幸せを探そう

もうすぐ3時

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05:性別とか気にしないのか

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「すまない。少し席を外す」


話の続きは後で聞こう、と言いながら頬をスルリと撫でてドアに向かって行くアル。

やばい。俺の一般人以下しかない精神力の容量が超えそう…
つまりは、恥ずかしさでいっぱいいっぱい。

顔を両手で覆ってグヌヌ…と唸っていると、ドアの方が騒がしくなっていた。


「だから!会うくらい良いだろ!!」

「今は心を落ち着かせてやるのが大事だ」

「お前、いつもの迷い人と対応が違いすぎるぞ!
いつもだったら、さっさと管理者の家に帰ってる頃だぞ!」

「いま話を聞いてる途中だ。邪魔をするな」


アルの姿は見えるけど、相手の姿は反対のドアに隠れて見えない。
聞こえて来た会話の流れからすると兄弟か?
王子にため口だもんな。
さっきまでの優しいアルの雰囲気から一変して、ものすごい塩対応だけど。


会わせろー!って聞こえるけど、俺の事?


言い合いのような、話し合いのような会話をしていたと思ったら
離れている俺の所まで聞こえるくらいの大きなため息をついたアル。
その後はひたすら無言を貫くアル。

あ。なんか相手が涙声になってきてる。

弟(予想)クン頑張れー。


「おれ、は!お前の父親なんだ、ぞ!!」


(笑)
まさかの、父親だった

泣いちゃってる感じしてるけど!

声がソプラノボイスだから、てっきり弟を予想してたのに!


「息子が冷たいぃー!!!」


叫び声が遠ざかって行くので、走って行ってしまったようだ。

えぇ…あれぇ…アルの父親って事は、この国の王様なのでは???

パタンとドアを閉めたアルは、眉間のしわを伸ばす様に親指と人差し指でグイグイ押しながら戻って来た。


「騒がしくてすまない。」

「えぇと、今のって」

「私の父親。現国王だ。詳しい話はこの国の事を教える時にでも一緒に話そう。」

「王様…泣いてたっぽいけど、大丈夫?」

「いつもの事だから大丈夫だ」

「へ、へえ…」


いつもなんだ。アル、大変だな。少し同情的な目線で見てしまう。


「でも何でこっちに来たんだ?会わせろって聞こえたけど、
俺に何か用事があったんじゃないのか?」

「ああ。
いつもであれば迷い人が出ると、まず国王の所に連れて行き、あとの事は城の者たちで対処・対応をするようになる。
だが今回は、森から出てそのままこの部屋に連れて来たので、まだ国王に目通りしていない」

「それってマズいんじゃないの!!!アルの立場とか大丈夫なの?!」

「それについても後で教えるがな。
この国は、なんというか、礼節に緩くてな。
トウカの件も、特に咎められたりはしない。
王が直々にこの部屋に来たのも、あの人の、ただの興味本位だ。
私がトウカの傍から離れないので、気になって仕方がなくなって我慢できずに1人で来たのだろう。」


ええぇ!気軽すぎじゃないか!?
王族とかに対しての俺の知識って本や映画でしかないけどそれでも、
王様って1人でその辺歩き回って良いんだろうか。
それよりも。

アルが俺の傍から離れなかったって。
…ずっと寝顔を見られてたって事だよな。恥ずかしいんだけど。


「それで、先ほどの話の続きが聞きたいのだが、トウカ」


ホワッと顔を赤くしながら先ほどの続きを言ってみる。


「あ。うん。
俺、子供の姿になってるけど……実は、25歳なんだ!」


言いながら顔を下に向けてしまった。
見た目6歳くらいなのに、25歳だ。とか突然言われて、アル、驚くかな。それとも引く?

自分から言ってしまったけど、言わなきゃ良かったかな。

でも、なんか、アルに嘘吐きたくない。

恐る恐る様子を窺うとアルは真っ直ぐにコチラを見ていた。

綺麗な瞳。宝石みたいな紫の。

アルの瞳から目が離せず、しばらく見つめ合ってしまった。

そして心底嬉しそうに微笑んだアルは、


「…よかった。嬉しい。トウカ。私と結婚して欲しい」


俺に求婚してきたのだった



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