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縮んでいく距離
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――ムルアラット街道西――
町を出て四時間程は経っただろうか、僕達は林の中を歩いていた。
しかしこの鎧は不思議だ。頑丈そうな外見とは裏腹に、全然重さを感じない。
完全フルアーマーって訳でもなく、関節部分などは隙間が開いて肌が見えている。
その為通気性も抜群。着ていて全く苦にならないのだ。
魔装具って言ったっけ。仕様に色々と難ありだけど、とても素晴らしい装備な気がする。
そういえばこの鎧に名前ってないのかな。
剣がセクシーソードだから、セクシーアーマーか?
女性が着てるなら何となく卑猥な響き。でも男がセクシーアーマーって変態臭しかしない。セクシーアーマーは却下だ。
でも何だ。何となく言い易い。語呂がいい感じもするよな、セクシーアーマー。
そんな事を考えていると、先頭を歩くニーヤが立ち止まった。
道の真ん中、行く手を遮るように何かが居る。
よく見ると、ソレは昔動物園で見た羊と同じくらいの大きさ。
僕の世界では、絶対に在り得ない大きさの動物がそこに居た。
「あ、あれ魔物だよね……?」
「見れば分かるでしょ」
……やっぱりそうか。在り得ないもんな。あの大きさ。
馴染みのある顔だ、知らない人はいないだろう。
ネズミである。とびきり巨大な。
「よし、アンタあれ退治してきなよ」
え? 僕がですか? 初戦闘がネズミですか? あれはネズミですか?
最初ってスライムとかペチペチするんじゃないのかよ。
「大丈夫だよ、死んだら埋めてあげるし」
「せめて死ぬ前に助けて下さい……」
よし、僕も男だ。やってやろうじゃないか。覚悟を決めて剣を抜く。
「そいつは意外と素早いから、ちゃんと動きを見なよー」
背中からニーヤのありがたいアドバイス。
……そんなものが何の役に立つと言うんだ。ネズミが素早いのは当たり前じゃないか。
その時、ネズミが全身の気を逆立てた。
あ、やばい。怒ってる。威嚇してる。こうなったらしょうがない。
「せい!」
おもむろに剣を振る。
昨日より小さい光の刃が飛び出し――ネズミは真っ二つになった。
「……よし!」
「『よし!』じゃないわよ! アンタ何やってんの!? そんなの剣の練習にもならないわよ」
ニーヤが呆れた様に言う。おっしゃる通りでございます。
「いや、だって危ないじゃん。咬まれたら死んじゃうよ」
「情けなっ。よくそれで『自分の事は自分で何とかしたい~』とか言えたね。アンタがまともに戦えるようになってくれないとアタシ達も困るんだからね」
ニーヤのド正論が、心を折ろうとしている。
僕に100のダメージ。
「う、うん。そうだね……」
「まぁいいじゃないですか。勝ちは勝ちですよ、さぁ進みましょう」
モミさんのフォローが入る。
吐き気を催しそうな、ネズミの死骸を見ながら思った。
僕は本当にこの世界で生きていけるんだろうか。
早くも、僕の心は折れかけていた。
――宿――
林道をしばらく進むと、一軒の建物が見えた。
看板には見慣れぬ文字。
でも何て書いてあるのは大体分かった。ムルアラットでも同じ文字を見たからだ。
「ここは宿屋ですか?」
「そうですよ、今日はここで一泊です。まだ少し早いですけど、シーズラまで宿はありませんからね」
やっと休める。そう思うと、全身から力が抜けていく。
睡眠不足と長旅の疲労。僕の身体はもう限界に達していたのだ。
「よし、アンタちょっと来なさい」
