ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

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 本当にこんな扱いをしてもらっていいのだろうか。居候にしてはあまりにも手厚い。今日の夕食はラシェットさん含め皆で食べようと誘われている。混ざっていいのか悩ましいけれど、今日は素直に言葉に甘えることにした。

「フィーア様、ぜひこちらのワンピースを着用ください」

「フィーアと呼んでいただいて大丈夫です……。
 ワンピース、ありがとうございます」

 今の私に、食事に着ていけるちょうどいいワンピースはなかったから貸していただけるのはありがたい。けれど、様は……!様はやめてほしい! 私、ただの居候だから。

「あら、そうですか?
 でも旦那様方のお客様なので、そう呼ばないと私が怒られてしまいます」

 くすりとほほ笑みながらメイドがそういって着替えを手伝ってくれる。うう、やめてはほしいけれど、そんな言い方されたら断りずらいじゃない。結局それ以上否定することもできずに、そのまま食事へと向かった。

「あら、とても似合っているわ」

「ああ、本当に」

 食事の場に現れると、みんな笑顔で出迎えてくれた。そういえば、この家には私くらいの娘はいないはずなのにどうしてワンピースなんて置いてあったのだろうか。

「それはね、もともと娘のミリアにって用意したものだったのよ。
 昔のもので申し訳ないのだけれど、もしよければ着てくれると嬉しいわ。
 誰も着ないままでいるのも、ね」

「ミリア、さんですか?」

 私の疑問に答えるようにリミーシャさんがそう口にした。そういえば今はいないけれど、娘がいるって言っていた。もう何年も帰っていないという話だったけれど、何か事情があるのかな。

「あの、とてもかわいいワンピースを着させていただき、ありがとうございます。
 嬉しいです」

 見栄を大切にする貴族のドレスとは違う、着心地がよく疲れないワンピース。生地も上等なものが使われているのがよくわかる。こういう服を着たの、初めて。

「そう言ってくれて嬉しいわ。
 たくさんあるのよ。
 後日、一緒に見ましょう?」

「はい」

 私とリミーシャさんの会話が終わったことを確認すると、ブランスさんが口を開いた。

「さあ、食べようか」

 ブランスさんの言葉でいろいろな食事が運ばれてくる。それは貴族も顔負けの内容だった。というか、実家よりもいい食事だよ……。

「フィーア、おいしいかしら?」

「はい、おいしいです!」

「それはよかった。
 たくさん食べてくれ」

 少し落ち着かない気持ちのまま食事を終える。食後のお茶も一緒に、と言われ言葉に甘えることにした。あの『様』つけをやめてもらうように言わないと! それとできればミリアさんのことも聞きたいかも。

 ずいぶんと私がそわそわしていたからか、お茶の席が整うとリミーシャさんが私に話を振ってくれた。せっかくだからその好意に乗ってしまおうか。

「あの、私に様をつけて呼ばないでほしくて。
 私、ただの居候なのに……」

「あら、そんなこと。
 あなたはこの家の使用人ではなく、お客人だわ。
 だからそう呼んでいるのだけれど、居心地が悪いのならやめてもらうわね」

「気にしなくていいと思うけれど……。
 まだ、何か気になることがある?
 今のうちにいろいろ聞いてしまった方がいいと思う。
 気まずいままこの家で過ごしてほしくないから」

「ありがとうございます、ラシェットさん。
 あの、どうして私にこんなによくしてくれるんですか?
 それに、ミリアさんはどうしてここにいらっしゃらないんですか?」

 この際だから、と一気に聞いてしまう。すると、3人は一瞬動きを止める。だけどすぐに気を取り直すと、ブランスさんが口を開いた。

「それは私から説明しようか。
 前にも聞いたかもしれないけれど、私たちには娘がいる。
 その子の名がミリアというんだ。
 君は……なんというかミリアにどこか似ていてね。
 どこが、と説明するのは難しいのだけれど。
 リミーシャが君を放っておけなかったのもわかる気がする。
 ああ、君とミリアが違う人間だというのはもちろん理解しているよ」

 私とミリアさんが似ている。どこが、と説明できないみたいだけれど。ほかの2人もうなずいていることから、それは共通認識なのだろう。

「どうして、ミリアさんはここにいないのですか?」

「ミリアは……教会の人に連れていかれたんだ」

「教会……?」

 教会って、あの? イメージとしてはギフトを判定する機関であるというものが一番強い。10歳になると行うギフト判定は教会のものが行う。ギフトは神からの贈り物であるという認識だからね。それ以外にも癒しを施したりしているようだけれど、人を連れ去るというのは聞いたことがない。過去を思い出しても。

「……ミリアを連れていくとき、教会は多くのものを置いていったの。
 あまり裕福ではない方だったら喜んで送り出していたかもしれないわね」

「そう、ですか。
 それでどうしてミリアさんを連れて行ってしまったんですか?」

「ミリアが、鑑定のギフトを持っていたから。
 それもとても強力な」

「強力な、鑑定のギフト?」

「うん。
 ギフトを判定するときに、人に手を握ってもらっただろう?
 あれで鑑定のギフトを発動させることで、人のギフトを調べているんだよ」

 その言葉になるほど、とうなずいた。確かに教会には鑑定のギフトを持っている人が多く必要だろう。ただ、教会の人はギフトの判別はできても基本的にその強さは判別できないはず。きっとミリアさんは判明してすぐにか、判明する前からその力が使えてしまったんだろう。

「ミリアは連れていかれた10歳の日から一度も家に戻ってはいないわ。 
 何度も教会に行ったのだけれど、会わせてももらえなくて……」

「あの、それを王宮に伝えたのですか?
 そしたら何か……」

 何か、行動してくれたんじゃないか。その言葉はリミーシャさんの微笑みで続かなかった。詳しいことはわからない。でも、この話では不自然に感じるその笑みが、答えだと思った。

「もう聞きたいことはないかい?」

 話が途切れるとブランスさんがそう聞いてきた。ほかに聞きたいこと……。何かあるかな? えーっと。

「何か聞きたいことがあったら、また言ってくれればいいよ。
 私たちに聞きづらかったら使用人に聞いてくれてもいい。
 さあ、そうしたらお茶を淹れなおしてもらおうか」

「そうね。
 夕食を食べたばかりだけれど、何か甘いものも用意してもらいましょう」

「それがいいですね。
 フィーア、疲れていない? 
 大丈夫?」

「あ、はい」

 どこに控えていたのか、いつの間にか退室していた使用人が部屋に入ってきて準備を整えてしまう。すごい。小皿には見た目がかわいらしいお菓子が乗せられていて、勧められるままにそれを口にしてみる。

「わっ⁉」

「ふふ、何も知らないで食べるとびっくりするよね」

 口元を抑えこくこくとうなずく。その間も口の中ではかすかにぱちぱちとした音がなっていた。痛いわけではないけれど、かむごとに音と共に何かが小さくはぜている。あ、ほんのり甘い。ようやく口の中を空にすると、お茶を飲む。ふう、もう大丈夫。

「どうだったかしら?」

 声のほうを見ると、リミーシャさんが少し面白がるようにこちらを見ていた。

「び、びっくりしましたけれど、おいしいです!」

「そう、よかったわ」

 そのあとは穏やかに会話をして、私は部屋へと戻っていった。驚くことに今日は疲れただろうから、とお風呂を用意してくれた。……このお家、どこまでお金持ちなの?

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