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自己犠牲でも
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「愛染……」
「ゴメン……ちょっとだけ、彼女と二人にしてくれないかな……」
心配そうな顔をする二人に、そう言うのが精一杯だった。
「わかった……。じゃあ私達は教室にいるから……」
そう言い残し、二人が厩舎を出て行く。
そして、鍵を閉めた。
「ずっと……騙していたのか……?」
猿轡を外し、いまだ吊り下げられた彼女に問いかける。
諦めが悪いと言えばそうなのかもしれない。
でも、ただ自分が楽になりたかっただけ。
「だったらどうだと言うんですか? 騙されるほうが悪いでしょう。私が本気であなたの心配をしていたとでも? ふふっ、これだから男は単純で馬鹿だと言われるんですよ」
「愉快でしたよ。思ったとおりに事が進むんですから。ちょっと声をかけるだけですぐその気になって、楽でしたね~。男がこれほど間抜けな生き物だとは思っ――っ!」
言葉を遮るように、吊っていた鞭をほどいた。
地面に叩きつけられた彼女が、一瞬苦悶の表情を浮かべる。
「随分手荒な真似をするんですね。どうするつもりですか? 無抵抗な中学生を犯しますか? まぁ、あなたにそんな度胸があるとは思えませんけどね。見えているんでしょう? 私のパンツ。精々あなたに出来る事はそれをおかずに情けなく一人で――」
いつもと変わらず、彼女は饒舌に毒を吐き続ける。
何を言っているのかも、もう僕の耳には届かない。
怒りで頭がどうにかなりそうだった。
僅かにめくれたスカートを力任せに引っ張り上げ、彼女の尻を――叩いた。
「――っ!?」
どうして気付かなかったんだろう。
「僕が単純で馬鹿なら――」
どうして気付いてあげられなかったのだろう。
「お前は意地っ張りだよな」
彼女が助けを求めていた事に。
「本当に……意気地なし……ですね……。めちゃくちゃにっ……してくれたほうが……嬉しかったのにっ……」
隠し切れない彼女の涙が、何よりの証拠だった。
「何も……聞かないんですか?」
彼女を縛っていた鞭を解いた僕は、藁のベッドに寝転んでいた。
声を押し殺して泣く彼女にかける言葉もなかったし。
「聞かなくても、言ってくれるだろ?」
そう思っていたから。
「……大体は狼牙さんの推測どおりです。ゾディアックを潰そうとしてる桃蜜の為に、あなたを利用しようと近づきました。灰名京子を退学させたのも私です。あなたが自分の境遇を彼女に話していたのを聞いて、もしかしたら――とその場で思いついたんですけど。「貴女が辞めなければ愛染武を退学させる」と言ったら、彼女はすぐに応じてくれました。優しい人ですよね」
「あの日――か。僕の為に……灰名は学園を去ったのか……」
「針金円を倒したのも私。桃蜜の願いはゾディアックの根絶。その為には無理矢理にでも火をつけるしかなかったからです」
「桃蜜ってのは非処女姫の事だろ? お前も、その召使ってやつなのか?」
僕の言葉に、彼女は珍しくピクンと肩を動かし。
「私は……友達だと……思っているけど……」
大それた事でも言うかのように、恐る恐る口にした。
「友達……か」
「あの……」
沈黙に耐え切れず、僕の顔色を伺うように彼女が椅子から立ち上がった。
「申し訳ない事をしたと思ってるし……私は何をされても構わない……学園を去れと言うのなら言うとおりにする……」
寝転んだ僕の前に膝をつき、すがるように手を伸ばす。
「だから……桃蜜だけは……」
痛々しい程の想い。悲しい友情だった。
「そういえば――勝手に住み着いてたけど、持ち主に挨拶してなかったな」
「えっ?」
「挨拶に行こう。案内してくれる?」
目を丸くさせ、驚いた彼女に僕はそう告げた。
