ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

文字の大きさ
16 / 69

15

しおりを挟む
「風邪かしら?
 ずっと頑張ってくれていたものね」

「すみません……」

 痛む頭とぼんやりする視界でリミーシャさんを見上げる。その顔はおそらく心配そうにこちらを見下ろしている。

「謝らないでね。
 今お医者様をお呼びしたから、しっかりと診ていただいてね。
 本当は一緒にいてあげたいのだけれど、お店のほうに行かなくちゃいけないから」

「はい。
 ありがとうございます」

 それじゃあ、と言ってリミーシャさんは部屋を出ていく。余計な心配をさせてしまった申し訳ない気持ちと、純粋に私を心配してくれて嬉しい気持ちが混ざり合う。でも、この発熱は疲れとかではなく、ギフトの副作用なんだよね……。さすがに説明ができない。

 マゼリアのことを視ると副作用がいつもよりもひどい。鮮明に視える分、仕方ないのだろうけれど。目を閉じると視ていた内容を思い出す。そのときの気持ちも。本当に大切で、隣に立っていたいと望んだあの人。マゼリアはその瞳をあまりちゃんと見返すことができていなかったけれど、思っていたよりも優しい、心配している瞳をしていた。そして、寂しがっているような……。でも、それも私の思い込みなのかもしれないけれどね。

 サラシェルト王太子……。王城を訪れた後、時間を見つけて家の書斎で王族の記録をのぞいてみた。もちろん貴族家とはいえ、個人管理している資料に書いていることなんてあまりないけれど。それでも、さすがに直径の系譜はわかる。王家の代替わりがいつあったのかも。

 それはマゼリアが亡くなった十数年後、サラシェルト王太子が王として即位して数年後のことだった。あんなにも王となるべく努力していたサラシェルト王太子が、実際に王として名を遺したのはたった数年だった。その数年の間に多くのことに取り組んだようだが、その詳細はわからなかった。わかったのは、彼は賢王と呼ばれたことだけ。

そして、もう一つ。マゼリアが亡くなった後、サラシェルトが再婚することはなかった。マゼリアとサラシェルトの間に子はいなかったというのに、だ。だからこそ、グージフィ王家が途切れた。そしてそのあとを継いだのが彼の従弟だった。それが、王弟殿下が婿養子となったクアルゼット家の人。現在の王家だ。

いくら考えてもわからない。どうしてそうなったのか。知るためにはきっと、王城で保管されている記録を見るしかない。気になるけれど、さすがにそれは無理な話よね。どうして、どうして。その気持ちが胸の中を支配する。

 聞こえてきたノックの音に思考が霧散する。もともと高熱のせいで頭がぼんやりとしているのに、きちんと考えられるはずがなかった。

 やってきたのはリミーシャさんが話していたお医者さんだった。軽く診察をすると疲れからくる発熱だろうと結論づけて、よく休むようにと言いながら薬を処方してくれた。

「フィーア様、ゆっくりとお休みください。 
 昼食には消化にいいものを用意いたしますね」

「ありがとう」

 そう返した後は、襲ってきた眠気に身を任せる。『画』、特に過去の自分の『画』を視ているととても疲れる。寝ているときに視たものだけれど、あまり寝た気がしない。目を閉じるとすぐに寝てしまった。

--------------------
「フィーア、ご飯の時間だよ」

「え……?」

 ぼんやりと意識が浮上していく。声がした方を見ると、そこにはラシェットさんがいた。とっさに窓の外を見ると、外はかなり明るいから、まだ昼頃だよね。

「どうして、ラシェットさんがここに?
 お仕事中では?」

「今は昼休み。
 フィーアが体調を崩したって聞いてね、戻ってきたんだ」

「え、そんなお手数を」

「気にしないで」

 ラシェットさんはほほ笑むと、ほら、とおかゆが入った皿を差し出す。そこからひとさじ掬われて、慌ててお皿とスプーンを受け取った。そんな、食べさせてもらうのはさすがに恥ずかしい……。

「私、大丈夫ですよ?
 ラシェットさんは休んでください」

「体調悪いのにそんなの気にしないの。
 ほら、おかゆ食べられたら次は薬ね」

「はい……」

 見張られているのか、見守られているのかわからない状態でなんとかおかゆを食べきり、薬を飲みこむ。苦い……。

「うん、薬もちゃんと飲めて偉い。
 ほら、ご褒美」

「ありがとうございます」

 そう言って差し出されたのは飴玉。ころり、と口の中に入れられる。甘い。薬の苦みが溶かされていく。

「それじゃあ、おとなしく寝ていてね」

 最後に軽く頭をなでるとリミーシャさんは仕事に戻っていった。私が、フリージアが体調を崩した時、傍にいてくれたのはアンナだけだった。それが、ここではこうしてたくさんの人が心配して傍にいてくれる。それが温かくて、幸せだった。

 夜にはブランスさんが仕事終わりに様子を見に来てくれた。そのころには熱はほとんど下がっていて、よかった、と笑ってくれたブランスさんの顔が印象的だった。

 ゆっくりと休んだ次の日、すっかり体調は回復していた。疲れからくる発熱だなんて働かせすぎたかしら、とおろおろしたリミーシャさんをなだめるのが、実は一番大変だったかも。でも、それもまた幸せなことだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...