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【第5章】強化! チームワーク‼
第3話
しおりを挟む杏沙と二人で出かけた日の翌日。
今日は一葉との親睦を深める会だ。
女の子と遊んだ次の日に他の女の子とお出かけなんて……傍から見たらモテ男なんじゃね?
まぁ本人たちは、幼女戦隊として強くなるためにしかたなくのこととはいえ、俺からしてみれば、人生でまたとないウハウハラッキーイベントだ。
昨日はあんなに緊張したけど、今日の相手は年下でおしとやかな一葉ということもあって、そこまで緊張せずちゃんと睡眠をとって待ち合わせ場所に向かうことができた。
といっても、約束の時間の30分以上前に着いてしまったんだけど。
一葉が来るまでどこかで時間を潰そうか……って、え?
待ち合わせ場所にしていた公園の噴水の前には、一葉らしき女の子が既にそこにいた。
急いで向かってみると、やっぱり一葉だった。
「ごめん、一葉! 待たせちゃったかな?」
「い、いえ……。こういうの初めてなので……緊張してなかなか眠れなくて……約束の時間の2時間前に着いちゃってました」
恥ずかしそうに『えへへ』とはにかむ一葉。
全体的に夏らしく黄色を基調にした明るめなコーディネート。
丈の短めな白のインナーの上に黒のショートジャケット。
薄い黄色のプリーツスカートを履いて、綺麗な白い足をのぞかせている。
そして、普段は身に付けていない黄色のカチューシャが長い黒髪といい感じに調和を取り、若い年頃の女の子感をこれでもかと醸し出している。
普通に美少女だ。
40人近くいる某アイドルグループに入っても何ら遜色はないだろう。
杏沙のときもそうだったけど、普段の女の子って、みんなこんな感じなのか?
印象がガラリと変わってるから変に緊張してドキがムネムネしてしまうじゃねぇか!
「あの……武能さん、どうかしましたか?」
「あぁ! ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「もしかして……武能さんもあんま寝られなかったんですか?」
「あはは~。そんなところかな……」
いかん、いかん!
一葉とこうして二人で話すことなんて今まで全くなかったし、年上である俺がリードして、信頼関係を構築しないと!
「今日はなにかしたいこととかある?」
「えと……その……」
「うんうん」
「……………………」
「うん?」
「…………………………」
気まずい……。
そういえば、いまだに一葉のことはよく分かってないんだよな。
そもそもあまり話したことがないんだし。
適当に街をぶらついて、一葉が興味がありそうなところに寄ってみるか。
「「あの!」」
お互い喋りだしのタイミングを見誤り、思わず声が被る。
まだまだお互いの理解と信頼には時間がかかりそうだ……。
「一葉からどうぞ」
「えと、その……紐が……」
「紐? ……あっ」
下を見てみると自分の靴紐がほどけていた。
しゃがんで縛り直そうとしたが、
「私、縛ります!」
「いや、なにもそこまで……」
「いえ、私、弟がいるからよくこうやって面倒を見ることが多くて。ここは日差しが当たって暑いですよね? こっちの木陰に行きましょう」
「う、うん」
近くの木陰に移動。
靴紐のこともそうだだし、木陰への移動もそうだけど、一葉は人のことをよく見てるんだな。
口数は少ない方だけど、その分相手が何を考えてるのか、どういう状態なのかを見極めているのかもしれない。
木陰の多い近くのベンチに座る俺。
そして、しゃがんで靴紐を縛ってくれる一葉。
弟の面倒をよく見るとは言ってたけど、年下の女の子にこんなことをさせるのは気が引け……ん⁉⁉⁉
俺は見てはいけないものを見てしまった。
人はしゃがむと前かがみになる。
そして、目の前の女の子はその拍子にインナーの中身が見えそうに……!
すぐさま目をそらす。
「どうかしましたか?」
「ひぇ……、なんでも」
「はい、結び終わりました」
「あ、ありがとう……」
こういう嬉しいハプニングを漫画とかで見てると『なんで主人公はもっとがっつかないんだよ』とイライラすることもあったが、いざ自分に降りかかると、人はこんなにも無力になってしまうことに気付いた。
……惜しいぜ……。
気を取り直して、一葉の方を見ると、
「おっ! それって今やってるアニメの?」
俺が指をさしているのは、一葉のカバンに付けられたアニメキャラクターのストラップ、深夜にテレビで放送中の少年漫画が原作のアニメだ。
少年同士の熱いバトルはさることながら、女の子のキャラクターも可愛く、男女ともに人気のある作品だ。
「……」
一葉が目を大きく見開きながら黙ってしまった。
こういう趣味って、世間では浸透しつつあるけど、自分一人だけで楽しみたいって人もいる。
あまり触れてほしくなかったのかな……?
「も、もしかして、武能さんもこの作品、好きなんですか……?」
意外な反応が返ってきた。
「う、うん。アニメとか漫画とか昔から好きだし————」
「この作品、本当に尊いですよね! なにが尊いって、キャラと世界観です! とくに男同士の熱いバトルと女の子キャラの反則級の可愛さ! もれなく全員魅力的だなんて罪ですよ! もう重罪です! いくらお金をつぎ込んだことか……って、ごめんなさい……私……」
「いや……」
びっくりした。
いきなりマシンガンでもぶっ放したかのようにしゃべりだすものだから。
こんなに淀みなくハッキリ喋る一葉なんて初めて見たぞ。
「一葉って、アニメとか漫画とか好きなんだ」
「はい……ネットゲームとかもよくやります……。普段こういうことを話す友達なんていないからつい……」
「全然大丈夫だよ! 今日はお互いを理解するための会でもあるんだから。あっ、そうだ! あそこ行ってみない? この島で有名なサブカルオタクの聖地。あそこならアニメ関係のものはいっぱい揃ってるし————」
「いいんですか⁉」
「も、もちろん!」
またしても、俺の言葉を遮り、身を乗り出すように食いつく一葉。
目を輝かせているし、この提案は間違ってなかったみたいだ。
すると、一葉から逆に提案がきた。
「私、どうしてもそこで行きたかったところがあるんです! いいですか?」
「うん! 行こうぜ!」
「やったぁー‼‼‼」
そして向かった先は、サブカルオタクの聖地にひっそりとたたずむお店。
そこで俺が目にしたものは……
「武能さん! これなんてどうですか?」
「いいと思います!」
「じゃあこれは?」
「ヤバイっす!」
「こっちは?」
「パネェっす‼‼‼‼」
ここはコスプレ専門店。
次々と露出度の高めな姿を披露するものだから、色々と爆発しそうである。
対する一葉は、恥ずかしがる様子もなく、次々とアニメのキャラクターの衣装を披露する。
「最後はこれです♪」
「おお! かっけぇ!」
最後に披露してくれたのは剣士の衣装。
これは男キャラの恰好であるが、剣の持ち方も妙に様になっている。
着替え終わって、
「はぁ~、楽しかったです……!」
「普段もコスプレするの?」
「はい……。自分で衣装を作って、自分の家でしか着ないんですけど。でも、ここのお店の衣装は完成度が高いことで有名で、一度来てみたかったから嬉しいです! どうしても一人だと怖くて……」
「そうだったんだ! なら一緒に来られてよかった! 最後の剣士はすごく様になってたね!」
「私、高校までずっと剣道をやってて……。そんなに強くないんですけどね」
だからなのか。
幼女イエローに変身したときも雷を剣の形にして戦っていたし。
「でも、一葉の知らない一面が見られてよかった。……じゃあ今度は俺に付き合ってもらおうかな」
そう言ってやってきたのは大きなゲームセンター。
ここも来たくても来られなかったのか、一葉は色んなゲーム筐体を見ながら目を輝かせている。
ピコピコピコピコ
スカッ
「あー惜しい! あとちょっとで取れたのに!」
今やっているのはクレーンゲーム。
別に得意ってわけでもないし、たいして景品がほしいわけでもないけど、無性にやりたくなるときがある。
それを見ていた一葉は、
「あの……あそこの部分にアームをひっかければ、隣のぬいぐるみも取れそうですよ?」
一葉の言っていた通りにやってみたら、見事に2つのぬいぐるみを獲得。
「すごいな、一葉! こういうの初めてでしょ?」
「……はい。でもなんとなく、あそこに引っ掛けたらいけそうな気がして」
「さすがだよ。これいる?」
「いいんですか⁉ ありがとうございます‼」
獲得した2つのぬいぐるみをプレゼントした。
その後、銃を模したコントローラーを操作して遊ぶガンシューティングゲームでは、
「武能さん! そのボス、もしかしたら頭じゃなくて、目が弱点かもしれません」
「えっ? 本当? ……本当だ! よく分かったね!」
「頭よりもやたらと目を防御してた気がしたので」
こんな風に、一葉は観察眼が優れているのか、弱点を見つけてはモンスターを倒して、ついにゲームをクリアすることができた。
そして帰り際。
待ち合わせ場所に戻ってきて、
「今日はその……楽しかったです……!」
「俺も普通に楽しんじゃったよ。これで少しでもお互いのことを信頼できるようになれればいいんだけど……あははっ~」
「「…………」」
なぜかお互い黙ってしまう。
『デートの別れを惜しむ初々しいカップルか!』とツッコミたくなるが、一葉がどこか真剣そうな顔をしているのでやめておく。
「あの……今日はありがとうございました! ……新斗……くん!」
「えっ? 今、名前で呼んでくれた? しかも『くん』付けで」
「ダメですか……?」
そんな上目遣いでこっちを見るのはやめてくれぇぇい!
「だ、大丈夫!」
「良かったです……! 私、高校も大学も女の子ばかりの環境だったから、あまり男の人と接する機会がなくて……。だから最初は、ちょっと怖かったんですけど、多分もう大丈夫……です!」
そう言って笑う彼女は、夏のうっとうしい湿った風を、爽やかで心地よいものに変えてしまったかのように、心温まる何かに包まれていた。
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