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檻の中で
しおりを挟む人気のない廊下に グチュッグチュッ、と粘りのある水音と共に 嬌声が響く。
「ふっ、あ、あっあっ、ひゃぁら、もう、むり、ぃ、んっんっ、あっあ、ゃあああぁ!!」
「………っ!!…っ!っっ!!!!」
周りの檻には人気が無く
しかし、その中でも特に狭く暗い檻の中に、細く月明かりが差し込む。
そこには、仰向けで揺さぶられるがままの少年と
激しく抽挿を繰り返す大柄な男との淫らな姿が現れる。
小柄な方は、黒い目と黒い髪。15歳程度の少年の見た目をしており、
大柄な方は、水緑の目と銀の髪。引き絞られた体格だが圧迫感の無い若々しい見た目をしていた。
しかし銀の髪の男には、
髪と同色の、狼のような獣の耳と尻尾が生えているので生粋の人間には見えない。
さらに口には、似付かわしくない口枷が付けられていて
言葉を発する事が出来なくなっていた。
もう無理だと泣く少年に、叩きつけるように男は何度も腰を振る。
ゴチュッと最奥が抉られると、少年は快感に震え 声も無く達してしまっていた。
一昼夜は続けられていた行為に 少年は精を吐く事も無く、何度も絶頂を繰り返す。
気を失っては中を擦られ続け、目が覚める。
快感しか感じられないのが幸いだが、もはや拷問のような行為だった。
少年を凌辱し続ける男は、理性が飛んだ獣のように精を注ぎ続け
始まりから3日目の夜に、最後と言わんばかりに最奥を貫くと残り僅かな精を出し切った。
名残惜し気に体を震わせてペニスを引き抜くと、少年からゴプッと音がするほどの精が溢れた。
息を整えた男は我に返ったように少年を見やると、少年も男を見つめていた。
少年は男に向かって手を伸ばそうとしたが、うまく体が動かず
ふっと短く息を吐くと、仕方が無いので男を見つめるだけに留める。
男は何か言おうとしたが、口枷を思い出し口元を触って苦い顔をし
動けなくなった少年の隣に横たわり、優しく抱きしめて頭を撫でる。
この凌辱行為はだいたい2週間に一度行われているが、行為が終わると男はいつも
優しく頭を撫で、少年を抱きしめる。
謝罪と愛情を感じさせるこの行動は、疲れた少年の心を癒す唯一のものだった。
性行為が終わり、2人で横になっていると
注がれた精で膨らんだ腹が痛み出し、少年が体を震わせ始める。
男が心配そうに背中を撫でたり腹を撫でたりするが
少年は腹の痛みが強くなり、
何かが体から出ていくような感覚がしたかと思うと
ゴポリと音を立てて、手の平よりも小さい鳥の卵のようなものを1つ産んだ。
初めての時は、自分が卵を産んだ事にパニックになったりもしたが
今では、この男と性行為をすると 1つだけ卵を産むという事が分かっているので
驚きは無かった。
ただ、卵を産み終わると どこからか人間がやって来て
卵と男を連れて檻から出て行ってしまう。
それだけが寂しいと感じる。
少年を檻の中に入れた キラキラと装飾品にまみれた人間が言うには、
この銀髪の男と性行為をして卵を産むのが、自分のするべき 大事な仕事なのだそうだ。
いま産み落としたもので何個目の卵だろうか…
この子も、今までの子も、孵ったところを見てみたい…
回収にやってくる人間たちが来るまでの、ほんの短い時間だけ
少年は男の胸に顔をすり寄せて、温もりを感じるのだった。
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僕の居る檻の中は3畳くらいの広さで、その中に穴を掘って作られたトイレがある。
布団の代わりに藁が敷いてあり、通路側の格子以外は固い土の壁になっている。
窓は無いけど、立ち上がっても届かないほどの高さの天井付近に、
子供のこぶし大の大きさの空気穴があってそこから細い光が差し込むので
昼と夜の区別はつく。曇っていたり雨の時は別として。
1回分の食事は
小さな固いパンと、コップ1杯の水のみ。
常にお腹が空いて辛かったけど、この檻に入れられて
しばらくしてから始まった あの仕事をしていたら、空腹を感じなくなっていた。
それを食事番の人間に話したら、面倒が無くなったと喜んでいた。
それからは、朝と夜に届けられていた食事は来なくなった。
空腹を感じなくても、すぐに どこかがおかしくなって死ぬかもしれないと思っていた。
でも、何日過ぎても僕の体は病気もせず元気なままだった。
