ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

文字の大きさ
23 / 69

22

しおりを挟む
 自室に戻ると、先ほどルイさんから受け取ったお菓子をさっそく一つ口に入れてみる。ほろほろとした食感を楽しんでいるとすぐに口からなくなってしまった。もう一つ食べたいけれど、そうしたらすぐに無くなっちゃう。ぐっとがまんして、次はルイさんの妹からという手紙を手に取った。

 手紙を開けると、ふわりと甘い香りが漂う。すごい、これはバラの香りかな。手紙に香を焚きつけるなんて、それこそ貴族とか、貴族のまねごとをしたがる上流階級がやること。少し驚いた。

 そのまま手紙を取り出して中身を見てみると、繊細できれいな文字が並んでいる。フィーア様へ、という言葉から始めるその手紙には、気遣いにあふれた言葉が書かれていた。そして、ことりの庭の商品を気に入っていていつもルイさんが買ってくるものを楽しみにしていること、一度会ってみたいのでお店に行きたいと考えていることが書かれていた。手紙の最後には妹の名前なのだろう、マリーと記載されていた。

 あまり長くはない手紙だったけれど、思わず笑みがこぼれる。そんな可愛らしい手紙だった。会ったことはないけれど、どんな子なのか少しわかった気がする。返事を書きたいけれど、無事に渡せるかな……。ルイさんにお願いしたら渡してくれるとは思うけれど。

 少し迷ったけれど、ひとまず手紙を書いてみることにした。書いて持っていればいつか渡せるかもしれないから。マリー様へ、と書き出すとそのあとはあまりつまずくことなく書き終わることができた。

 ……そうだ、手紙はいい手段かもしれない。今回みたいに名を書かなければ、そう簡単にはばれない。後はどうやって、どこに届けるかだけど……。届ける先はやっぱり騎士団かな。直接手渡しが一番確実だけれど、さすがにそれはできない。初めは不審な手紙だと疑われるかもしれないけれど、人が良く通るところにそっと置いておくのが一番かしら。

 今はまだ動けないけれど、動けるようになったら、一人で行動もできる。うん、これが一番いい案かも。ここ最近頭を悩ませていた問題が解決した気がする! マリーさんには感謝しなくちゃ。

 最後に香水を紙に吹きかけて、マリーさんへの手紙を無事に書き終わって封をし終わると、ノックの音が聞こえる。返事をすると、メイドが昼食を持ってきてくれていた。一人だし、移動も大変だし、と持ってきてくれるのだ。

「ありがとう」

「いいえ。
 今日のスープはシェフの新作だそうですよ。
 今までよりも栄養が凝縮されているようです」

「それは楽しみ!」

「あら、それはお手紙ですか?」

「あ、見つかっちゃった。
 ルイさんの妹さんにね。
 今度ルイさんに会ったときに渡してもらおうと思っていて」

「郵便を頼まなくていいのですか?」

「うん。
 住んでいる場所もわからないからね」

「あら、確かに。
 あの方が住んでいる場所、ラシェット様ならお判りでしょうか?」

「うーん、そうだね……。
 でも……私からルイさんに渡そうかな」

 すぐに返事をしなくても大丈夫だと思うし。そう答えると、そうですか、とメイドは答えてくれて、そのまま配膳を始めてくれた。

 初めにシェフの新作だというスープを口にする。本当だ、おいしさが増している。うまく表現はできないけれど、いろんな野菜のうま味がぎゅっと凝縮されている感じ。子爵家のシェフが作る料理はおいしかったけれど、味が変わることはなかった。でも、この家のシェフはこうやって味への追及をやめない。だから、どんどんおいしくなる。

「シェフにとってもおいしいって話してもらえる?
 何杯でも飲みたくなるくらい!」

「まあ、それは最高の誉め言葉ですね。
 もちろん伝えておきます」

 ほかの食事も安定したおいしさで、ついついたくさん食べてしまった。デザートまで完食するとさすがにおなか一杯になってしまった。

 食後はお昼寝をしたり、読書をしたり、勉強をしたり……。思いのままに過ごさせてもらった。あの子爵家ではいい顔をされなかった、淑女には必要がないと言われるような勉強も、ここでは好きにさせてもらえる。経営も学んで、将来ことりの庭とかセンタリア商会とかの役に立てたらいいな、とか考えている。

 未来で自分がどこにいて、何をしているか。今はまだわからないけれど、できることは、やりたいことはしておきたい。自分でつかみ取った自由だから。……、とはいえこの自由はリミーシャさんたちに与えられたものだけれど。

 晩御飯時、リミーシャさんとラシェットさんは帰宅していた。ブランスさんは遅くなるみたい。おいしいご飯を頂いて、食後のお茶に移ったとき、ふと思いついてラシェットさんに聞いてみることにした。

「あの、ラシェットさんはルイさんの家をご存知ですか?」

「ああ、あの彼の? 
 そういえば知らないな……。
 どうしたの?」

「ルイさんの妹さんからお手紙をいただいて。
 お返事を渡したいと思いまして。
 でも、ルイさんにお会いしたときに渡してもらいます」

「そっか。
 力になれなくてごめんね」

「いいえ!」

 うん、やっぱりマリーさんへの手紙はルイさんに渡してもらおう。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

処理中です...