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そして僕達は、あの日と同じ場所で
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翌朝。僕は緊張しながらスマホを眺めていた。
時刻は六時五十八分。
桃源がこなければ、僕は正式に決闘の手続きを進め彼女を打ち負かす。
そうなれば、当然学園に居られるわけが無い。
退学処分は免れても、全校生徒の反感を買う事は免れない。
クラスメイトにも軽蔑されるような、壮絶な闘いになるはずだ。
祈るような気持ちで時計を見つめる。そして、その時は来た。
「来ない……か」
時刻は七時二分。彼女は来なかった。これで、僕の学園生活は終焉を迎える。
「まぁ……しょうがないか」
最後にはふさわしいのかもしれない。
下級生、そして理事長の娘を全校生徒の前で陵辱。
変態には素晴らしいステージ。
伝説の変態として名を残すだろう。
「失うものは何も無い――よな」
灰名と二回目に闘った時もこんな気持ちだった。何だか、ずっと昔の事みたいだ。
「よし! 行こう!」
気合を入れて足を踏み出す。
何があろうと、前に進むしかないんだから。
「きゃっ!?」
「あっ! だ、大丈夫――って……」
勢い良くドアを開けた瞬間、外にいた女子にぶつかった。
地面に両手を付いたブロンドの少女――非処女姫こと桃源桃蜜だった。
「こっ、これ返す!」
立ち上がった彼女が差し出したのは、僕が置いてきたピンクの手袋。
「べっ、別にアンタに負けそうだからとかじゃないんだから! しょ、所有物の管理は義務でしょう! 義務を果たしに来ただけだからね!」
すねた表情で捲くし立てる少女に安堵し、嬉しさがこみ上げる。
「なっ、なにニヤニヤしてるの気持ち悪い!」
「ふふん。さぁ、餌をあげて掃除! さっさと終わらせないと、授業に間に合わないぞ!」
僕の学園生活は、多分まだまだ終わらない。
その日の放課後、いつもの様に皆で教室に集まっていた。
「それにしても、よくお姫様が来たもんだな」
「ね~。よっぽど闘いたくなかったって事でしょ~? あの子も相当強いって噂だけど~」
「でも分かりますよ~気持ち。メ~ちゃんも愛染君とは闘いたくないのですよ~」
「……生き恥」
「はは……返す言葉もございません……」
ゆったりと流れる時間。教室に笑い声が響く。
こんな日常が、これからもまた続いていく。
「あっ、いましたね~。愛染君」
シスターマリが教室に入って来た。
「あ、シスター。どうかしましたか?」
「入学式の時写真撮ったでしょ? そういえば送るの忘れちゃっていましてね。今大丈夫ですか?」
「あっ、大丈夫です。お願いします」
スマホを取り出し、写真を受け取る。
改めて見ると――何とも情けない。
「ぷっ。なにこれ~。超ださいんだけど~」
「独りぼっちで良く撮りましたね~。顔がひきつってますよ~」
「指三本……変……」
くっ! 笑いたければ笑うがいい! こんな写真だって僕には立派な記念なんだ!