宿屋に入ろうとした僕をニーヤが引き止める。
「何するんだ?」
「稽古に決まってるじゃない」
そんな話は聞いていない。いつ決まったんだ。
……そう言えたらどんなに楽だろうか。
断る事など出来るはずもなく、ニーヤの有難い指導が始まった。
建物の裏、先程と同じように木の棒を渡される。
「じゃあまずは剣の握り方ね。適当に握るだけじゃダメなの。こうやって握ったら腋を締めるように、親指を内側にひねる感じ」
彼女の手元を見ながら、同じように握る。
あれ、何かしっくりくるな。腕の筋肉が張っているのが分かる。
「どう? 全然違うでしょ?」
「確かに全然違うよ。力が入るっていうか」
握り方一つでこんなに変わるのか。これは勉強になるな。
「よし、じゃあ次ね。アタシが斬りかかるから、アンタはそれを剣で受けなさい」
「……握り方からそれって難易度上がりすぎじゃないか?」
「大丈夫よ、これくらいだから」
そういって、彼女はゆっくりと棒を振る。
そのスピードはとても遅く、スローモーションの様だ。
「まぁ少しずつは早くするけど、とりあえずこんなものね。さぁ行くよ」
上段から振り下ろされる棒、難なく受け止める。次は左。その次は右。
ゆっくりと繰り出されるニーヤの攻撃を、僕はひたすら受け続けた。
静かな林の中、木のぶつかる音が響き渡る。
カン、カン、カンとリズミカルに響くその音は、まるで手拍子の様。段々とスピードは上がっていたが、自然と身体はついていっていた。
「よし、一旦休憩ね」
彼女の言葉に、崩れるように地面に腰を落とした。
汗が全身から吹き出している僕とは違い、彼女はうっすら汗ばむだけ。
流石、と言ったところだろうか。
ふと顔をあげると、ペロ様が隣にいた。
僕に向かって差し出した手には、水のはいった木のコップが握られていた。
「僕に?」
彼女がコクンと頷いた。
「ありがとう」
水を受け取り、一気に飲み干す。
冷たい水はカラカラになった喉を潤し、全身に力がみなぎるようだった。
身体中の汗が一瞬で引いていき、息をするたび、大きく上下していた肩もピタリと止まった。
「あれ? これって……?」
普通の水じゃない? 一瞬で疲れがとれたみたいだ。
「それは『神水《しんすい》』だよ。神の力を持つペロの魔法みたいなものね」
「へー。ペロ様は凄いんだな」
神の末裔とかって言ったよな。
無口で無表情。雰囲気はやっぱ普通の人とは少し違う。
でもめちゃくちゃ可愛いんだよな。同い年なのにこんなに小さいし。青みがかった髪の毛もつやつやしてるし――。
「ねぇ、何してんの?」
ニーヤの言葉で我に返る。いつの間にか、僕の手はペロ様の頭の上に。
はっ!? またやってしまった。勝手に手が伸びるんだよ。くそっ、呪われたセクシーアーマーめ!
「ご、ごめん!」
「この変態。ペロに気安く触らないでよね。アンタなんかが触っていい存在じゃないんだから」
「ご、ごめん。もう触らないよ」
僕だって触りたくて触ってるわけじゃないんだ。いや、ちょっとは触りたいけどさ。
「そ、そういえば。何でニーヤはそんなに強いんだ? この世界の事は良く分からないけど、女の子でも剣術を習ったりするの?」
「基本的に男の方が多いけどね。アタシは特別なんだよ、小さい頃から戦闘の訓練をしてたから。ペロのためにね」
「ペロ様のため? どういう事?」
「アタシはペロの護衛みたいなものさ、モミだってそう。アタシ達が戦うのもペロを守るため、魔王を倒すためにはペロの力が必要だからね」
魔王を倒すのにペロ様の力が必要? 彼女はそんな力を持っているのか。
「さ、稽古の続きするよ。もう十分休んだでしょ」
「あ、うん」