それどころか、仕事が始まってからは何かしら怪我をしてもすぐに治るようになった。
さらには、
仕事が終わり暫くすると汚れを落とす為に檻の外から水を掛けられるが
盥1杯分の水を掛けられただけで全身が綺麗になってしまうのだった。
溢れだすほどの精液も綺麗に無くなるので、掛けられた水に何か細工がされているのかと
思ったが、水を掛けた人間も首を傾げていたので
これも空腹を感じなくなった時のような
よくわからない不思議な現象の一つなのかと思うようになった。
ある日。
仕事が終わってすぐに ふと思った。
僕の名前はなんだったかな、と。
どういう経緯でこの檻の中にいるんだったかな、と。
考えれば考えるほど、頭に霞がかかるように ぼんやりとして眠くなってしまう。
誰かが檻の前に来た時にすぐに反応が出来ないと棒で叩かれてしまうので
眠くならないように、なるべく考え事に集中しないよう気を付けた。
ずっと檻の中に居るので、知識が無くても不自由しないし
生活するのに必要な事は忘れていないし特に問題も無いかなとも思った。
考えないようにしていても、それでも時折なんだか無性に
頭に浮かんだ疑問に気になってしまう日もあった。
その日も運悪く、考え事がどうしても気になってしまう日だった。
仕事が始まる前と、終わってから来る人間に思った事を質問してみたが
無視されて終わってしまう。
たまに檻の前まで来る、キラキラと装飾品にまみれた男が
今日は珍しく来ている日だったので その話をしてみたら、
その人は無視せずに教えてくれた。
『あなたに名前はありません。
行き倒れていたあなたを、私が拾って仕事を与えてあげているのです。
あなたは、与えられた仕事をしていれば良いのです。
疑問を持つ事や何かを考える事はとても悪い事ですよ。
次からは酷い仕置きをしますよ。』
いま感じている疑問を考える事は、悪い事なのだと教えてくれた。
言い終えて、その人は去って行こうとするので
僕は最後に、ずっと聞きたかった事を どうしても教えて欲しいと言った。
いつも仕事をする時に、檻の中に入って来る銀髪の男の事が知りたいと。
その人には名前はあるの?と。
それを聞いたキラキラと装飾品にまみれた男は振り返って戻って来たが
ずっと笑顔だったその顔が、とても恐ろしく不愉快そうな顔になっていた。
『次からは酷い仕置きをすると言っただろう!!!
あんな魔獣に名前なんか無い!!』
檻の隙間から手が伸びて来て、僕の髪の毛が掴まれ
そのまま鉄格子まで引っ張られ、顔が勢いよくぶつかる。
ごめんなさいごめんなさいと泣きながら謝る僕に、その人は手を放してくれた。
怪我はすぐに治ってしまうけど、痛いものは痛い。
キラキラと装飾品にまみれた男は、おおいと声を出し、すぐに誰かがやって来た。
2人で何か話をしているようだったが、
髪の毛を離してもらってすぐに檻の奥に身を潜めた僕に、会話の内容は聞こえなかった。
いつもならば、キラキラと装飾品にまみれた男はすぐ帰ってしまうのに
今日はまだ用事があるのか、檻の前の通路から動かなかった。
しばらくして別の誰かが、
ジュウジュウと音がする、先端が真っ赤になった 長い棒のような物を持ってきた。
何をするのだろうかと見ていると、
キラキラと装飾品にまみれた男は棒を受け取り、
檻の隙間から差し込んでソレを僕の足に押し付けた。
瞬間、声が出なかった。
痛かった。ただひたすら、痛いとしか考えられなかった。
目からは涙が流れ続け呼吸も苦しくなっていく。
キラキラと装飾品にまみれた男が笑いながら、手を動かす。
『今日は、優しい仕置きにしてあげますね。
次にまた何かおかしな事を考えたら、今度こそ酷い仕置きですからね。』
熱い痛い痛いやめて熱い痛い苦しい痛い…
目の前が真っ暗になった。
目が覚めると、夜中だった。周りには誰も居なくなっていた。
少し動いたら、足がじくりと痛かった。
ぐちゃぐちゃにされた足を思い出し、
怖々と触ってみたら、いつもの足だった。
また治ってしまっているようだった。
何度か触っているとまた痛みを感じたので、
外見はすっかり元通りだが、中の方がまだ治りかけの状態だったようだ。
その夜から僕は、疑問に思う事が起きても すっぱりと考えようとしなくなった。
誰かに問う事もやめた。
そして仕事の時にだけ来る獣耳と尻尾の銀髪の男を、
魔獣さん と、愛しく心の中で呼ぶのだった。
