お姉様と離れるなんて無理ですの!

ぺんたごん

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学園へ入学してからひと月程が経った。

たまにある移動教室へはお姉様を抱き上げで移動し、昼食は教室の自席で一緒に食べ、授業中はお姉様を膝枕したりと、今までとあまり変わらない生活を送っていた。


ある日、ステフが心配そうな顔をしてとある噂について教えてくれた。


曰く、「落ちこぼれの召使い令嬢」だとか、「抱きかかえているのは実は人形で、きっと人形を姉妹だと思い込んでいる、気のふれた令嬢なのでは?」とか…。



正直言って、私は気にしない。言いたい人には言わせておけば良い。



「ねぇ、クリス、ちゃんと聞いていて?」


「ええ。」


「…もう!ならどうしてそうも涼しげな顔をしてらっしゃるの?」


「それで、わたくしたちに何か不都合でもありますの?」


「それは…まあ強いて言うなら周りの視線が…ってくらいでしょうけど!でも!気になりませんの!?」


「…んー、まあ全く気にならないと言えば嘘になってしまいますが…。」



今もなお、すれ違う人の視線に、蔑みと憐れみの様なものが含まれているのは気づいていた。

そして、お姉様が視界に入った途端、それらに加えて、まるで見下す様な、嫌なものに変わることも。


家では無かったそれらの視線が、精神的に良くないものであることは分かっていた。

…そろそろ、どうにかしなければならないが…。




「ふぅ…。まあ良いですわ。そんなことより、そろそろ魔法の実技が始まりますわ!楽しみですわね!」


さっきまでのことを吹き飛ばすかの様に声色を変えてステフが話し出せば、つられるかの様にエルが近づいてくる。


「そういえば、明後日だっけ?アタシも楽しみ!」


「あら、エルもですの?宜しければ是非、練習試合でお相手をお願いしても?」


「お、良いよ!あ、でも怪我しても知らないよ?」


「臨むところですわ!」




ステフの魔法はよく知っているけれど、エルはどんな魔法を使うのかしら…?


できれば、皆怪我なく実技が終わることを願おう。






それからしばらくすると、担任のエド先生が教室にやってきた。


「みんな席につけー!授業始めるぞー!」

















「今日は、魔法の実技について、ある程度事前に説明をしておく。」


「先生、他クラスとの合同だと噂で聞きましたがそれは本当ですか?」


「ん、カイか。ああ、そうだ。明後日の実技最初の授業は1学年全員での合同授業になっている。」


「授業時間の前半はクラス内での基礎練。後半は学年全員によるトーナメント戦になってる。得手不得手があるから、出場は希望する者のみとなってるがな。」


「また、出場を希望したとしても、あまりに基礎がなってないやつはこっちで却下することもあると言っておくぞ。試合中に暴発なんてシャレにならないからな。まともに扱える奴だけが出場を許可できると思え。」


「今から、出場を希望するかどうかのアンケートを配るから、記入して提出する様に。名前を書くのを忘れんなよ?」



私はそこで、ふと疑問に思ったことを聞いてみることにした。


「先生、質問よろしいでしょうか?」


「ああ、なんだ?」


「お姉様の分もわたくしが記入してもよろしいでしょうか?」



「あ?………ああ、そこのか………良いぞ。」


「有難う存じます。」



ちょうどいい。きっとお姉様ならうまくやって下さるだろう。

私は、自分のものには参加辞退に丸をつけ、お姉様のものには参加希望に丸をつけ提出した。


私にはない、お姉様だけの才能を見れば、きっと噂なんぞ藁の家の如く吹き飛ばされて消えてしまうだろう。
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