もう少し色々聞きたかったけど、まぁ今度ゆっくり聞こう。
棒を握り締め、ニーヤと稽古を再開した。
稽古は日が沈むまで続き、呼びに来たモミさんと一緒に宿に戻る。
食堂で夕食を食べていると、隣のテーブルから聞こえた一言に、ニーヤの手が止まった。
「そういえば、テヘペロ村襲われたみたいだぞ」
「本当か!? この島にも魔物が来やがったのか。でも何であんな小さな村が襲われたんだ?」
「知らないのか? あの村にはペロディアの子孫が一人居たって話だ。それを狙われたらしいな」
「そう言えば聞いた事あるな。それでどうなったんだ?」
「村は全滅、皆殺しだ。酷い有様だったらしいぜ」
「何て事だ。物騒な世の中になったもんだぜ」
「それにしてもよ――」
「ペロディアの子孫だか何だか知らねーけど、そいつ一人の為に村人全滅じゃ、死んだ連中も浮かばれねーよな」
「おいおい、それは無いだろ。一応神様なんだから」
男の心無い言葉。ニーヤの手が震えている。怒っているんだ。
「だって死んじゃったんだろ神様。守り神だが何だか知らないけど、結局守れてないじゃないか」
握り締めたニーナの拳の上に、そっとペロ様が手を乗せた。
自分も辛いはずなのに、無言で首を横に振るペロ様の姿に、胸が苦しくなる。
「魔王の軍団が強すぎたんだよ。神様でも敵わなかったんだ」
「神様神様って、疫病神の間違いじゃねーのかよ」
俯いたペロ様が、キュッと下唇を噛んだ瞬間。僕は自分でも信じられない行動に出た。
「あやまれよ」
「あ? なんだお前」
「神様に謝れって言ってるんだよ!」
食堂に響き渡る程の大声で、僕は男に叫んでいた。
身体中が燃えるように熱い、怒りで震えているのも分かる。
軽はずみな男の発言が、僕にはどうしても許せなかった。
「お、おい行こうぜ。気分悪くさせて悪かったな兄ちゃん」
もう一人の男が間に入り、二人は食堂を出て行った。
「アタシが我慢してるのに、何でアンタが怒るのよ」
「ご、ごめん。何となく、身体が勝手に……」
その時、ペロ様の手が僕の頭に触れた。
相変わらず無表情だけど、多分ペロ様なりの『ありがとう』なんだとわかった。
「あら、珍しいものが見れましたね」
頭を優しく撫でる彼女の手に、恥ずかしくもあり、嬉しくもあり。
少しだけ、ペロ様と仲良くなれた気がした。
町を出て四時間程は経っただろうか、僕達は林の中を歩いていた。
しかしこの鎧は不思議だ。頑丈そうな外見とは裏腹に、全然重さを感じない。
完全フルアーマーって訳でもなく、関節部分などは隙間が開いて肌が見えている。
その為通気性も抜群。着ていて全く苦にならないのだ。
魔装具って言ったっけ。仕様に色々と難ありだけど、とても素晴らしい装備な気がする。
そういえばこの鎧に名前ってないのかな。
剣がセクシーソードだから、セクシーアーマーか?
女性が着てるなら何となく卑猥な響き。でも男がセクシーアーマーって変態臭しかしない。セクシーアーマーは却下だ。
でも何だ。何となく言い易い。語呂がいい感じもするよな、セクシーアーマー。
そんな事を考えていると、先頭を歩くニーヤが立ち止まった。
道の真ん中、行く手を遮るように何かが居る。
よく見ると、ソレは昔動物園で見た羊と同じくらいの大きさ。
僕の世界では、絶対に在り得ない大きさの動物がそこに居た。
「あ、あれ魔物だよね……?」
「見れば分かるでしょ」
……やっぱりそうか。在り得ないもんな。あの大きさ。
馴染みのある顔だ、知らない人はいないだろう。
ネズミである。とびきり巨大な。
「よし、アンタあれ退治してきなよ」
え? 僕がですか? 初戦闘がネズミですか? あれはネズミですか?