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目が覚めた時、今日は仕事の日だと感じた。
仕事の日になると周りの人間たちの空気が
独特なピリッとしたものになるので感覚で覚えてしまっていた。
「ふふっ…うれしい」
ぽろりと零れてしまった声に、
檻番をしている人間に聞かれてしまったかなと焦って見ると
特に変わった所も無かったので安堵した。
自分が何か変わった事をすれば、また酷い体罰を与えられると知っているから。
早く魔獣さんが来てくれれば良いのに、と心の中で言葉を繰り返し
極力 態度に出ないように努めた。
時間的に、たぶん昼頃になるあたりで檻番が離れて行った。
替わるようにして、人間に拘束具を着けられた魔獣さんと人間が現れた。
性行為が終わると、人格が変わったように大人しくなる魔獣さんは、
連れて来られる時には、興奮剤を打たれているように獰猛な動きになるので
体中に拘束具を着けられ人間に引きずられて来る。
今日もとても興奮しているみたいだと見ていたが、何か違和感を感じた。
フウフウと口枷から荒い息を出しているが、いつもと違うような…
檻が開かれ、突き飛ばされるように魔獣さんが入れられると
自動的に口枷以外の、手足の拘束具も外れる。
人間達はすぐに檻から離れて遠くに消えて行った。
魔獣さんを見ていると、魔獣さんもこちらを見た。
目が合った。
いつもなら、手足に付いてた拘束具が外れた瞬間に押し倒されて、
行為に慣らされている体だけど
いきなり突き上げるような挿入をされるので
痛みから始まるのが普通なのに…
性行為が終わった後の、あの優しい目をしてる。
突然、魔獣さんが長くなった自身の銀の髪に手を入れると
何かを探すような手つきと、もどかしい顔をする。
そして何かを諦めたのか、勢いよく手を引き抜いた。
ぶちっと髪の毛が千切れるような音がしたかと思うと
魔獣さんの手には小さな鍵と、引き抜かれた細い銀の髪が乗っていた。
パラパラと手を振り髪だけ落とすと、口枷の鍵穴に当てて
そのままカチリと鍵を開ける。
ゴトリと音を立てて口枷が外れ、それを目で追っていると
魔獣さんが小さく唸りながら声を出していた。
「ぅー、あ、あー…あーあー、あ」
初めて聞いた魔獣さんの声は、ドキドキするほど気持ち良かった。
「あ。あ。んんっ。…ハア。」
喉をさすりながら声の調子を確かめていた魔獣さんが
座り込んでいた僕を見る
「お前、名前は?」
「え、僕?」
「そうだよ。今ここにはお前しか居ねーだろ?」
「僕は…僕、えっと…」
名前はあったはずだ。
早く思い出して教えたい。僕の名前を呼んで欲しい。
「あ、う、僕は…」
どうしても思い出せなくて、頭が真っ白になったように
上手く言葉も出なくなる
焦る気持ちだけが伝わり、魔獣さんが不思議そうに僕を見ている
なにか、言わないと。と普段使って無い脳をフル回転させる。
「名前、わかんない…」
結局言えたのがこの一言だった。
「名前無いのか?」
「たぶん、あった、と、思う。もう、思い、出せない」
たどたどしくも何とか伝えられた。
言い終えた達成感で、フウッと安堵の息をつく。
「この檻に入ってどのくらいなんだ?」
「わ、わかんない…ずっと居る。
あ、でも、魔獣さんと、お仕事、始める…すこし、前に入った、かも…ごめんなさい」
つい、いつも心の中で呼んでる魔獣さんという呼び名で呼んでしまった。
魔獣という言葉を聞いた時に、とても嫌そうな顔になったのを見てしまい謝る。
魔獣さんと呼ばれるのは嫌なのか…
今度からは心の中でも言わないように気を付けよう…
申し訳ない気持ちで、手をもぞもぞと動かし顔を下げて地面を見つめる。
「シグルだ。」
「………………え?」
「魔獣というのは獣人族に対する蔑称だ。俺の名前はシグルだ。」
「シグル。獣人族。……うん。…シグル、シグル」
名前を教えて貰ったとすぐに理解できなかったが
教えて貰ったのだし呼んでも良いのだろうと、何度も言葉を反芻する。
胸に両手を当てて、目を瞑って心の中でも呟く。
なんて良い日なのだろう。
お話しも出来て、魔獣さんではなく、シグルと名前も教えて貰えた。
そこで、あれっ?と考える。
普段何も考えないようにしている癖がでてしまい、
知恵の巡りが遅くなっているのが災いして今更に気付いた事があった。
「シグル、口枷、取っちゃって、大丈夫なの?
