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自室に戻ると、先ほどルイさんから受け取ったお菓子をさっそく一つ口に入れてみる。ほろほろとした食感を楽しんでいるとすぐに口からなくなってしまった。もう一つ食べたいけれど、そうしたらすぐに無くなっちゃう。ぐっとがまんして、次はルイさんの妹からという手紙を手に取った。
手紙を開けると、ふわりと甘い香りが漂う。すごい、これはバラの香りかな。手紙に香を焚きつけるなんて、それこそ貴族とか、貴族のまねごとをしたがる上流階級がやること。少し驚いた。
そのまま手紙を取り出して中身を見てみると、繊細できれいな文字が並んでいる。フィーア様へ、という言葉から始めるその手紙には、気遣いにあふれた言葉が書かれていた。そして、ことりの庭の商品を気に入っていていつもルイさんが買ってくるものを楽しみにしていること、一度会ってみたいのでお店に行きたいと考えていることが書かれていた。手紙の最後には妹の名前なのだろう、マリーと記載されていた。
あまり長くはない手紙だったけれど、思わず笑みがこぼれる。そんな可愛らしい手紙だった。会ったことはないけれど、どんな子なのか少しわかった気がする。返事を書きたいけれど、無事に渡せるかな……。ルイさんにお願いしたら渡してくれるとは思うけれど。
少し迷ったけれど、ひとまず手紙を書いてみることにした。書いて持っていればいつか渡せるかもしれないから。マリー様へ、と書き出すとそのあとはあまりつまずくことなく書き終わることができた。
……そうだ、手紙はいい手段かもしれない。今回みたいに名を書かなければ、そう簡単にはばれない。後はどうやって、どこに届けるかだけど……。届ける先はやっぱり騎士団かな。直接手渡しが一番確実だけれど、さすがにそれはできない。初めは不審な手紙だと疑われるかもしれないけれど、人が良く通るところにそっと置いておくのが一番かしら。
今はまだ動けないけれど、動けるようになったら、一人で行動もできる。うん、これが一番いい案かも。ここ最近頭を悩ませていた問題が解決した気がする! マリーさんには感謝しなくちゃ。
最後に香水を紙に吹きかけて、マリーさんへの手紙を無事に書き終わって封をし終わると、ノックの音が聞こえる。返事をすると、メイドが昼食を持ってきてくれていた。一人だし、移動も大変だし、と持ってきてくれるのだ。
「ありがとう」
「いいえ。
今日のスープはシェフの新作だそうですよ。
今までよりも栄養が凝縮されているようです」
「それは楽しみ!」
「あら、それはお手紙ですか?」
「あ、見つかっちゃった。
ルイさんの妹さんにね。
今度ルイさんに会ったときに渡してもらおうと思っていて」
「郵便を頼まなくていいのですか?」
「うん。
住んでいる場所もわからないからね」
「あら、確かに。
あの方が住んでいる場所、ラシェット様ならお判りでしょうか?」
「うーん、そうだね……。
でも……私からルイさんに渡そうかな」
すぐに返事をしなくても大丈夫だと思うし。そう答えると、そうですか、とメイドは答えてくれて、そのまま配膳を始めてくれた。
初めにシェフの新作だというスープを口にする。本当だ、おいしさが増している。うまく表現はできないけれど、いろんな野菜のうま味がぎゅっと凝縮されている感じ。子爵家のシェフが作る料理はおいしかったけれど、味が変わることはなかった。でも、この家のシェフはこうやって味への追及をやめない。だから、どんどんおいしくなる。
「シェフにとってもおいしいって話してもらえる?
何杯でも飲みたくなるくらい!」
「まあ、それは最高の誉め言葉ですね。
もちろん伝えておきます」
ほかの食事も安定したおいしさで、ついついたくさん食べてしまった。デザートまで完食するとさすがにおなか一杯になってしまった。
食後はお昼寝をしたり、読書をしたり、勉強をしたり……。思いのままに過ごさせてもらった。あの子爵家ではいい顔をされなかった、淑女には必要がないと言われるような勉強も、ここでは好きにさせてもらえる。経営も学んで、将来ことりの庭とかセンタリア商会とかの役に立てたらいいな、とか考えている。
未来で自分がどこにいて、何をしているか。今はまだわからないけれど、できることは、やりたいことはしておきたい。自分でつかみ取った自由だから。……、とはいえこの自由はリミーシャさんたちに与えられたものだけれど。
晩御飯時、リミーシャさんとラシェットさんは帰宅していた。ブランスさんは遅くなるみたい。おいしいご飯を頂いて、食後のお茶に移ったとき、ふと思いついてラシェットさんに聞いてみることにした。
「あの、ラシェットさんはルイさんの家をご存知ですか?」
「ああ、あの彼の?
