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2つの夢
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ある朝。僕は、いつも通り出勤した。
「おはようございます」
「あぁ、君。ちょうどいいところに来た。部長が、君を探していたんだ。部長室に行ってくれ」
「あ、はい。かしこまりました」
僕は、部長に呼ばれるようなことをした覚えがない。
いそいそと部長がいると聞いた部屋へ行く。コンコンとノックする。
「失礼します。お呼びでしょうか?」
「あぁ、君か。まぁ、入って座ってくれ」
なんの変哲もない部屋なのに、部長の存在という圧迫感がすごい。
僕は、ただの契約社員。ボーナスなし。それでも、それなりに頑張ってきたつもりだ。
しかし、このご時世だからか、昇給もなかなか厳しい。ついこの間、ようやく時給が千円になった。
そんな僕に、何の用だろうか?
「そんなかしこまらなくて良いよ。君にとって、悪い話ではない筈だ」
「はぁ……」
悪い話ではない? ますます、頭に疑問符が浮かぶ。
「実はね、そろそろ君を正社員にしようと思うんだ。どうだろう? 君さえ良ければ、すぐにでも手続きに移るんだが……」
思わぬ話に、頭がフリーズする。
「え……。僕が、正社員になれるんですか……?」
「あぁ。君はよく頑張ってくれているからね」
部長の言葉に、嬉しさで顔が熱くなるのを感じた。
「あ……でも……」
「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
僕のささやかな趣味であり、副業になりつつある作家業はどうなるだろう……?
「実は、僕小説をインターネットサイトに投稿したりしてまして……。ちょうど、出版の声がかかっているんです。副業規定のこともあるので、ご相談しようと思っていたところでした」
これで、社員への道はなくなったかもしれない。
「うーん……。それは困ったなぁ……。たしかに、うちは原則副業を禁止している。でも、出版かぁ……。原則だし、いいような気もするなぁ……。よし、ちょっと確認するよ」
部長は、内線でどこかにかけると、事情を話した。
「うんうん、わかった。ありがとう」
ガチャリと受話器をゆっくり置く。
部長は、にっこり笑って言葉を発した。
「オッケーが出たから、大丈夫だ。税金さえ、ちゃんと納めてくれたら良いよ。さて、ほかに気になるところはないかな?」
「大丈夫です」
ずいと体を乗り出して、部長が僕を見つめる。
「さて、君はどうしたい?」
僕は……、僕は……。
「社員としても、頑張りたいです。よろしくお願いします」
僕は、深々と頭を下げる。
「あぁ、よろしく。それと……。本出したら教えておくれよ。買うからさ」
「え?」
「俺ね、こう見えて、本読むの好きなのよ。君の頭の中の世界も見せておくれよ。あ、サインも忘れず貰いに行くから、よろしくね」
「え、あ……」
僕は、部長の言葉に頭がついていかず、あたふたする。
「さて、この話はおしまい。俺は、次の打ち合わせあるから先出るね。手続き書類は、総務の佐藤さんに預けとくから、また書いて俺のデスクに置いておいて」
部長はそう言うと、手をひらひらさせながら、部屋を後にする。
僕は、ぼーっと先程のやりとりを反芻する。
今の職場で、夢も追いかけられる……。今の職場も、夢も失わずに済む。
しかも、正社員になれるんだという安心感が、僕を包み込む。
窓から差し込む光が、いつもより明るく感じた。
「おはようございます」
「あぁ、君。ちょうどいいところに来た。部長が、君を探していたんだ。部長室に行ってくれ」
「あ、はい。かしこまりました」
僕は、部長に呼ばれるようなことをした覚えがない。
いそいそと部長がいると聞いた部屋へ行く。コンコンとノックする。
「失礼します。お呼びでしょうか?」
「あぁ、君か。まぁ、入って座ってくれ」
なんの変哲もない部屋なのに、部長の存在という圧迫感がすごい。
僕は、ただの契約社員。ボーナスなし。それでも、それなりに頑張ってきたつもりだ。
しかし、このご時世だからか、昇給もなかなか厳しい。ついこの間、ようやく時給が千円になった。
そんな僕に、何の用だろうか?
「そんなかしこまらなくて良いよ。君にとって、悪い話ではない筈だ」
「はぁ……」
悪い話ではない? ますます、頭に疑問符が浮かぶ。
「実はね、そろそろ君を正社員にしようと思うんだ。どうだろう? 君さえ良ければ、すぐにでも手続きに移るんだが……」
思わぬ話に、頭がフリーズする。
「え……。僕が、正社員になれるんですか……?」
「あぁ。君はよく頑張ってくれているからね」
部長の言葉に、嬉しさで顔が熱くなるのを感じた。
「あ……でも……」
「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
僕のささやかな趣味であり、副業になりつつある作家業はどうなるだろう……?
「実は、僕小説をインターネットサイトに投稿したりしてまして……。ちょうど、出版の声がかかっているんです。副業規定のこともあるので、ご相談しようと思っていたところでした」
これで、社員への道はなくなったかもしれない。
「うーん……。それは困ったなぁ……。たしかに、うちは原則副業を禁止している。でも、出版かぁ……。原則だし、いいような気もするなぁ……。よし、ちょっと確認するよ」
部長は、内線でどこかにかけると、事情を話した。
「うんうん、わかった。ありがとう」
ガチャリと受話器をゆっくり置く。
部長は、にっこり笑って言葉を発した。
「オッケーが出たから、大丈夫だ。税金さえ、ちゃんと納めてくれたら良いよ。さて、ほかに気になるところはないかな?」
「大丈夫です」
ずいと体を乗り出して、部長が僕を見つめる。
「さて、君はどうしたい?」
僕は……、僕は……。
「社員としても、頑張りたいです。よろしくお願いします」
僕は、深々と頭を下げる。
「あぁ、よろしく。それと……。本出したら教えておくれよ。買うからさ」
「え?」
「俺ね、こう見えて、本読むの好きなのよ。君の頭の中の世界も見せておくれよ。あ、サインも忘れず貰いに行くから、よろしくね」
「え、あ……」
僕は、部長の言葉に頭がついていかず、あたふたする。
「さて、この話はおしまい。俺は、次の打ち合わせあるから先出るね。手続き書類は、総務の佐藤さんに預けとくから、また書いて俺のデスクに置いておいて」
部長はそう言うと、手をひらひらさせながら、部屋を後にする。
僕は、ぼーっと先程のやりとりを反芻する。
今の職場で、夢も追いかけられる……。今の職場も、夢も失わずに済む。
しかも、正社員になれるんだという安心感が、僕を包み込む。
窓から差し込む光が、いつもより明るく感じた。
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