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【第4章】目の前に見えるもの
第3話
しおりを挟む時刻は深夜2時。
あたりはすっかり寝静まり、家の明かりもほとんど消えている。
ボクたちは、急遽決行することになった散歩に出かけていた。
夜になると途端に冷え込むため、上着も必要だ。
結葉は、前にピクニックに行ったときに着ていた黒ワンピース姿。
お気に入りなのか、何回か学校にも着ていた気がする。
「ねぇ、柊」
「なに?」
「この時間帯って、幽霊が一番出やすいんだって」
「だ、だ、だから……?」
「もしかして~、お化け怖いの?」
「ち、違うよ! 結葉が急に変なこと言うからびっくりしただけだよ!」
「やっぱり怖いんだ! もう柊可愛すぎ!」
「うわっ!」
「どれだけ私を悶えさせれば気が済むの? すりすりすり!」
「やめろって!」
人がいないからいいものの、外で抱き着いてくるのはやめてくれ……!
端から見たら、人目を憚らずにイチャイチャするバカップルに見えていることだろう。
恥ずかしさが込み上げて、思わず顔が火照ってしまう。
そんなとき、
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
「うわっ! びっくりした!」
通りがかった家の庭から、夜中にも関わらず、犬が大声で叫んできた。
泥棒と勘違いしたのかもしれない。
こちらに向かって走って来ようとするが、鎖に繋がれているため途中で食い止められる。
別に悪いことをしたわけでもないのに、本能が働いて「逃げなきゃ!」という気分にかられる。
「……」
「結葉?」
こんなとき、結葉ならなんだかんだ笑いながら犬をあやすものだと思っていた。
しかし、結葉の目は、生き物に対して向けるようなそれではなかった。
そう。言い表すのなら、ゴミを見るかのような。
顔は無感情なのに、どこか憎しみめいたものも感じ取れる。
「……柊は私が守る」
「ん? 何か言った?」
「……私と柊の時間を邪魔しないで」
結葉が口を開いているのは分かるが、ぼそぼそと呟くので、内容までは聞き取れない。
すると突然、近くにあった大きめの石を持ち上げる。
段々と犬に近づく。
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
「おい、それでどうするつもり?」
ちょっと胸騒ぎがしたので、結葉に尋ねる。
「……」
こちらを振り向いてくれた。
いつもの笑顔だった。
しかし、彼女の口はいっこうに開こうとしない。
「結葉……」
今宵は満月。
雲に隠された世界が徐々に鮮明になっていく。
月の明かりに照らされた彼女の姿は、黒い天使そのものだった。
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