最初ってスライムとかペチペチするんじゃないのかよ。
「大丈夫だよ、死んだら埋めてあげるし」
「せめて死ぬ前に助けて下さい……」
よし、僕も男だ。やってやろうじゃないか。覚悟を決めて剣を抜く。
「そいつは意外と素早いから、ちゃんと動きを見なよー」
背中からニーヤのありがたいアドバイス。
……そんなものが何の役に立つと言うんだ。ネズミが素早いのは当たり前じゃないか。
その時、ネズミが全身の気を逆立てた。
あ、やばい。怒ってる。威嚇してる。こうなったらしょうがない。
「せい!」
おもむろに剣を振る。
昨日より小さい光の刃が飛び出し――ネズミは真っ二つになった。
「……よし!」
「『よし!』じゃないわよ! アンタ何やってんの!? そんなの剣の練習にもならないわよ」
ニーヤが呆れた様に言う。おっしゃる通りでございます。
「いや、だって危ないじゃん。咬まれたら死んじゃうよ」
「情けなっ。よくそれで『自分の事は自分で何とかしたい~』とか言えたね。アンタがまともに戦えるようになってくれないとアタシ達も困るんだからね」
ニーヤのド正論が、心を折ろうとしている。
僕に100のダメージ。
「う、うん。そうだね……」
「まぁいいじゃないですか。勝ちは勝ちですよ、さぁ進みましょう」
モミさんのフォローが入る。
吐き気を催しそうな、ネズミの死骸を見ながら思った。
僕は本当にこの世界で生きていけるんだろうか。
早くも、僕の心は折れかけていた。
――宿――
林道をしばらく進むと、一軒の建物が見えた。
看板には見慣れぬ文字。
でも何て書いてあるのは大体分かった。ムルアラットでも同じ文字を見たからだ。
「ここは宿屋ですか?」
「そうですよ、今日はここで一泊です。まだ少し早いですけど、シーズラまで宿はありませんからね」
やっと休める。そう思うと、全身から力が抜けていく。
睡眠不足と長旅の疲労。僕の身体はもう限界に達していたのだ。
「よし、アンタちょっと来なさい」
宿屋に入ろうとした僕をニーヤが引き止める。
「何するんだ?」
「稽古に決まってるじゃない」
そんな話は聞いていない。いつ決まったんだ。
……そう言えたらどんなに楽だろうか。
断る事など出来るはずもなく、ニーヤの有難い指導が始まった。
建物の裏、先程と同じように木の棒を渡される。
「じゃあまずは剣の握り方ね。適当に握るだけじゃダメなの。こうやって握ったら腋を締めるように、親指を内側にひねる感じ」
彼女の手元を見ながら、同じように握る。
あれ、何かしっくりくるな。腕の筋肉が張っているのが分かる。
「どう? 全然違うでしょ?」
「確かに全然違うよ。力が入るっていうか」
握り方一つでこんなに変わるのか。これは勉強になるな。
「よし、じゃあ次ね。アタシが斬りかかるから、アンタはそれを剣で受けなさい」
「……握り方からそれって難易度上がりすぎじゃないか?」
「大丈夫よ、これくらいだから」
そういって、彼女はゆっくりと棒を振る。
そのスピードはとても遅く、スローモーションの様だ。
「まぁ少しずつは早くするけど、とりあえずこんなものね。さぁ行くよ」
上段から振り下ろされる棒、難なく受け止める。次は左。その次は右。
ゆっくりと繰り出されるニーヤの攻撃を、僕はひたすら受け続けた。
静かな林の中、木のぶつかる音が響き渡る。
カン、カン、カンとリズミカルに響くその音は、まるで手拍子の様。段々とスピードは上がっていたが、自然と身体はついていっていた。
「よし、一旦休憩ね」
彼女の言葉に、崩れるように地面に腰を落とした。
汗が全身から吹き出している僕とは違い、彼女はうっすら汗ばむだけ。
流石、と言ったところだろうか。
ふと顔をあげると、ペロ様が隣にいた。
僕に向かって差し出した手には、水のはいった木のコップが握られていた。
「僕に?」
彼女がコクンと頷いた。
「ありがとう」
水を受け取り、一気に飲み干す。
冷たい水はカラカラになった喉を潤し、全身に力がみなぎるようだった。
身体中の汗が一瞬で引いていき、息をするたび、大きく上下していた肩もピタリと止まった。
「あれ? これって……?」
普通の水じゃない? 一瞬で疲れがとれたみたいだ。
「それは『神水《しんすい》』だよ。神の力を持つペロの魔法みたいなものね」
「へー。ペロ様は凄いんだな」
神の末裔とかって言ったよな。
無口で無表情。雰囲気はやっぱ普通の人とは少し違う。
でもめちゃくちゃ可愛いんだよな。同い年なのにこんなに小さいし。青みがかった髪の毛もつやつやしてるし――。
「ねぇ、何してんの?」
ニーヤの言葉で我に返る。いつの間にか、僕の手はペロ様の頭の上に。
はっ!? またやってしまった。勝手に手が伸びるんだよ。くそっ、呪われたセクシーアーマーめ!