えっと、それに、お仕事、いいの?」
首を傾げて聞いてみるとシグルは、苦い顔と嬉しい顔と
色んな表情が混ざった顔をしていた。
「仕事はもうしなくて良いんだ。
今日でこんな場所から出ていくからな」
聞いた瞬間、鉛を飲んだような感覚になった。
胸に重たいものが入ったような苦しい感覚。
シグルが居なくなる…
それじゃあ、もう二度と会えなくなる。
僕はこの檻から出して貰えるか分からないから。
我が儘を言えば、シグルと一緒に此処から出たい…
たまに来るキラキラと装飾品にまみれた人に頼んでみようか…
いや、、、
それはきっと無理かな。
次は酷い仕置きをするって言われているし。
「あ、あの………良かった、ね。元気、でね。」
涙をこらえて精一杯の笑顔を作る。
うまく表情が作れないかもしれないと思い、
手で頬を引っ張り笑顔になるように作った。
それを見たシグルは焦ったように、違う違うと言った。
「ここを出るのはお前も一緒だ!置いていくかよ!
連れて行くに決まってんだろ!!」
「えっ」
「え、って。お前なあ…わざわざ此処まで来て、
俺だけ出るからお前はこのまま檻の中に居ろ、って挨拶に来る奴が居るかよ」
シグルは、呆れたという顔で僕の隣に腰かけた
「色々とな。言いたい事や説明したい事はあるんだが、ひとまずは……」
何かを言いかけた時に、遠くからドォンという爆発音と地響きが上がった。
ビクッと肩を揺らした僕を抱きしめたシグルは
そのまま僕の首元に顔を埋めて鼻を鳴らすと顔を上げ、
「ひとまずは、ここを出てから話してやるよ」
ニカッと笑って僕にキスをした。
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その後。
騎士のような恰好の人達( 獣の耳があったから、全員、獣人族の人だった )が、
檻を壊して僕とシグルを出してくれた。
騎士さん?達は、シグルを檻から出すと跪き頭を下げて歓喜に泣いていた。
シグルは、場所と状況を考えろって怒ってたけど、
騎士?さん達は、
他にもたくさん仲間が来ているからもう大丈夫だと言ってまた泣いた。
騎士さん?とシグルの会話を合わせると、
シグルは獣人族の王子で、第二王子だそうだ。
騎士さん達は、本物の騎士さん達だった。
すごいなあ、と見ているとシグルに抱きかかえられ
お姫様抱っこされたまま外に出た。
今まで、ほとんど日の当たらない場所で生活していたせいか
外の明るさを感じた時に目がズキズキと痛んで涙が出てしまった。
外に出てすぐに、鉄臭い生臭い変な臭いがして、
よく見えないけど、なんの臭い?と聞くと
見なくて良いと言われ、シグルの胸に顔を押し付けられて目隠しをされてしまった。
しばらく歩いたかと思うと何か乗り物に乗った様で
ガタガタと動き出した。
そこでやっと顔を離してもらえたので、周りを見た。
落ち着いた赤のベルベットで統一された馬車の中で、
椅子は広々としていて、大人1人が横になっても問題ない広さだった。
珍しくてキョロキョロしてしまったが、シグルと目が合って我に返った。
「お前さ、名前分かんないんだよな。俺が名付けしても良いか?」
横抱きにされたままの状態だったので
シグルの頬が緊張の為か赤くなっているのが間近に見える。
「うん…うん…名前、つけて…」
何度も頷いて喜びに胸を躍らせた。
「…ん。それじゃあ、、、ルル、ってのはどうだ?」
「…ルル、僕、ルル、ルル…うっ、うううぅぅぅ…」
名付けて貰えた喜びと
ずっと名前を呼んで欲しかった願いが叶い嬉しさが溢れて、涙が止まらなくて、
そんな僕をシグルが頭を撫でてギュッと抱きしめてくれた。
「ルルっていうのは、甘くてやわらかくて、俺の一番好きな果物なんだ。
