だった。




 ――エリーは、6本に増えた腕で、さらに繭を掴みかかる。





「――っぐううううううううッッッ!!」




 ――エリーの穏やかな顔もそこまで。再び途轍もない力で、繭を引き千切ろうと引っ張る。




 エリ―が万力の如き力で引っ張る度に、顔を中心に全身の血管は切れ、血が噴き出す――




 だがそれでも、繭が一体化しようとする力の方が強い。




「はは。無駄だ無駄だ! もう私とダーリンはひとつとなるのだ!!」




 ――エリーはアルスリアの声に抗い、さらに力を込めた。





「――――こぉの――――」





 ――――ブツンッ――――。





 ――その瞬間。エリーの中で何かが切れる音が鳴り響いた。





「――あ……ああ…………」





 エリーは途端に、力が抜けて真っ逆さまに創世樹の根元へと落ちて行く――――





「――――エリーーーーッッッ!!」





 ――ガイの慟哭が、創世樹にこだまする――――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

処理中です...