「ご、ごめん!」
「この変態。ペロに気安く触らないでよね。アンタなんかが触っていい存在じゃないんだから」
「ご、ごめん。もう触らないよ」
僕だって触りたくて触ってるわけじゃないんだ。いや、ちょっとは触りたいけどさ。
「そ、そういえば。何でニーヤはそんなに強いんだ? この世界の事は良く分からないけど、女の子でも剣術を習ったりするの?」
「基本的に男の方が多いけどね。アタシは特別なんだよ、小さい頃から戦闘の訓練をしてたから。ペロのためにね」
「ペロ様のため? どういう事?」
「アタシはペロの護衛みたいなものさ、モミだってそう。アタシ達が戦うのもペロを守るため、魔王を倒すためにはペロの力が必要だからね」
魔王を倒すのにペロ様の力が必要? 彼女はそんな力を持っているのか。
「さ、稽古の続きするよ。もう十分休んだでしょ」
「あ、うん」
もう少し色々聞きたかったけど、まぁ今度ゆっくり聞こう。
棒を握り締め、ニーヤと稽古を再開した。
稽古は日が沈むまで続き、呼びに来たモミさんと一緒に宿に戻る。
食堂で夕食を食べていると、隣のテーブルから聞こえた一言に、ニーヤの手が止まった。
「そういえば、テヘペロ村襲われたみたいだぞ」
「本当か!? この島にも魔物が来やがったのか。でも何であんな小さな村が襲われたんだ?」
「知らないのか? あの村にはペロディアの子孫が一人居たって話だ。それを狙われたらしいな」
「そう言えば聞いた事あるな。それでどうなったんだ?」
「村は全滅、皆殺しだ。酷い有様だったらしいぜ」
「何て事だ。物騒な世の中になったもんだぜ」
「それにしてもよ――」
「ペロディアの子孫だか何だか知らねーけど、そいつ一人の為に村人全滅じゃ、死んだ連中も浮かばれねーよな」
「おいおい、それは無いだろ。一応神様なんだから」
男の心無い言葉。ニーヤの手が震えている。怒っているんだ。
「だって死んじゃったんだろ神様。守り神だが何だか知らないけど、結局守れてないじゃないか」
握り締めたニーナの拳の上に、そっとペロ様が手を乗せた。
自分も辛いはずなのに、無言で首を横に振るペロ様の姿に、胸が苦しくなる。
「魔王の軍団が強すぎたんだよ。神様でも敵わなかったんだ」
「神様神様って、疫病神の間違いじゃねーのかよ」
俯いたペロ様が、キュッと下唇を噛んだ瞬間。僕は自分でも信じられない行動に出た。
「あやまれよ」
「あ? なんだお前」
「神様に謝れって言ってるんだよ!」
食堂に響き渡る程の大声で、僕は男に叫んでいた。
身体中が燃えるように熱い、怒りで震えているのも分かる。
軽はずみな男の発言が、僕にはどうしても許せなかった。
「お、おい行こうぜ。気分悪くさせて悪かったな兄ちゃん」
もう一人の男が間に入り、二人は食堂を出て行った。
「アタシが我慢してるのに、何でアンタが怒るのよ」
「ご、ごめん。何となく、身体が勝手に……」
その時、ペロ様の手が僕の頭に触れた。
相変わらず無表情だけど、多分ペロ様なりの『ありがとう』なんだとわかった。
「あら、珍しいものが見れましたね」
頭を優しく撫でる彼女の手に、恥ずかしくもあり、嬉しくもあり。
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