そういえば知らないな……。
どうしたの?」
「ルイさんの妹さんからお手紙をいただいて。
お返事を渡したいと思いまして。
でも、ルイさんにお会いしたときに渡してもらいます」
「そっか。
力になれなくてごめんね」
「いいえ!」
うん、やっぱりマリーさんへの手紙はルイさんに渡してもらおう。
手紙を開けると、ふわりと甘い香りが漂う。すごい、これはバラの香りかな。手紙に香を焚きつけるなんて、それこそ貴族とか、貴族のまねごとをしたがる上流階級がやること。少し驚いた。
そのまま手紙を取り出して中身を見てみると、繊細できれいな文字が並んでいる。フィーア様へ、という言葉から始めるその手紙には、気遣いにあふれた言葉が書かれていた。そして、ことりの庭の商品を気に入っていていつもルイさんが買ってくるものを楽しみにしていること、一度会ってみたいのでお店に行きたいと考えていることが書かれていた。手紙の最後には妹の名前なのだろう、マリーと記載されていた。
あまり長くはない手紙だったけれど、思わず笑みがこぼれる。そんな可愛らしい手紙だった。会ったことはないけれど、どんな子なのか少しわかった気がする。返事を書きたいけれど、無事に渡せるかな……。ルイさんにお願いしたら渡してくれるとは思うけれど。
少し迷ったけれど、ひとまず手紙を書いてみることにした。書いて持っていればいつか渡せるかもしれないから。マリー様へ、と書き出すとそのあとはあまりつまずくことなく書き終わることができた。
……そうだ、手紙はいい手段かもしれない。今回みたいに名を書かなければ、そう簡単にはばれない。後はどうやって、どこに届けるかだけど……。届ける先はやっぱり騎士団かな。直接手渡しが一番確実だけれど、さすがにそれはできない。初めは不審な手紙だと疑われるかもしれないけれど、人が良く通るところにそっと置いておくのが一番かしら。
今はまだ動けないけれど、動けるようになったら、一人で行動もできる。うん、これが一番いい案かも。ここ最近頭を悩ませていた問題が解決した気がする! マリーさんには感謝しなくちゃ。
最後に香水を紙に吹きかけて、マリーさんへの手紙を無事に書き終わって封をし終わると、ノックの音が聞こえる。返事をすると、メイドが昼食を持ってきてくれていた。一人だし、移動も大変だし、と持ってきてくれるのだ。
「ありがとう」
「いいえ。
今日のスープはシェフの新作だそうですよ。
今までよりも栄養が凝縮されているようです」
「それは楽しみ!」
「あら、それはお手紙ですか?」
「あ、見つかっちゃった。
ルイさんの妹さんにね。
今度ルイさんに会ったときに渡してもらおうと思っていて」
「郵便を頼まなくていいのですか?」
「うん。
住んでいる場所もわからないからね」
「あら、確かに。
あの方が住んでいる場所、ラシェット様ならお判りでしょうか?」
「うーん、そうだね……。
でも……私からルイさんに渡そうかな」
すぐに返事をしなくても大丈夫だと思うし。そう答えると、そうですか、とメイドは答えてくれて、そのまま配膳を始めてくれた。
初めにシェフの新作だというスープを口にする。本当だ、おいしさが増している。うまく表現はできないけれど、いろんな野菜のうま味がぎゅっと凝縮されている感じ。子爵家のシェフが作る料理はおいしかったけれど、味が変わることはなかった。でも、この家のシェフはこうやって味への追及をやめない。だから、どんどんおいしくなる。
「シェフにとってもおいしいって話してもらえる?
何杯でも飲みたくなるくらい!」
「まあ、それは最高の誉め言葉ですね。
もちろん伝えておきます」
ほかの食事も安定したおいしさで、ついついたくさん食べてしまった。デザートまで完食するとさすがにおなか一杯になってしまった。
食後はお昼寝をしたり、読書をしたり、勉強をしたり……。思いのままに過ごさせてもらった。あの子爵家ではいい顔をされなかった、淑女には必要がないと言われるような勉強も、ここでは好きにさせてもらえる。経営も学んで、将来ことりの庭とかセンタリア商会とかの役に立てたらいいな、とか考えている。
未来で自分がどこにいて、何をしているか。今はまだわからないけれど、できることは、やりたいことはしておきたい。自分でつかみ取った自由だから。……、とはいえこの自由はリミーシャさんたちに与えられたものだけれど。
晩御飯時、リミーシャさんとラシェットさんは帰宅していた。ブランスさんは遅くなるみたい。おいしいご飯を頂いて、食後のお茶に移ったとき、ふと思いついてラシェットさんに聞いてみることにした。
「あの、ラシェットさんはルイさんの家をご存知ですか?」
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そういえば知らないな……。
どうしたの?」
「ルイさんの妹さんからお手紙をいただいて。
お返事を渡したいと思いまして。
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「そっか。
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「いいえ!」
うん、やっぱりマリーさんへの手紙はルイさんに渡してもらおう。
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