実がなる前の花の香りは、ほんのり香る匂いでさ」
「うんっ、うん、」
「安直かもしれないけどさ、お前見てると何だかルルの実を思い出すんだよな」
「うん、ふふっ」
照れながら話すシグルが何だか可愛いなと思い笑ってしまった
「!!……お前、、ルルの笑った顔すげー良い。好きだ」
「ひぅ!」
顔をまじまじと見つめられ、好きという言葉に変な声が出てしまう。
ククッと笑ったシグルは少し強めに僕を抱きしめて、少しだけ無言になる
「…ルルは、どこまで記憶が無いんだ?」
「え、と?檻の中、に居た時、より、前の記憶、ない」
「そうか…」
「でも、普通に、生活でき、た。問題、ない」
「ああ。これからは会話もたくさんして、長く喋れるようにしような」
「うん!」
「それでな、ルルの身体の事なんだがな。
ルルは卵殻の器っていう体質で、
交わった者と種族を問わずに子孫を作れる幻の種族って言われてるんだが…」
「らん、かく?」
「そうだ。いつも俺がお前を抱いた後で、お前は卵を産んでただろ?
あれが証拠だ。」
「たまご、こども…」
子供、そうだ。僕の産んだ卵たち。
「卵!どこ!!どこ!?ど…んんぅー!!」
パニックになった僕に、シグルが口付けて舌をねじ込む。
「あ、む、んん、ちゅ…っは、あ」
「ちゅっ……落ち着いたか?
いきなり色んな事言って悪かった。安心しろ、卵は無事だ。」
「んっ……わかった。ごめん、なさい…」
チュッと頬に軽く口付けられて、僕は、はふっと息をはいた。
「話を続けるぞ。
俺たちが居たのは奴隷商人の屋敷の地下だった。
ルルが捕らえられた経緯は分かっていないが…俺の方は、
人間の王族から和平の申し入れがあって、
親善大使としての正式な訪問中に捕まったんだよ。」
「和平?」
「そうだ。
人間は、俺たちのように獣の部分を持った者を魔獣と呼んで蔑むんだが、
実際、魔獣という獣はいるがアレは澱んだ場所から自然に発生する毒のようなもので
獣の形もあれば蟲の形もあるし、極まれに人間の形もある。
決まった形を持たないんだが、人間にすれば獣人も魔獣も一緒らしいな。」
「…一緒じゃ、ない、のに、酷い!」
「そうだな。みんながルルみたいに思ってくれたら良いんだけどな。
…まあ、そんな確執が長年積もり積もっていって、
なにかの切っ掛けで、すぐに戦争になりそうな空気になっちまってよ。
そんな時に、人間の王から和平を結びたいと申し出があったんだ。
獣人側は、誰もが罠だと思ったよ。」
「でも、シグルは…」
「そうだな。
ここで正式な書簡を無視しても失礼になるし、
なにより、本当に人間の王が和平に乗り気なら
このチャンスを逃したくないと思った。もし俺に何かがあっても、
幸い、兄弟姉妹はたくさんいるからなあ。
それもあって、俺が立候補して人間の国来たんだが…」
「………」
悔しそうに顔を下げたシグルの頭を優しく抱きしめる
「…ありがとな。」
「ん」
「なんかな。王城まで着いて、人間の王に謁見して、
ああこれは無理だな、って思っちまった。
人間の王の目がな、相手を見下す目だった。
会話の所々でも、獣人は知恵が足りないと遠回しに言ってくるしよ。
なんかヤバイなと思ったから警戒レベルを上げて
従者と打ち合わせて早めに国を出ようと話してたんだが…
従者の一人に、人間と獣人のハーフのやつが居てな。
人間の母親の方が大らかな人らしくて家族仲がとても良くて、
獣人の国で周囲に馴染んで上手く生活してたんだが…
人間の王の命令で母親が秘密裏に捕まったと。
母の命を助ける為だから、だから、お許しくださいと。
そう言って、俺の飲んでいた紅茶に眠り薬を入れたと自供して
奴は自分の剣で首をかき切って死んだよ。
即効性の睡眠薬だったみたいで、あいつの噴き出す血を見ながら意識が落ちた」
