23 / 37
【第3章】いつも彼女のそばで
第7話
しおりを挟む
ドン! ドン! ドン!
「おい! 柊! いるんだろ? 開けてくれ!」
玄関が乱暴に叩かれる音が、急に家中に響き渡る。
さらに聞き覚えのある怒声で目を覚ましてしまった。
……あの人が帰って来たみたいだ。
時間を確認すると、もうすぐ日付が変わろうとしていた。
重い足取りで玄関まで移動。
少し震える手で鍵を開ける。
ガシャッ!
ドン!
ドアチェーンを外していなかったため、ドアが開くのを阻害している。
あまりにも強い勢いでドアが引かれたため、思わず後ずさり。
「ちっ。早くチェーンを外してくれ」
言われるがまま、すぐにチェーンを外す。
再びドアがものすごい勢いで開かれたかと思うと、お酒と汗の不快な臭いとともに玄関に倒れ込む。
お父さんが帰って来た。
ボクが家に閉じこもっている間に、会社からリストラされていたらしい。
最近は、そのストレスから夜な夜な呑み歩いては、近所迷惑を無視して夜中に大声を上げながら帰って来ることが多い。
特に暴力を振るわれたことはなかったが、酒を呑んでいないときの温厚な姿とのギャップにいつも恐れていた。
お母さんは、そんなお父さんを早くから見限って離婚。
そしてボクは引きこもり。
もしかしたら、ボクたち家族は何かしらに呪われているんじゃないか?
そんな風に思えてしまうくらい枯れて果て、絶望の渦に飲み込まれてしまっている。
「う……」
お父さんがこのまま寝てしまいそうだ。
ボクは急いでコップに水を注ぎ、ひとまず飲ませようとする。
「お父さん、水————」
バン!
パリンッ!
差し出したコップはボクの掌から弾き飛ばされ、水と共に割れた破片がバラバラに飛び散る。
「え……?」
状況を飲み込むことができず、呆然としてしまう。
でも、お父さんの様子がいつもと違うことだけは分かった。
「なぁ……」
ふらふらの状態から立ち上がって、ボクを見下ろしながら声を掛けてきた。
答えようにも、思うように口が開かない。
ドン!
バサッ!
先ほどのコップと同じように、今度はボクが勢いよく押し飛ばされる。
「ゴホッ、ゴホッ……」
背中から床に着地してしまい、痛みと共に咳が込み上げてきた。
そんなことはお構いなしに、お父さんは言葉を続ける。
「なぁ……。どうして俺なんだ? 俺が悪いことしたか? なんで俺ばっかりこんな目に合わなくちゃいけないんだよ? なぁ! どうしてなんだよ!」
ボクの肩を持ったかと思うと、今度は壁に叩きつける。
「ゔっ……!」
今まではどんなに酔いつぶれても暴力は振るってこなかった。
でも今のお父さんは、まるで目の前にいるのが誰か分かっていないかのように目を血走らせ、息を荒くしている。
……怖い。
身体の震えは止まらない。
目を閉じて、少しでも今のこの現実から逃げ出したいのに、目すら閉じられない。
「やめて……」
やっとのこと声が出たけど、その声は弱弱しく、虫のようなか細い声になってしまった。
でも、お父さんにその声が届いたのか、
「ちっ」
そのままボクの前からいなくなり、自室に戻っていった。
急に何かが込み上げてくる。
————なんでボクばっかりこんな目に合うんだ?
————誰かに悪いことをしたのか?
————誰かに恨まれるようなことをしたのか?
いや。してない。
ボクは何も悪いことなんてしてない。
頬に熱いものが伝っている感覚。
あぁ……、自分の無力さに耐えきれずに、涙を流してしまったんだ。
噛みしめた唇からは血の味もする。
……どうして?
……死にたい。
……結葉……。
「柊! どうしたの? もしかして、お父さんに……?」
いつの間にか視界には結葉がいた。
「……ごめん……」
どうしてなのか、謝罪の言葉が出てしまった。
「ううん。言ったでしょ。柊は何も悪くない」
いつもの優しい表情。気だるそうだけど、妙に甘ったるい声。
ボクにはいつだって心の癒しだった。
その癒しの人は、いつもこう言ってくれる。
「……柊は私が守ってあげる」
すると視界が急に暗くなり、意識も遠くの方へと旅立ってしまった。
「おい! 柊! いるんだろ? 開けてくれ!」
玄関が乱暴に叩かれる音が、急に家中に響き渡る。
さらに聞き覚えのある怒声で目を覚ましてしまった。
……あの人が帰って来たみたいだ。
時間を確認すると、もうすぐ日付が変わろうとしていた。
重い足取りで玄関まで移動。
少し震える手で鍵を開ける。
ガシャッ!
