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物語
22話 「救出完了?」 言葉遣い荒いなぁ……
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「ロミが寄越したのね」
「あぁ、シルヴィアの視界が見えないって心配してたぞ」
急いでシルヴィアの目隠しを解いた。見えないって聞いた時、気を失ったりしているか目を潰されているのかと色々勘ぐったが杞憂だった。なにより無事だったことには安心した。
「あの揺れは貴方が?」
「ちょっとばかし陽動のためにな、時間を稼げればと思って」
「……」
ん……?影になって分からなかったが、彼女の口からツーっと赤く新鮮な血が少し垂れていたのに気が付いた。
「口から血が出てるぞ、殴られでもしたのか?」
「違うわ、ちょっとした副作用みたいなものよ」
確かに言われてみれば顔に傷や腫れはない。副作用とは?ここ数日は戦闘だらけで大変だったとは聞いていたが、もしかしたらそれが影響しているのかもしれない。
「拭いたいけれど手を縛られてるの」
「あっ、悪い」
後ろで縛られた彼女の両手首の縄を、手にしたナイフで切ろうとしたがギチギチとした音こそでるが切れる様子は全くなく時間がかかりそうだ。
「これ、なかなか切れねぇな。何でできてんだよ」
「普通のものじゃないわ、工房で作られた異形に使う特殊な縄よ」
「随分怖がられてるな、ちっ……安物じゃ無理か」
駄目だ、このまま続けても埒が明かない。ただ部屋からそのまま出る訳にはいかないから、入った時と同様窓から出るしかない。
「悪いけど縄は後回しでいいか?とにかく出よう」
下はまだ騒ぎになっているそうで慌ただしい怒鳴り声が聞こえてくる。出るなら今だ。彼女もそれに同意しともに窓際へと立った。
だが少しばかり時間をとりすぎたようだ。ドアの外から複数名の大きな声と踏み鳴らすような足音が聞こえる。シルヴィアもそれに気づいているようでこちらに向かって言った。
「誰か来るわ」
「あぁ、良くないな」
最初にも思ったがシルヴィアは冷静だ、この顔が歪むことがこの先あるのだろうかと思わせるほどに。これが1等級の余裕なのだろうか。
向かってきているのは恐らく覗いた時に見た男がだろう。ただ手をこまねいて待っている訳にはいかない。入った窓は人を抱えて通るには少し狭い。両手を縛られたままの彼女も、乗り越えるのにも苦労するだろう。けれど、そんな時間すら与えてくれないくらい忙しない状況だ。
「どうする気?」
「窓際にそのまま立っててくれ」
俺はそういうと、部屋の扉を見ながら手を向ける。奴らが不用意に開けたら、そのまま潰す。なるべく恨みは買いたくないが躊躇もしない。今はただ、やるべきことを成すだけだから。
足音は段々と大きくなり、飾り気のない扉が蹴破ったかのように開けられた。
「クソ女!てめぇ誰を寄こしやがっ……あ?」
「人のこと言えないけど、言葉遣い荒いなぁ……ッ!!」
――――ドン
幾度となく聞いた破壊音が扉をとその周囲を潰すように包み、周囲を巻き込みながらいくつかの床が抜けた。が、不審に思った部分がいくつかある。
(……?)
悲鳴や驚く声が聞こえたが、その中に扉を開けた男の血飛沫はおろか断末魔さえ聞こえない。あれは……消えたのか?目の前からサッといなくなった。
能力者であれば不思議ではない……のか、ともかく時間は稼げた。
「……出よう」
自分も窓際へと駆け寄り窓を乗り越えた、足場は精々一人分。
俺はシルヴィアの両方の二の腕を掴み支え、彼女はそのまま右足、次に左足と出して窓枠に乗るような恰好となった。
「ちょっと我慢してくれよ、このまま飛び降りるから」
右手を折り曲がった膝の裏に通し持ち上げる。その体をまるで俵でも肩に担ぐかのようにし、そのまま下へと飛び降りた。救出というよりこれじゃ誘拐のようなものだ。もう少し賢ければ恰好がもついたものを。
――――
―――
――
薬の効果が切れてきたのだろうか、少し足が痺れるような痛みを感じ始めた。
だが間に合った。担いだ彼女をゆっくり降ろす。建物からの脱出は完了した、あとはロミの元へとシルヴィアを届けるだけだ。なんだかどっと疲れがでてきたなぁ。
「まさか担ぎ上げられるとは思っていなかったわ。迫る地面を眺めるのはあまり良くないわね……」
「悪い、腹大丈夫か?」
「えぇ平気よ、ありがとう。助けられたのはこれで2回目ね」
「まぁ1回目はちょっと怪しいところだけどな。さ、ロミの元へ行こう。追いかけられたりでもしたら大変だ」
「……まだよ」
彼女は建物をじっと見ながら何かを待っているような感じだった。その様相がこちらを不安にさせる。まだ何かあるのか……。
「まだ?まだって……ティナの件が終わってないからか?」
「そう、それに私の応援がまだ来てないのよ」
「応援?」
ロミ以外の仲間がいるのか?いや、居てもおかしくはない。だとしても遅すぎるのではないか?彼女の言う応援とは一体……。
次に彼女の言う言葉が、これから起こることを簡単に想像させた。
「色々と調べたのだけれど、ここは恨みを買いすぎた。一切合切持っていかれた依頼人、捨てられた冒険者、潰された事務所とたくさんね。これから事務所同士の抗争、つまり、大がかりな『箱潰し』が始まるわ」
