転生したら厄災と呼ばれました。 ~転生後のスキルは『奪取』!?せっかくなので他人の能力を奪いまくってやります~

バカの天才

文字の大きさ
20 / 27
物語

17話 「制限区域」 この気持ちも、今だけだ

しおりを挟む
 未だに残る潰したような手の感覚と、心に残るあの『執行者』の目がダッシュを不快にさせる。
 それもそのはず、『厄災』と言われた自分を間接的に助けてくれた者を殺し、出会って間もない女を助けたのだから。

(あの男は俺のために助けた訳じゃない。それに『執行者』だって善人を殺してきただろう。切り捨てなきゃ駄目だ……)

『執行者』と一戦を終えたダッシュは再度跳んだ。
 何度目かの飛翔で彼女を見つけること自体は、さほど難しくなかった。スラムに似つかわしくない目立つ髪色は、上からみたら一目瞭然だ。ただ、るような足が悲鳴を上げそうで困る。


「見つけた、……なんであんなとこ歩いてんだ?」

 小高い屋根の上から降りる。今度はしっかりと着地でき、そのまま彼女へ駆け寄った。

「ティナ!」

「!!、あんた無事だったんだね……」


 ほっとした彼女は、ふらつきながらもまだ動けるようだ。


「7区は南西だ、このまま進めば9区に戻ることになる」 

「まじで?どこも似たような景色だから気づかなかった……。あの男はどうしたの?」

「……やるべきことをやったよ、みんながそうしてきたように」


 ティナからは彼の表情は見えない。仮面の裏に隠された顔が今どんな風になっているのかは分からない。だが、曇ったような声が何があったかを物語る。


「あんま気にしない方がいいよ。あたしも結構色んな人を手に掛けてきたからさ」


 彼女の言葉は軽く、心に響かなかった。でも、これが普通なんだという都の日常を分からせるには十分だった。きっとこの気持ちも今だけだろう、いずれ慣れてしまう。所詮、井の中の蛙だったというだけで。


「そういえば、上からみたが追手が見当たらなかった、騒がしい通路もない。ここから引き上げたのかもな」

「あたしもできればここに長居したくないかも……」


 寝っ転がる者、壁にもたれる者たちが2人を好奇な目で見続ける。その視線にティナも嫌がっていた。


「だろうな。無駄足にさせて悪いけど、やっぱり弟と一緒に匿ってもらったほうがいい。俺はここでも狙われる立場になっちまったからな」

「…………ごめん、迷惑かけて」


 気まずそうな顔をしながら述べられた弱弱しい謝罪。出会って2日も経たないが、ティナには似つかわしくない台詞だということは分かる。


「言われた言葉を返すよ。あんま気にしない方がいい、俺も結構迷惑かけてきたからさ」

「ぶっ、あはははっ!確かにっ、あの『厄災』だもんね!」

(こいつは本当に良く顔が変わるな)

「そう呼ばれるのは嫌いだな」

「……ありがと」

「気にするなって。で、弟とロミの場所は分かるか?」

「分かるけど、そこまで無事にいけるかな。向こうじゃまだあたしを探してるかもしれない」

「ここに留まっても安全の保障はできない、他に伝手があるか?」

「まったくない……」


 そういうとティナが首を横に振る。
 金を払って他の事務所に助けを求めるのも手だが、俺は当然として彼女も手持ちはなさそうだ。もしあればここには居ないだろう、伝手も手持ちもないからここへ来たのだ。


「その場所まで案内してくれ。連れ添ってやる、報酬は後でいい」

「あんた金取る気!?」

「都の人間らしいだろ?」

「ちっ……」

「おい、さっきまでの弱弱しいお前はどこにいったんだよ!」


 そんなやり取りをしながら、2人は駆け足で9区を目指した。


 ―――――――




 ――――




 ――


 9区…都の真東に位置するここは、指輪騒動のあった場所でありダッシュも数度、訪れたことがある。区章は『銭袋に詰められた笑顔』


「ねぇ、これ臭いんだけど。この外套も絶対洗ってないやつじゃん」


 顔を覆うように包むフードにティナが文句を言う。


「我慢しろよ、借りれたことに感謝しろ。誰のか知らないが」

「借りたって……、樽に掛かってたものを勝手に持ってきたんじゃん」

「これだけ人通りも多いんだ。多少の変装でもいくらか効果はあるだろ。目的地はもっと奥か?」


 この間とは違う通りを2人で歩く。幾多の人のなかに冒険者も歩いているが、こちらには見向きもしない。関係ない者か、はたまた気づいてないだけか。どちらにせよ思ったより状況は悪くない。


「2等級宿屋『ジア・セーナ』、そこにいるよ」 

「なっ!?そこって等級制限区域内の宿屋だろ、俺は入れない!」

「あたしは大丈夫、許可証もあるしね」


 一定の等級以上でないと入れない場所や地域が都にはある。今向かっているのがそこだったなんて……。条件を満たさない者が許可なく入ったりしたら……。


「俺は許可証なんて持ってないぞ……。バレたら治安維持事務所が飛んでくる。そうなれば、お縄どころの話じゃなくなる」

「金を取るんだろ。リスクを負わなきゃ稼げないよ?」


 呆れたようにティナが言う。まぁ、連れ添うって言い出したのは俺なんだが……


「……やめていいか?」


 想定外の場所だったことに驚いたダッシュは、申し訳なさそうにそっと言う。


「ふーん、やめたいんだ。へぇ~。あたし死ぬかもなぁーきっと。八つ裂きにされちゃうんだろうなー。はぁ~弟がいるのになー。きっと悲しい思いをして、いない姉を思って1人で生き抜かなきゃいけないんだろうなー。最後にもう一度顔を見たかったなー」

「へー、やめてほしくないのか。ふ~ん。俺死ぬかもなぁーきっと。引き裂かれて吊るされるんだろうなー。はぁースラムで助けてやったのになー。恩人も居なくなって金もなくて1人で生きてきて、最後は惨めな思いで終わるんだろうなー」

「……」

「……」







「……やれ」

「はい」


 こうして、2人は制限区域へと向かう。

――――――――――――――

人間カタログ更新しました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

処理中です...