性剣セクシーソード

cure456

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都市観光。

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 目が覚めると、隣にニーヤの姿は無かった。
 どこかに出かけたのだろうか。いつも思うが、皆早起きだ。
 ベッドに残る彼女の残り香。
――やばい。すごいムラムラする。
 ここんとこずっとご無沙汰だし、そろそろ発散しないと暴発の危険性まである。
 考えてみれば生殺し状態じゃないか。こんなに我慢したのは何年ぶりだ。
 出すものは出しておかないといけない。デトックスだデトックス。
 そうと決まれば、早速。
 ああ、ニーヤの匂い。いいなぁ――。
「ケンセイさん。起きてますか?」
 突然、部屋のドアが開いた。
「起きてます! もうばっちり! ビンビン起きてます!」
「そうですか。では朝食にしましょう、食堂で待ってますね」
 何だろう、これもセクシーアーマーの呪いなのか。
――すまない。もう少し待っていてくれ。
 戦闘態勢のセクシーソードを慰め、食堂に向かった。


「今日は一日、各自自由行動って事にしましょうか」
 朝食をとりながら、モミさんが言った。
「そうね。どうせ部屋もそのままだし、待ち合わせに困る事もないでしょ」
 自由行動か、それじゃあ色々見て回ろうかな。この町は見るところも沢山ありそうだし。
「はい、ケンセイさん」
 渡されたのは、前と同じ金貨を一枚。
「この前より金の価値が上がってるみたいで。通貨価値が変わっていますから多分それで十分足りるはずだと思いますよ」
「そうなんですか。ちなみに、今ならこれは銀貨何枚になるんです?」
「多分銀貨8枚くらいですかね」
 この前より三枚も多いじゃないか。それじゃあ銅貨にすればもっと多いって事か。
 円高ドル安みたいな? いや、これは同じ通貨だから違う?
 もっと勉強してれば良かったな。全く経済の仕組みが理解出来ないよ。

 朝食を終え、僕は町に繰り出し周囲をぶらぶらしてみた。
 道はしっかりと石が敷き詰められているし、建物も他よりしっかりしている。
 露店の数も今まで訪れた町とは比べ物にならないほど多く、ただ歩いているだけでも飽きる事はなさそう。
 それにしても大きな町だな。遠くに見える噴水が町の中央だろうか。
 僕はとりあえず噴水を目指す事にした。

――ウイリア中央噴水前――

 目の前の噴水を見て驚いた。
 噴水自体はラーバスでも見たが、こうこうと湧き出る水量は一目瞭然だった。
 美しい大理石の様な石で造られた彫刻。
 その中心から遥か高く。五メートル程の高さまで水が噴き出している。
 一体どういう仕組みなんだろう。機械の力を使わず、どうしてこんなに水が噴き出るんだ。
 全く、世界には分からない事だらけだ。

「剣士さん、ウイリアは初めてかね?」
 噴水の脇、ベンチに腰掛けた中年の女性に声を掛けられた。
「はい、そうなんですよ。何もかもが珍しくて」
「剣士さんは何処から来たんだい?」
「あ、えっと。ムルアラット、かな」
 異世界と言うわけにも行かないし、昨日モミさんもそう言ってたからな。
「ムルアラットかい、あそこはいい島だね」
「ええ、いい島でした」
「テヘペロ村が襲われた話は聞いてるよ。全く酷い話だね」
「そうですね……」
「『ストラーダ教を信仰しないから』だ何て馬鹿な事を言う人が沢山いるんだよ、この町は」
 そう言って、女性は教会を見上げる。
 見るからに神聖で、どことなく厳格。視線の先の立派な教会を見ながら、女性は少し寂しそうな顔をした。
「宗教に縛られ、同じワーワルツで起こった悲劇を嘆く事もせず。この町で立派なのはあの大聖堂とお城。そしてこの噴水だけさ」
「愚痴っぽくなってしまって悪かったね。ここじゃあまり町の悪口は言えなくて、ついつい」
「あ、いえ。気にしないで下さい」
「まぁ、建物は立派だから。是非見学してくといいよ」
 そう言って女性は何処かに歩き出した。
「宗教――か」
 良く分からないし、左程興味もない。
 ただ分かるのは、どこの世界でも、宗教はめんどくさそうだって事。
 
――ウイリア大聖堂――

 間近で見ると一層凄い迫力だった。
 圧倒的過ぎる存在感に思わず息を飲む。これは巨大な芸術作品だ。
 そんな、一人の少女の姿が目に入った。色とりどりの花が詰った籠をぶら下げて、そんな綺麗な花とは正反対の、質素な服を着た少女の姿。

「こんなとこに来るんじゃない! あっちにいけ!」
 教会の目の前で。見事な刺繍入りの真っ白なローブを着た男が少女を追い払っている。
「汚い格好でうろちょろするな! 聖堂が汚れてしまうだろ!」
 何だ、あれは教会の人間じゃないのか? あれが神に仕える人間のする事かよ。

「教会に喧嘩売ったりはしないでよね」
「に、ニーヤ!?」
 いつの間にか後ろにニーヤが立っていた。
「また走り出して行きそうな顔してたよアンタ」
「流石に僕もそこまで馬鹿じゃないよ。確かに少し腹は立ったけど」
「あんなのにいちいち腹を立ててたらこの先やっていけないわ。大陸ではあんなの当たり前らしいし」
「うん。気をつけるよ」
 大丈夫、もう馬鹿な事はしない。皆に迷惑をかけたくないし。
 ニーヤの辛そうな顔も見たくないから。
 