「……なぁ。これ、皆で撮らないか?」
狼牙の言葉に、皆が顔を見合わせる。
「そうね~。これじゃあ愛染可哀想だしね~」
「いい案ですね~。大賛成です~」
「一緒に……撮りたい……」
皆の言葉に、嬉しさがこみ上げてくる。不覚にも少し泣きそうになった。
「よーし。じゃあ私がシャッター係しますよっ! 皆で正門に集合ー!」
シスターの一言で、皆が席を立った。
その時、ふと彼女の顔が浮かんだ。
「ちょ、ちょっと先に行ってて! すぐ行くから!」
教室を飛び出し、急いで中等部に向かった。
「馬子!」
「どうしたんですかそんなに興奮して。身の危険を感じます」
「そりゃ全速で走って来て、ちょうどお目当ての子に会えたら興奮もするさ。あれから桃源とは話したのか?」
「……まだ……だけど……」
「そっか――よし! 行こう!」
彼女の手を握り寮内へ。ノックも忘れ、思い切り扉を開けた。
「ちょっと! ノックもなし……に……?」
目を丸くさせた桃源の手を握り、再び走り出す。
「なっ!? 何っ!? ちょっ! 何処行くのよ!」
「いいから行こう! 来ればわかるさ!」
「お待たせ!」
正門の前、皆が笑っていた。僕の行動は全てお見通し、とばかりに。
「さぁ寄って寄って。ほら馬子も桃源も顔が固いぞ」
「なっ!? 気持ち悪いんだけど!」
「愛染めっちゃ嬉しそうだね~。何だかこっちまで嬉しくなっちゃうな~」
「だね~。ちょっぴり照れくさいのですよ~」
「ど、どういう顔をすればいいんだ……」
「……ピース」
これから沢山色んな事が起こるんだろう。
何がどうなるかなんて、起こってみないと分からない。
「はーい。じゃあ撮りますよー! 笑って笑って~!」
たとえどんな困難が待ち受けていたとしても。
「哀れな子羊だと思っていましたが……彼は救世主なのかもしれませんね――」
きっと僕達なら、うまくやっていける気がする。
「はい。チーズ!」
何よりも大切なモノを手に入れたから。
「もう一枚いきますよ~!」
シスターマリが指をピンと立てた時、隣で呟くような声が聞こえた。
「あの……色々と……ゴメンね……」
「ううん。大丈夫だよ」
二人の小さな手は、しっかりと繋がれていた。
「はい。チーズっ!」
「「「「「きゃっ!?」」」」」
暖かな春風が僕達の間を吹きぬけた――ん?
「おおっ! 凄いモノが撮れましたよっ! 丸見えですっ! モロ見えですっ!」
シスターマリが興奮した様子で、スマホの画面を凝視する。
もしかして……さっきの風……?
「愛染君パァス!」
「うわっ!? っととと――」
スマホを受け取った瞬間、背後に殺気を感じた。
「それがあれば一ヶ月はおかずに困りません! 永久保存版ですよー!」
一ヶ月……? 永久保存版……?
「……愛染……今すぐそのスマホを渡せ……」
「えっ!? えっと……」
「愛染君! 逃げるのです~!」
シスターマリの声に釣られて、足が勝手に走り出した。
「まっ、待てー! アイツを捕まえろ! 絶対に逃がすなああああ!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
本当に、うまくやっていけるのだろうか――。
時刻は六時五十八分。
桃源がこなければ、僕は正式に決闘の手続きを進め彼女を打ち負かす。
そうなれば、当然学園に居られるわけが無い。
退学処分は免れても、全校生徒の反感を買う事は免れない。
クラスメイトにも軽蔑されるような、壮絶な闘いになるはずだ。
祈るような気持ちで時計を見つめる。そして、その時は来た。
「来ない……か」
時刻は七時二分。彼女は来なかった。これで、僕の学園生活は終焉を迎える。
「まぁ……しょうがないか」
最後にはふさわしいのかもしれない。
下級生、そして理事長の娘を全校生徒の前で陵辱。
変態には素晴らしいステージ。
伝説の変態として名を残すだろう。
「失うものは何も無い――よな」
灰名と二回目に闘った時もこんな気持ちだった。何だか、ずっと昔の事みたいだ。
「よし! 行こう!」
気合を入れて足を踏み出す。
何があろうと、前に進むしかないんだから。
「きゃっ!?」
「あっ! だ、大丈夫――って……」
勢い良くドアを開けた瞬間、外にいた女子にぶつかった。
地面に両手を付いたブロンドの少女――非処女姫こと桃源桃蜜だった。
「こっ、これ返す!」
立ち上がった彼女が差し出したのは、僕が置いてきたピンクの手袋。
「べっ、別にアンタに負けそうだからとかじゃないんだから! しょ、所有物の管理は義務でしょう! 義務を果たしに来ただけだからね!」
すねた表情で捲くし立てる少女に安堵し、嬉しさがこみ上げる。
「なっ、なにニヤニヤしてるの気持ち悪い!」
「ふふん。さぁ、餌をあげて掃除! さっさと終わらせないと、授業に間に合わないぞ!」
僕の学園生活は、多分まだまだ終わらない。
その日の放課後、いつもの様に皆で教室に集まっていた。
「それにしても、よくお姫様が来たもんだな」
「ね~。よっぽど闘いたくなかったって事でしょ~? あの子も相当強いって噂だけど~」
「でも分かりますよ~気持ち。メ~ちゃんも愛染君とは闘いたくないのですよ~」
「……生き恥」
「はは……返す言葉もございません……」
ゆったりと流れる時間。教室に笑い声が響く。
こんな日常が、これからもまた続いていく。
「あっ、いましたね~。愛染君」
シスターマリが教室に入って来た。
「あ、シスター。どうかしましたか?」
「入学式の時写真撮ったでしょ? そういえば送るの忘れちゃっていましてね。今大丈夫ですか?」
「あっ、大丈夫です。お願いします」
スマホを取り出し、写真を受け取る。
改めて見ると――何とも情けない。
「ぷっ。なにこれ~。超ださいんだけど~」
「独りぼっちで良く撮りましたね~。顔がひきつってますよ~」
「指三本……変……」
くっ! 笑いたければ笑うがいい! こんな写真だって僕には立派な記念なんだ!
