【完結】彼女はボクを狂おしいほど愛する ー超絶美少女の転校生がなぜかボクにだけぞっこんな件ー

竜竜

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【第3章】いつも彼女のそばで

第5話

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 ガラガラガラ

 スライド式の扉を開ける。
 すると、さっきまで騒いでいたはずの教室が途端に静かになる。
 グループで集まっている人たちは、一斉にヒソヒソ話を始める。
 その中に、優しい笑顔を向けてくれている人がいた。

 真中さんだ。

 控えめだけど手を振って歓迎してくれている。
 ボクはそれに応えるべく、軽く会釈。

 キーン、コーン、カーン、コーン

 席に着くと同時に、朝のホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴ってくれた。
 変な空気を一掃してくれているみたいでありがたい。
 そして担任の大林先生もやってきた。

「お前ら席につけ~」

 あたりを見渡す先生。
 最後に、窓側の一番後ろにいるボクと目が合うとニコっと笑った。
 結葉ほど嫌ってはいないものの、ちょっと気持ち悪いと感じてしまった。先生には悪いけど。
 あまり気を遣わないようにしてくれたのか、ボクが登校したことには特に何も触れずにいてくれた。

 ホームルームが終わった後、真中さんがこちらに来て、

「武田さん、おはよう」
「うん、おはよう。この前はうちに来てくれてありがとう」
「ううん。こっちこそいきなり押しかけちゃってごめんね。……でも、来てくれたよかった」
「真中さんが来てくれたから、学校に行ってみようかなって思えたんだ。だから謝らないでよ」
「えっ……。あ、そうなんだ。じゃあ、行って良かったかな、えへへ……」

 目を大きく見開いてちょっと驚いたような顔をしていたが、すぐにいつもの柔らかい表情に戻る。
 今日の一時限目の授業は国語だ。
 いくつかの教科書は机の引き出しに入れっぱなしになっていたため、国語の教科書があるのか確かめる。
 すると、妙にごちゃごちゃしていることに気付く。
 中身を確認してみると、

「えっ?」
「どうしたの、武田さん?」

 中にあったものをとりあえず出してみると、誰のかも分からない紙屑や丸められたティッシュ、飲み終わった後のジュースの紙パック。そして、すでにカビだらけになっているパンが入っていた。

「えっ? 何……これ……」

 真中さんは、口を押えながら信じられないというリアクション。
 少し遠くから下品な笑い声。

「「「「あははっ!」」」」

 たしか……ケイ先輩と付き合っていたカナ……廣部カナだ。
 カナを含めた4人が、こちらを見ながら笑いを隠そうともしていない。
 多分、あの人たちの仕業だろう。本当にくだらない。
 カナたちがニヤニヤしたままこちらに近づいてくる。

「武田、久しぶりじゃん。どうしたの? 机からゴミなんて出して。うわっ、そのパン、カビ生えてる! ずっと家に引きこもってるからじゃん。早く捨てなよ。あははっ」

 結葉のように、何も気にしてないように振舞いたかったけど、ボクには無理みたいだ。
 思わずカナを睨みつけてしまった。

「なんだよ、その目? まるで私たちがこれをやったみたいな顔しないでくれる?」

 バン!

 気に障ったのか、机を思いっきり叩かれた。

「ねぇ、ちょっと辞めようよ」

 真中さんは、ボクとカナの間に入って諫めようとしてくれた。
 それでもカナは止まらない。

「私、こいつにムカついてるんだよね。あといつも一緒にいたあいつも。お前らのせいでケイ先輩と別れることになったんだから、これくらいで済むなんて安い方だよね。でも、そっか。あいつの方はもう————」
「廣部さん! ……授業、始まっちゃうよ?」
「ちっ」

 止めに入ってくれた真中さんのおかげで、舌打ちをしつつも、カナたちは自分の席に戻っていく。

「……じゃあ私も戻るね」

 真中さんが自席に戻るまで見ていると、チャイムと同時に国語担当のおじいちゃん先生が入って来た。
 その後の授業は何事もなく終わっていく。
 夏休みを挟んでいたためか、ボクが休む前からそこまで授業は進んでおらず、話を聞いているうちになんとなく理解はできた。
 もともと学力は高い方じゃないから、点数を取れるかというと不安ではあるけど……。