「さ、どうせ暇なんでしょ? 折角だし一緒に回ろうよ」
「そうだね。じゃあ案内してくれよ」
「アタシだって初めてなんだから、案内なんて出来ないわよ。そう言えばアンタお金使った?」
「いや、まだ使ってないけど」
「じゃあ先に両替商のとこ行かないとね。そのままじゃ不便だし」
 赤い髪をひるがえし、ニーヤが歩き出す。後を追うように、僕は彼女の少し後ろを歩いた。

 金貨を両替すると、銀貨九枚になった。モミさんから聞いたのより一枚多い。どうやらこの世界は通貨のレートがころころ変わるらしい。貨幣の種類も沢山あるようだが、そこらへんはニーヤ任せた。
「お、あれはヌールの肉じゃない?」
 屋台からいい匂いが漂っている。ラーバスで食べた、串に刺さったあの肉だ。
「そうね。まぁ珍しい物じゃないから、何処にでもあるのよ」
 店の前に行くと、この前と書いてある文字が少し違う。値段が違うのかな?
「いらっしゃい。焼きたてで旨いよ、一本銅貨三枚、二つなら五枚におまけするよ」
「銅貨三枚ですって? ちょっと高すぎじゃない?」
 ラーバスでは銅貨一枚だった。都会だから物価が高いのかな?
「これでも安いほうなんだよ。最近は税がきつくてねぇ」
 屋台のおじさんが困った様な顔で言った。
「王妃様が亡くなってから、どんどん税が上がる一方さ。教会も寄付金の名目でやたらと金をせびりやがる。まるで神様の為に働いてる様なもんだよ」
「大変ですね。それじゃあ二本下さい」
「お、まいどあり。はいおつり、ありがとうな」
 
 屋台で買ったヌールを食べながら町を歩く。
「ラーバスの方が美味しかったわね」
 味は悪くなかったけど、ニーヤの言うとおり、前に食べた方が美味しかった。
 あのおばさん、『ウチがワーワルツで一番』って言ってたっけ。
 本当にそうなのかもしれない。今度また食べに行こう。

「そう言えば、ヌールって一体何なんだ? 僕の世界にそんな動物はいないんだけど」
「そうなんだ? ヌールってのは『メ~』って鳴く動物よ」
 メ~って鳴く? 羊か? 山羊かな? それにしても今の可愛かったな。
「何? もう一回言って。どうやって鳴くんだって?」
「め、メ~って鳴くのよ」
 少し俯き加減でニーヤが鳴いた。何だこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃないか。
「もう一回」
「え? め、メ~――って何やらせんのよ馬鹿!」
 軽いパンチを肩にもらった。
 ふざけ合って、笑い合って。それからも僕達は一緒に町を回った。

 
 きょろきょろと辺りを見ながら歩いてると、ドン、と誰かにぶつかった。
「あっ、ごめん。よそ見してて――」
 慌てて謝るが、腰に違和感を感じる。よく見ると、深々とローブを被った人物がセクシーソードを抜こうと柄を引っ張っている。
 スリか? 残念だが、この剣は他人には抜けない。
「ちっ!」
 諦めて逃げようとするソイツを、ニーヤが捕まえた。
「何処に行くつもり? 逃げようったってそうはいかないわよ」
 激しく暴れるスリの足を払い、思い切り地面に叩きつける。
 手際よく、頼もしい姿だった。
 目深にかぶられたローブを剥ぎ取って出てきたモノ。その正体は、まだあどけなさの残る幼女だった。
「お、女の子だったのか。どうしてこんな事……」
 驚く僕に、ニーヤが吐き捨てるように言った。
「理由なんてどうだっていいのよ。どんな理由があっても人の物を盗むって事は許されないわ」
「どうするんだ?」
「兵士に突き出すわ。殺されないだけありがたいと思いなさい」
 まだ十歳にも満たないであろう女の子。
 泣くわけでも暴れるわけでもなく、地面にうつぶせたまま、拳を握っていた。

「な、なぁ。許してやろうよ」
「は? 何言ってんの。そんな事したって、この子の為にはならないの。アタシ達が許しても、どうせまた同じ事をする。次は殺されるかもしれないのよ」
「そうかもしれないけどさ。君、両親は居るの?」
 少女は無言で首を横に振る。
「この子は孤児よ。大陸にはそこら中に同じ様な子が沢山いる。さっきも言ったけど、いちいち同情してたらきりがないの」
「うん、分かってる。分かってるけど、それでも突き出すのは止めておこうよ」
 ニーヤのいう事は正しい。
 でも、幼い子を突き出して、いい気分には決してならない。

「本当に女の子には甘いのね。これが汚いおじさんだったら同じ様に助ける?」
「うーん、どうかな。叩き斬るかもしれないね」
「あきれた、アンタってホント馬鹿」
 僕の答えに、あきれたような顔でニーヤが笑った。
「君、お腹空いてる? 何か食べようか」
 少女はすごく驚いた顔をしたが、すぐに俯いて、首を横に振った。
「どうしたの? お腹空いてない?」
「家に、お姉ちゃんがいるから……」
「じゃあお姉ちゃんも一緒に連れて行こう。あ、それとも何か買って行くか。ニーヤ、買い物に付き合ってくれよ」
「はいはい。好きにして下さい」
「よし、じゃあ行こう」
 僕が差し出した手を、戸惑いながらも少女が握る。
 小さくて弱弱しい手をしっかり握り、僕達は歩き出した。

 始めはぶつぶつ言っていたニーヤだったが、お店に来てからは積極的に品物を選んだ。
 これは日持ちがするとか、これは栄養価が高いとか。
 何だかんだ言っても、やっぱりニーヤは優しい。
 次々と品物を手に取る彼女の姿を見て、僕はとても嬉しくなった。
 両手にいっぱいの食料を買って、少女の家に向かった。
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