ドン!
ドアチェーンを外していなかったため、ドアが開くのを阻害している。
あまりにも強い勢いでドアが引かれたため、思わず後ずさり。
「ちっ。早くチェーンを外してくれ」
言われるがまま、すぐにチェーンを外す。
再びドアがものすごい勢いで開かれたかと思うと、お酒と汗の不快な臭いとともに玄関に倒れ込む。
お父さんが帰って来た。
ボクが家に閉じこもっている間に、会社からリストラされていたらしい。
最近は、そのストレスから夜な夜な呑み歩いては、近所迷惑を無視して夜中に大声を上げながら帰って来ることが多い。
特に暴力を振るわれたことはなかったが、酒を呑んでいないときの温厚な姿とのギャップにいつも恐れていた。
お母さんは、そんなお父さんを早くから見限って離婚。
そしてボクは引きこもり。
もしかしたら、ボクたち家族は何かしらに呪われているんじゃないか?
そんな風に思えてしまうくらい枯れて果て、絶望の渦に飲み込まれてしまっている。
「う……」
お父さんがこのまま寝てしまいそうだ。
ボクは急いでコップに水を注ぎ、ひとまず飲ませようとする。
「お父さん、水————」
バン!
パリンッ!
差し出したコップはボクの掌から弾き飛ばされ、水と共に割れた破片がバラバラに飛び散る。
「え……?」
状況を飲み込むことができず、呆然としてしまう。
でも、お父さんの様子がいつもと違うことだけは分かった。
「なぁ……」
ふらふらの状態から立ち上がって、ボクを見下ろしながら声を掛けてきた。
答えようにも、思うように口が開かない。
ドン!
バサッ!
先ほどのコップと同じように、今度はボクが勢いよく押し飛ばされる。
「ゴホッ、ゴホッ……」
背中から床に着地してしまい、痛みと共に咳が込み上げてきた。
そんなことはお構いなしに、お父さんは言葉を続ける。
「なぁ……。どうして俺なんだ? 俺が悪いことしたか? なんで俺ばっかりこんな目に合わなくちゃいけないんだよ? なぁ! どうしてなんだよ!」
ボクの肩を持ったかと思うと、今度は壁に叩きつける。
「ゔっ……!」
今まではどんなに酔いつぶれても暴力は振るってこなかった。
でも今のお父さんは、まるで目の前にいるのが誰か分かっていないかのように目を血走らせ、息を荒くしている。
……怖い。
身体の震えは止まらない。
目を閉じて、少しでも今のこの現実から逃げ出したいのに、目すら閉じられない。
「やめて……」
やっとのこと声が出たけど、その声は弱弱しく、虫のようなか細い声になってしまった。
でも、お父さんにその声が届いたのか、
「ちっ」
そのままボクの前からいなくなり、自室に戻っていった。
急に何かが込み上げてくる。
————なんでボクばっかりこんな目に合うんだ?
————誰かに悪いことをしたのか?
————誰かに恨まれるようなことをしたのか?
いや。してない。
ボクは何も悪いことなんてしてない。
頬に熱いものが伝っている感覚。
あぁ……、自分の無力さに耐えきれずに、涙を流してしまったんだ。
噛みしめた唇からは血の味もする。
……どうして?
……死にたい。
……結葉……。
「柊! どうしたの? もしかして、お父さんに……?」
いつの間にか視界には結葉がいた。
「……ごめん……」
どうしてなのか、謝罪の言葉が出てしまった。
「ううん。言ったでしょ。柊は何も悪くない」
いつもの優しい表情。気だるそうだけど、妙に甘ったるい声。
ボクにはいつだって心の癒しだった。
その癒しの人は、いつもこう言ってくれる。
「……柊は私が守ってあげる」
すると視界が急に暗くなり、意識も遠くの方へと旅立ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる