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【第4章】告白、そして……
第9話
しおりを挟む7月16日、金曜日。
試験結果返却日。
高崎家でのドキドキ?お泊りイベントが終わったかと思うと、あっという間に時が過ぎた。
試験自体は月曜日から4日間に分けて行われ、その日の試験が終われば、高崎さんと次の日の科目の最終確認をして本番に臨む。
それを繰り返すうちに、無事に全日程をこなすことができた。
試験終了後の高崎さんは、某ボクシング漫画の主人公みたいに真っ白に燃え尽きていたが、本人曰く、今までにないほどの何とも言い難い達成感があったらしい。
とりあえず良かった。
そして、今日は全教科の試験結果が返ってくる日である。
昨日、試験が終わったばかりではあるが、試験期間中の教師陣は思いのほか暇らしく、良くも悪くも生徒達の勉強の成果をすぐに出してくれる。
試験結果は、軽い面談も兼ねて放課後に一人ずつ渡される仕組みだ。
ちなみに、俺の結果は全教科満点とはいかなかったが、どの教科も高得点をキープして総合1位だった。
そして今いる場所は、いつも勉強をしていたあの空き教室。
試験結果の報告も兼ねて、ここに集まることになっていた。
開けた窓からの風を浴びながら、高崎さんが来るのを待つ。
すでに7月中旬のため、窓を開けただけでは全然涼しくない。
関東地方まではすでに梅雨が明けたようで、夏らしく燦々と降り注ぐ陽光と、大きな入道雲を漂わせる青い空がとても眩しい。
遠くから、かすかに蝉の声も聞こえる。
一方で廊下側からは、徐々にこちらに近づいて来る音。
タッタッタッタッタッ!
ガタン!
忙しないけど、どこか懐かしい足音とともに、ものすごい勢いで扉が開く。
————前と違うのは、満面の笑みを見せる高崎さんの姿だった。
「太田君! 私、やったよ!」
高崎さんはハァハァと息を切らしながら成績表を見せてくれた。
確認してみると、赤点ギリギリの教科はなく、ほとんどの教科で平均点の前後まで成績がアップしていた。
現代文に関しては平均55点中、80点という前の高崎さんでは考えられないような点数をたたき出していた。
「残念ながら全教科平均以上はいかなかったけど、あの短期間でここまで点数をアップさせたのは、高崎さんのポテンシャルがあってこそだよ」
「うんうん、全部太田君のおかげだよ! 今思えば、現代文は中学のときとやってることはほとんど一緒なのに点数が取れてなかったのは、他の教科で空回りしてたせいかもね。えへへ。けどけど、太田君が面倒を見てくれたおかげで、頭の中が整理できて、こんな成績を……。まだまだだけど、今の自分にとっては……こんなに良い成績を……取ることができたん……だよ……」
さっきまで元気よく話していた高崎さんの言葉が急に詰まりだす。
何事かと高崎さんの顔を確認すると、可愛らしく、いかにも滑らかそうな彼女の頬に、涙が伝っていた。
「だ、大丈夫?」
「うん。大丈夫。ごめんね、急に泣き出しちゃって。勉強しても落ちていく一方だと思ってたのに、急に未来が開けた気がして……嬉しくって……。本当にありがとう、太田君」
「俺は単に、自分の勉強のやり方を伝えただけだから。頑張って努力して今の成績を取れたのは、高崎さん自身の力だよ。でも、ありがとう」
謙遜は日本人の美徳だと言うけど、卑屈になり過ぎると褒めてくれた人に失礼だ。
良かった。本当に良かった。
一緒に勉強することになったときは、緊張とドキドキと不安でどうなるかと思ったけど……
美少女ゲームの主人公の気分ってこんな感じなのかな。
ゲームだったらこのあと告白イベントに移っていくはずだけど、それはこれまでにちゃんと好感度をMAXまで上げて、恋愛フラグを立てていることが前提だ。
まさかそこまで————
「あのさ、太田君……」
あれ?
さっきまで泣いていたせいなのか分からないが、頬を真っ赤にさせながらモジモジ&恋する乙女な顔をしている高崎さん。
「な、な、なに?」
「最初は太田君のこと、単なる真面目さんで、堅くて、あまりクラスの人と話さなくて、私なんかとは今後もあまり関わることなく卒業するんだって思ってたの」
「……うん」
「でも、私のわがままを聞いて面倒を見てくれて、妹とも仲良くしてくれて、しかも成り行きとはいえ泊りがけで勉強を教えてくれた。女の子と話すのが苦手だと思うのに……。このまま何事もなければ、勉強を教えてくれるクラスの頼りになるお友達で終わるんだと思ってた。でも……何事が起っちゃったみたい……」
依然として頬を赤く染めているが、いつものほんわかした可愛らしい笑顔を見せる。
え? ちょっと待って?
この流れ、まさか……ずっと待ち焦がれていたことが起こるのか……?
これが、俺の素敵なスクールライフを送る第一歩になるのか……?
思考がまとまらず唖然とする俺。
高崎さんは何かを決意した表情になり、言葉を続ける。
「私……太田君のことが……好きになっちゃったみたい……。だから私を、太田君の彼女さんにしてください!」
今までずっと待ち続けていた言葉。
待ち続けていたシチュエーション。
でも……
ひとまず何か言わないとと思っているのに、口が動かない。
それどころか指一本動かせない。
視界に入っている高崎さんをかろうじて確認する。
真剣にこちらを向いて、恥ずかしさと意思の強さを訴えた表情。
でも、彼女も俺と同じく、全く動かない。
時が……止まってる?
そう思った矢先————
ものすごい勢いで高崎さんが動き出す。
そして泣き出す。
いや、涙が瞳に戻っている。
そのまま勢いは止まらず、先ほどやった行動をやり直す。
————まるで、時間を巻き戻すかのように。
ついに高崎さんは、扉の前に戻り、後ろ向きのまま出ていく。
世界がだんだん遠くなる……
俺一人だけを置いていくかのように……
そしてついに……
目の前が暗闇に包まれた……
………………………………
………………
……
…
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