「……なぁ。これ、皆で撮らないか?」
狼牙の言葉に、皆が顔を見合わせる。
「そうね~。これじゃあ愛染可哀想だしね~」
「いい案ですね~。大賛成です~」
「一緒に……撮りたい……」
皆の言葉に、嬉しさがこみ上げてくる。不覚にも少し泣きそうになった。
「よーし。じゃあ私がシャッター係しますよっ! 皆で正門に集合ー!」
シスターの一言で、皆が席を立った。
その時、ふと彼女の顔が浮かんだ。
「ちょ、ちょっと先に行ってて! すぐ行くから!」
教室を飛び出し、急いで中等部に向かった。
「馬子!」
「どうしたんですかそんなに興奮して。身の危険を感じます」
「そりゃ全速で走って来て、ちょうどお目当ての子に会えたら興奮もするさ。あれから桃源とは話したのか?」
「……まだ……だけど……」
「そっか――よし! 行こう!」
彼女の手を握り寮内へ。ノックも忘れ、思い切り扉を開けた。
「ちょっと! ノックもなし……に……?」
目を丸くさせた桃源の手を握り、再び走り出す。
「なっ!? 何っ!? ちょっ! 何処行くのよ!」
「いいから行こう! 来ればわかるさ!」
「お待たせ!」
正門の前、皆が笑っていた。僕の行動は全てお見通し、とばかりに。
「さぁ寄って寄って。ほら馬子も桃源も顔が固いぞ」
「なっ!? 気持ち悪いんだけど!」
「愛染めっちゃ嬉しそうだね~。何だかこっちまで嬉しくなっちゃうな~」
「だね~。ちょっぴり照れくさいのですよ~」
「ど、どういう顔をすればいいんだ……」
「……ピース」
これから沢山色んな事が起こるんだろう。
何がどうなるかなんて、起こってみないと分からない。
「はーい。じゃあ撮りますよー! 笑って笑って~!」
たとえどんな困難が待ち受けていたとしても。
「哀れな子羊だと思っていましたが……彼は救世主なのかもしれませんね――」
きっと僕達なら、うまくやっていける気がする。
「はい。チーズ!」
何よりも大切なモノを手に入れたから。
「もう一枚いきますよ~!」
シスターマリが指をピンと立てた時、隣で呟くような声が聞こえた。
「あの……色々と……ゴメンね……」
「ううん。大丈夫だよ」
二人の小さな手は、しっかりと繋がれていた。
「はい。チーズっ!」
「「「「「きゃっ!?」」」」」
暖かな春風が僕達の間を吹きぬけた――ん?
「おおっ! 凄いモノが撮れましたよっ! 丸見えですっ! モロ見えですっ!」
シスターマリが興奮した様子で、スマホの画面を凝視する。
もしかして……さっきの風……?
「愛染君パァス!」
「うわっ!? っととと――」
スマホを受け取った瞬間、背後に殺気を感じた。
「それがあれば一ヶ月はおかずに困りません! 永久保存版ですよー!」
一ヶ月……? 永久保存版……?
「……愛染……今すぐそのスマホを渡せ……」
「えっ!? えっと……」
「愛染君! 逃げるのです~!」
シスターマリの声に釣られて、足が勝手に走り出した。
「まっ、待てー! アイツを捕まえろ! 絶対に逃がすなああああ!」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
本当に、うまくやっていけるのだろうか――。
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