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第16話:暖かさに包まれて
グレイグはソファに大きな布の塊を広げた。
それは、最高級の羊毛を特殊な織り方で起毛させた、ふわふわの毛布だった。
触れるだけで指が埋もれるような柔らかさ。
「寒がりなお前のためだ。ここは夜冷えるからな」
「まあ……!」
セレフィーナは毛布に触れ、その繊維構造に目を奪われた。
「この起毛処理……、素晴らしいです! 繊維の間に大量のデッドエアを保持していますね。空気の層は極めて優秀な断熱材です!」
彼女はガバッと立ち上がり、興奮気味に捲し立てた。
「旦那様、これを冬場の配管の凍結防止用ラッキング材として転用しましょう! この断熱性能なら、氷点下20度でも水道管の破裂を防げます! 村のインフラ整備に革命が起きますよ!」
グレイグは天井を見上げながら、呆れた声で言った。
「頼むから配管じゃなくて自分を温めてくれ……」
グレイグは毛布を広げると、セレフィーナを捕獲した。
抵抗する間もなく、彼女の身体を毛布でくるりと包み込む。
一瞬にして、セレフィーナはモフモフの毛布巻き状態になった。
「あ、あれ? 動きが拘束されました」
「そのまま大人しくしていろ」
グレイグは毛布巻きになったセレフィーナを軽々と抱き上げ、執務室のソファへと運んだ。
そして、彼女を横たわらせる。
「……どうだ」
「……」
セレフィーナは口元まで毛布に埋もれながら、瞬きをした。
温かい。
驚くほど温かい。
自身の体温が毛布の空気層に蓄えられ、輻射熱として戻ってくる。
冷え切っていた手足の末端まで、血液が循環し始めるのを感じた。
「……熱貫流率が非常に低いです。外部への放熱がほぼ遮断されています。……暖かいです」
「だろうな。……仕事は終わりだ。お前は今日、ここで朝まで寝るんだ」
グレイグはソファの脇に椅子を引き寄せ、ドカッと座った。
そして、先ほどのアロマキャンドルの炎を静かに見つめ始めた。
「……旦那様?」
「お前が寝るまで、監視員としてここにいる。……寝ろ」
ぶっきらぼうな声。
けれど、その横顔はキャンドルの灯りに照らされて、どこか優しげだった。
セレフィーナは毛布の中で、小さく身じろぎをした。
クッションの体圧分散、キャンドルのα波誘導効果、そして毛布の断熱効果。
それら全てから、セレフィーナを休ませたいというグレイグの意志を感じた。
(……非効率的だと思っていました。仕事を中断するなんて)
けれど、この心地よさはどうだ。
張り詰めていた神経が緩み、強制的にシャットダウンへと向かっていく。
「……旦那様」
「なんだ」
「この毛布、配管に使うのは中止します」
「当たり前だ」
「私専用の保温材として、運用させていただきます」
グレイグが少しだけ笑った気配がした。
「ああ。……おやすみ、セレフィーナ」
「……おやすみなさいませ」
数分もしないうちに、セレフィーナからは規則正しい寝息が聞こえ始めた。
彼女は知らなかった。
彼女が眠った後、グレイグが彼女の顔にかかった銀髪をそっと払い、「無理ばかりして」と小声で呟いたことを。
そして、二人の間の雰囲気は、キャンドルの炎のように暖かくなっていた。
それは、最高級の羊毛を特殊な織り方で起毛させた、ふわふわの毛布だった。
触れるだけで指が埋もれるような柔らかさ。
「寒がりなお前のためだ。ここは夜冷えるからな」
「まあ……!」
セレフィーナは毛布に触れ、その繊維構造に目を奪われた。
「この起毛処理……、素晴らしいです! 繊維の間に大量のデッドエアを保持していますね。空気の層は極めて優秀な断熱材です!」
彼女はガバッと立ち上がり、興奮気味に捲し立てた。
「旦那様、これを冬場の配管の凍結防止用ラッキング材として転用しましょう! この断熱性能なら、氷点下20度でも水道管の破裂を防げます! 村のインフラ整備に革命が起きますよ!」
グレイグは天井を見上げながら、呆れた声で言った。
「頼むから配管じゃなくて自分を温めてくれ……」
グレイグは毛布を広げると、セレフィーナを捕獲した。
抵抗する間もなく、彼女の身体を毛布でくるりと包み込む。
一瞬にして、セレフィーナはモフモフの毛布巻き状態になった。
「あ、あれ? 動きが拘束されました」
「そのまま大人しくしていろ」
グレイグは毛布巻きになったセレフィーナを軽々と抱き上げ、執務室のソファへと運んだ。
そして、彼女を横たわらせる。
「……どうだ」
「……」
セレフィーナは口元まで毛布に埋もれながら、瞬きをした。
温かい。
驚くほど温かい。
自身の体温が毛布の空気層に蓄えられ、輻射熱として戻ってくる。
冷え切っていた手足の末端まで、血液が循環し始めるのを感じた。
「……熱貫流率が非常に低いです。外部への放熱がほぼ遮断されています。……暖かいです」
「だろうな。……仕事は終わりだ。お前は今日、ここで朝まで寝るんだ」
グレイグはソファの脇に椅子を引き寄せ、ドカッと座った。
そして、先ほどのアロマキャンドルの炎を静かに見つめ始めた。
「……旦那様?」
「お前が寝るまで、監視員としてここにいる。……寝ろ」
ぶっきらぼうな声。
けれど、その横顔はキャンドルの灯りに照らされて、どこか優しげだった。
セレフィーナは毛布の中で、小さく身じろぎをした。
クッションの体圧分散、キャンドルのα波誘導効果、そして毛布の断熱効果。
それら全てから、セレフィーナを休ませたいというグレイグの意志を感じた。
(……非効率的だと思っていました。仕事を中断するなんて)
けれど、この心地よさはどうだ。
張り詰めていた神経が緩み、強制的にシャットダウンへと向かっていく。
「……旦那様」
「なんだ」
「この毛布、配管に使うのは中止します」
「当たり前だ」
「私専用の保温材として、運用させていただきます」
グレイグが少しだけ笑った気配がした。
「ああ。……おやすみ、セレフィーナ」
「……おやすみなさいませ」
数分もしないうちに、セレフィーナからは規則正しい寝息が聞こえ始めた。
彼女は知らなかった。
彼女が眠った後、グレイグが彼女の顔にかかった銀髪をそっと払い、「無理ばかりして」と小声で呟いたことを。
そして、二人の間の雰囲気は、キャンドルの炎のように暖かくなっていた。
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