「……は?」
「私が無策でこんなことすると思う?」
彼女は血の付いた唇で薄く笑った。
「あぁ、シルヴィアの視界が見えないって心配してたぞ」
急いでシルヴィアの目隠しを解いた。見えないって聞いた時、気を失ったりしているか目を潰されているのかと色々勘ぐったが杞憂だった。なにより無事だったことには安心した。
「あの揺れは貴方が?」
「ちょっとばかし陽動のためにな、時間を稼げればと思って」
「……」
ん……?影になって分からなかったが、彼女の口からツーっと赤く新鮮な血が少し垂れていたのに気が付いた。
「口から血が出てるぞ、殴られでもしたのか?」
「違うわ、ちょっとした副作用みたいなものよ」
確かに言われてみれば顔に傷や腫れはない。副作用とは?ここ数日は戦闘だらけで大変だったとは聞いていたが、もしかしたらそれが影響しているのかもしれない。
「拭いたいけれど手を縛られてるの」
「あっ、悪い」
後ろで縛られた彼女の両手首の縄を、手にしたナイフで切ろうとしたがギチギチとした音こそでるが切れる様子は全くなく時間がかかりそうだ。
「これ、なかなか切れねぇな。何でできてんだよ」
「普通のものじゃないわ、工房で作られた異形に使う特殊な縄よ」
「随分怖がられてるな、ちっ……安物じゃ無理か」
駄目だ、このまま続けても埒が明かない。ただ部屋からそのまま出る訳にはいかないから、入った時と同様窓から出るしかない。
「悪いけど縄は後回しでいいか?とにかく出よう」
下はまだ騒ぎになっているそうで慌ただしい怒鳴り声が聞こえてくる。出るなら今だ。彼女もそれに同意しともに窓際へと立った。
だが少しばかり時間をとりすぎたようだ。ドアの外から複数名の大きな声と踏み鳴らすような足音が聞こえる。シルヴィアもそれに気づいているようでこちらに向かって言った。
「誰か来るわ」
「あぁ、良くないな」
最初にも思ったがシルヴィアは冷静だ、この顔が歪むことがこの先あるのだろうかと思わせるほどに。これが1等級の余裕なのだろうか。
向かってきているのは恐らく覗いた時に見た男がだろう。ただ手をこまねいて待っている訳にはいかない。入った窓は人を抱えて通るには少し狭い。両手を縛られたままの彼女も、乗り越えるのにも苦労するだろう。けれど、そんな時間すら与えてくれないくらい忙しない状況だ。
「どうする気?」
「窓際にそのまま立っててくれ」
俺はそういうと、部屋の扉を見ながら手を向ける。奴らが不用意に開けたら、そのまま潰す。なるべく恨みは買いたくないが躊躇もしない。今はただ、やるべきことを成すだけだから。
足音は段々と大きくなり、飾り気のない扉が蹴破ったかのように開けられた。
「クソ女!てめぇ誰を寄こしやがっ……あ?」
「人のこと言えないけど、言葉遣い荒いなぁ……ッ!!」
――――ドン
幾度となく聞いた破壊音が扉をとその周囲を潰すように包み、周囲を巻き込みながらいくつかの床が抜けた。が、不審に思った部分がいくつかある。
(……?)
悲鳴や驚く声が聞こえたが、その中に扉を開けた男の血飛沫はおろか断末魔さえ聞こえない。あれは……消えたのか?目の前からサッといなくなった。
能力者であれば不思議ではない……のか、ともかく時間は稼げた。
「……出よう」
自分も窓際へと駆け寄り窓を乗り越えた、足場は精々一人分。
俺はシルヴィアの両方の二の腕を掴み支え、彼女はそのまま右足、次に左足と出して窓枠に乗るような恰好となった。
「ちょっと我慢してくれよ、このまま飛び降りるから」
右手を折り曲がった膝の裏に通し持ち上げる。その体をまるで俵でも肩に担ぐかのようにし、そのまま下へと飛び降りた。救出というよりこれじゃ誘拐のようなものだ。もう少し賢ければ恰好がもついたものを。
――――
―――
――
薬の効果が切れてきたのだろうか、少し足が痺れるような痛みを感じ始めた。
だが間に合った。担いだ彼女をゆっくり降ろす。建物からの脱出は完了した、あとはロミの元へとシルヴィアを届けるだけだ。なんだかどっと疲れがでてきたなぁ。
「まさか担ぎ上げられるとは思っていなかったわ。迫る地面を眺めるのはあまり良くないわね……」
「悪い、腹大丈夫か?」
「えぇ平気よ、ありがとう。助けられたのはこれで2回目ね」
「まぁ1回目はちょっと怪しいところだけどな。さ、ロミの元へ行こう。追いかけられたりでもしたら大変だ」
「……まだよ」
彼女は建物をじっと見ながら何かを待っているような感じだった。その様相がこちらを不安にさせる。まだ何かあるのか……。
「まだ?まだって……ティナの件が終わってないからか?」
「そう、それに私の応援がまだ来てないのよ」
「応援?」
ロミ以外の仲間がいるのか?いや、居てもおかしくはない。だとしても遅すぎるのではないか?彼女の言う応援とは一体……。
次に彼女の言う言葉が、これから起こることを簡単に想像させた。
「色々と調べたのだけれど、ここは恨みを買いすぎた。一切合切持っていかれた依頼人、捨てられた冒険者、潰された事務所とたくさんね。これから事務所同士の抗争、つまり、大がかりな『箱潰し』が始まるわ」
「……は?」
「私が無策でこんなことすると思う?」
彼女は血の付いた唇で薄く笑った。
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