友人の辛そうな表情を、黙って見てる事は出来なかったから。
「ゴメン……ちょっとだけ、彼女と二人にしてくれないかな……」
心配そうな顔をする二人に、そう言うのが精一杯だった。
「わかった……。じゃあ私達は教室にいるから……」
そう言い残し、二人が厩舎を出て行く。
そして、鍵を閉めた。
「ずっと……騙していたのか……?」
猿轡を外し、いまだ吊り下げられた彼女に問いかける。
諦めが悪いと言えばそうなのかもしれない。
でも、ただ自分が楽になりたかっただけ。
「だったらどうだと言うんですか? 騙されるほうが悪いでしょう。私が本気であなたの心配をしていたとでも? ふふっ、これだから男は単純で馬鹿だと言われるんですよ」
「愉快でしたよ。思ったとおりに事が進むんですから。ちょっと声をかけるだけですぐその気になって、楽でしたね~。男がこれほど間抜けな生き物だとは思っ――っ!」
言葉を遮るように、吊っていた鞭をほどいた。
地面に叩きつけられた彼女が、一瞬苦悶の表情を浮かべる。
「随分手荒な真似をするんですね。どうするつもりですか? 無抵抗な中学生を犯しますか? まぁ、あなたにそんな度胸があるとは思えませんけどね。見えているんでしょう? 私のパンツ。精々あなたに出来る事はそれをおかずに情けなく一人で――」
いつもと変わらず、彼女は饒舌に毒を吐き続ける。
何を言っているのかも、もう僕の耳には届かない。
怒りで頭がどうにかなりそうだった。
僅かにめくれたスカートを力任せに引っ張り上げ、彼女の尻を――叩いた。
「――っ!?」
どうして気付かなかったんだろう。
「僕が単純で馬鹿なら――」
どうして気付いてあげられなかったのだろう。
「お前は意地っ張りだよな」
彼女が助けを求めていた事に。
「本当に……意気地なし……ですね……。めちゃくちゃにっ……してくれたほうが……嬉しかったのにっ……」
隠し切れない彼女の涙が、何よりの証拠だった。
「何も……聞かないんですか?」
彼女を縛っていた鞭を解いた僕は、藁のベッドに寝転んでいた。
声を押し殺して泣く彼女にかける言葉もなかったし。
「聞かなくても、言ってくれるだろ?」
そう思っていたから。
「……大体は狼牙さんの推測どおりです。ゾディアックを潰そうとしてる桃蜜の為に、あなたを利用しようと近づきました。灰名京子を退学させたのも私です。あなたが自分の境遇を彼女に話していたのを聞いて、もしかしたら――とその場で思いついたんですけど。「貴女が辞めなければ愛染武を退学させる」と言ったら、彼女はすぐに応じてくれました。優しい人ですよね」
「あの日――か。僕の為に……灰名は学園を去ったのか……」
「針金円を倒したのも私。桃蜜の願いはゾディアックの根絶。その為には無理矢理にでも火をつけるしかなかったからです」
「桃蜜ってのは非処女姫の事だろ? お前も、その召使ってやつなのか?」
僕の言葉に、彼女は珍しくピクンと肩を動かし。
「私は……友達だと……思っているけど……」
大それた事でも言うかのように、恐る恐る口にした。
「友達……か」
「あの……」
沈黙に耐え切れず、僕の顔色を伺うように彼女が椅子から立ち上がった。
「申し訳ない事をしたと思ってるし……私は何をされても構わない……学園を去れと言うのなら言うとおりにする……」
寝転んだ僕の前に膝をつき、すがるように手を伸ばす。
「だから……桃蜜だけは……」
痛々しい程の想い。悲しい友情だった。
「そういえば――勝手に住み着いてたけど、持ち主に挨拶してなかったな」
「えっ?」
「挨拶に行こう。案内してくれる?」
目を丸くさせ、驚いた彼女に僕はそう告げた。
友人の辛そうな表情を、黙って見てる事は出来なかったから。
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