「そん、な…」
「一言、相談してくれていればって気持ちもあったし、
ハーフだから和平の為にも象徴にできるかと思って連れて来ていた
自分の頭の足りなさに反吐が出る。
…まあ、そんな流れでな。
最初は王城の地下に幽閉されていたんだと思うが
しばらくして、人間の王が来て言ったんだ。
獣人を作って同士討ちさせる為に協力してもらうぞ、と。」
「作って、どうし、うち?…あ、僕」
「そうだ。
たぶんその頃にルルが捕まったか、卵殻の器と知られたかで
王族の血を引く俺の子を作らせるつもりだったんだろ。
子供のうちから教育して獣人を殺すように言ったりしてな。
なんにせよ、大人になるまで待つつもりだったなら長い計画だけどな」
「たくさん、子供、つく、った」
「あー………すまん。檻に入れられる前に薬を注射されてな。
意識の混濁と
強制的に発情状態にさせられて相手を孕ませないといけないと思わせる
そんな麻薬みたいな薬で、、、
あと、ルルの匂いが好ましすぎて理性が欠片も残らなかった…」
「いちど、に、いっぱい、した。3日間、くらい?」
「すまん!
獣人は、普段押さえているが性欲は強い方で
止まらなくなると2~3日は入れっぱなしでなあ…。
卵殻の器の特徴として、一度でも交配すると体の仕組みが変わるとかで
丈夫になったりするって聞いてたが…
辛かっただろ…」
「んーん。きもち、よかった」
頭を左右に振って、えへへ、と笑うと
シグルが嬉し恥かしそうに唸った
「ゲホゲホッ…えーと、な。
それで1年くらいルルとの交配が続いて
ルルが産んだ卵が増えてきていたが、人間の王は卵殻の器について
詳しくなかったのが幸いしてな。
ルルの産んだ卵たちは、いまだに卵のままなんだ。
…そんな顔すんなよ。大丈夫、卵は生きている。
卵殻の器の卵は、産んだ本人が一定期間抱きしめてるか、
そばに置いて生活していないと孵化が始まらないんだよ。
俺としては人間に利用されなくて良かったという思いもあるけどさ、
ルルが俺の子供を産んでくれて嬉しいって気持ちが一番強かったよ。」
「…っ!」
ずっとずっと檻の中で、
苦しみや辛さよりも、
シグルの子供を産めた嬉しさが一番の宝物だった。
シグルも同じ気持ちだった。
それを聞いたルルは感情が爆発しそうなほどに喜びでいっぱいだった。
「好きだ。ルル。好き。愛している。
獣人の城に着いたら、改めて結婚を申し込むからな!」
「僕、で、いいの?なにも、おぼえてない、こんな、僕、っで」
しゃくり上げながらいつの間にか涙がこぼれる
「ルルじゃなきゃ結婚しねーよ。」
「うんっ!うんっ!する、嬉しい、好き、シグル、好き、あい」
愛してると言うつもりが、シグルの噛みつくような口付けで言葉がのまれる。
「ちゅ、ん、ちゅっ、、っは!やっぱ嫌って言っても絶対逃がさないからな」
「言わないけど、うん、ずっと、捕まえ、てて!」
「おう!」
お互いクスクス笑って抱きしめあった。
獣人のお城はどんな所なのか、人間なのかよく分からない自分が行っても良いのだろうか
そんな不安もあったが、
檻の中で、安らぎに満ちた触れ合いがほとんど出来なかったシグルが今は傍に居て、
これからたくさんの子供たち出会える喜び。
それだけで自分は安心できるんだと
不安な気持ちを抱える自分を優しく包み込む。
檻の中で出会えたのがシグルで本当に良かった…
僕はシグルの胸に顔を埋めて頬ずりしながらこの幸せがずっと続きますようにと祈り
体の暖かさに、また眠気を抑えられず眠ってしまうのだった…。
13
この作品は感想を受け付けておりません。
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