 それにしても、久しぶりの登校である程度変な目で見られることは予想してたけど、あそこまでカナに絡まれるとは思ってなかった。
 おかげで、まだ机の中がちょっとゴミ臭い。
 空き教室の机と交換してしまいたいくらいだ。

 ……くだらない。
 ……本当にくだらない。

 こんなとき、結葉がいてくれたらなんて言っただろう。

 キーン、コーン、カーン、コーン

 学校が終わり、帰ろうとしたところで、大林先生に呼びだされた。
 そして今は、一度呼び出されたことのある進路指導室にいる。

 ガラガラガラ 

「すまん、すまん! 呼び出したのに遅れてしまって」

 そんなことを言いつつも、表情はなんの悪びれもしていない先生が入って来た。

「いえ……別に」
「先生は嬉しいぞ。武田がまた学校に来てくれて」
「はぁ……」
「なかなか様子も確認できなくてすまんかった。ちょっと痩せたか?」
「どうでしょう。普段体重を測らないので分かりませんが、あまり変わらないかと思います」
「そうか。ならよかった。呼び出したのは、武田の今の様子が知りたかったのもあるんだが……」

 少し言いにくそうに目線を外している。そして、意を決したように言葉を続け、

「今朝、登校早々、廣部たちと揉めてたそうじゃないか。小耳に挟んでしまってな。……どうかしたのか?」
「別に、何もありません。久しぶりに登校したから声を掛けてくれたんじゃないですか」
「そ、そうか! ならよかった! あいつらも悪い奴じゃないと思うんだ。明らかに武田とはタイプが違うと思うが、あいつらなりの優しさで接して、それが自分に合わないときもある。でも、これから大人になるんだから、そういうのも受け止めてくれると先生としては嬉しい」
「……はい」
「要件はそれだけだ。いきなり呼び出して悪かったな」
「いえ」
「そうだ、家まで送っていこうか? 武田の家は遠いみたいだし。それに、新しく新車を買ったんだ。ぜひ乗り心地の感想が欲しいな」

 新車の鍵を指でクルクル回しながらそう告げる先生。
 でも、

「大丈夫です。一人で帰れますから」
「そうか。じゃあ気を付けて帰れよ」
「はい。失礼します」

 扉を閉めた瞬間、急ぎ足で進路指導室から離れていく。
 少しでもあの人と同じ空気を吸いたくないから。
 なにが『あいつらなりの優しさ』だ。
 あの人は何も分かってない。
 絶対にボクがカナたちに変なことをされているのは気付いてるはずだ。
 思い出したくないけど、先生の言葉が頭をよぎる。

『これから大人になるんだから、そういうのも受け止めてくれると先生としては嬉しい』

 受け止められるはずなんてない。
 結葉が嫌っていた理由がよく分かった気がする。

 教室まで自分の荷物を取りに行き、帰るために下駄箱に向かう。
 扉式の自分の下駄箱を開けてみると、あるはずの外履きが入っていないことに気付く。
 周りを見渡すと、近くのゴミ箱に入っていた。

 ……くだらない。

 校門に向かっていく途中、妙にピカピカの黄色いスポーツカーが通り過ぎていく。
 乗っているのは、さっきまで一緒にいた大林先生。

 ————やっぱり、学校に来ない方がよかったかな。
 
 これは一時の気の迷いだったのかもしれない。
 そもそも人と関わることが間違いだった。
 ケイ先輩に絡まれ、カナに絡まれ、そのことにあえて目をつぶり逃げ出す先生。

 ……くだらない。
 ……うんざりだ。

 すると、再び頭の中に何かがフラッシュバックする。

————いたずらっ子のように可愛らしく微笑む結葉。
————優しく抱きしめてくれる結葉。
————頭を撫でてくれる結葉。
————何かを隠すように笑う結葉。
————苦しそうに嗚咽する結葉。
————いつか届いたスマホのメッセージ。

「うっ……」

 思わずふらついて近くの塀に身を預ける。
 何かが心の中を黒く染め上げていく感覚。
 目の前には夕日が広がっていたのに、段々と夜のような闇が支配していく。

 ……結葉に会いたい。

 ボクはおぼつかない足取りで、自分の家に向かった。
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