祝福のカンパネラ

たちばな

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契約の夜

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 婚礼の夜、厚いカーテンに閉ざされた部屋の中で、リリアーナは彼の言葉を聞いた。
「悪いが君を抱く気は無い」
 その声は冷たくも優しくもなく、ただ距離を置いた響き。
 儚げな顔立ちの男爵令嬢――リリアーナは、長年の経験から微笑みを作るのが上手かった。
「……ええ、わかっています」

 背後には、銀糸のような髪を持つ専属メイド、セリーヌが控えている。
 彼女だけが、家族から虐げられてきたリリアーナの味方でいてくれた。
 伯爵は淡々と続ける。
「私は別の女性を愛している。彼女との間に子ができれば、その子を跡継ぎにするつもりだ」
「それなら、私からも条件があります」
 リリアーナは膝に手を置き、静かに告げた。
「夫人として最低限の社交等の務めは果たしますが私もあなたと子を作るつもりはありません。旦那様の案に賛成致します。代わりに、」
 伯爵は眉をひそめるが、口を挟まず聞いている。
「伯爵邸には離れがありますわね?私はセリーヌとそちらの離れに住まわせて頂きます。あとはるお互いの生活に必要以上に干渉しない。それでどうでしょう?」
 わずかな沈黙ののち、伯爵は頷いた。
「……了承しよう。こちらも離れには近づかないようにする」

 その一言で、婚姻は契約へと変わった。
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