あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio

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最終章 

248 リディアとカルベア 5

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「お嬢様……?」

 久しぶりに我が家の門をくぐると、すぐに使用人が迎えてくれた。
 私の顔を見て信じられないといったように驚き、そして隣にいたカルベアに少し怪訝な目を向ける。確かに使用人にとって、急に消えたお嬢様が知らない男性を連れて戻ってきたらそんな反応をするだろう。
 これはカルベアに申し訳ないことをした。そっと彼の方を見ると、大丈夫といったように笑ってくれた。

「よくぞ帰ってこられました!
 ですが、もう少し、もう少し早ければ……」

 次に出てきたのは執事長だった。もう少し早ければ何があったのだろうか?
 彼はそれ以上何かを言うでもなく、私を両親のもとへ案内した。

「リディアなのか……?
 ああ、よく帰ってきたな!」
 
 父様は私の顔を見た瞬間に、そういって涙を浮かべた。 母様はそっと私を抱きしめる。
 思いがけない行動に一体何があったのかと、私はますます混乱した。

「ああ、すまない。
 そちらの方は?」

「初めまして、カルベアと申します」

「彼は私と一緒に行動している方なの」

 そう説明すると、そうかといって両親がカルベアを見る。どうしてだろう、なんだか緊張するな。
 そして、父様は一つため息をつくと私をまっすぐに見た。

「リディア、落ち着いて聞いてくれ。
 マーサが死んだ」

 その言葉を聞いても、私は父様が何を言っているのかわからなかった。マーサが、妹が死んだとはどういうことなのだろうか。

「あの1件以降、ずっとふさぎ込んでいたのだが、急にな……」

 そこまで言うと、父様はしたを向く。きっと、阻止できなかったことを悔やんでいるのだろう。
 母も堪え切れずに涙をこぼす。
 どうして、私はもっと早くこの家に戻ってこなかったのだろう。私の聖魔法ならば、闇に沈んでいった妹の心を、命を救えたかもしれないのに。
 どうして。
 
「リディア」

 沈んだ空気の中、彼の澄んだ声が部屋に響き渡った。
 ああ、そうだ。ここに来た目的を果たしてはいなかった。妹の死を嘆いていては、この暗闇に世界が呑み込まれてしまうだけだ。

「お父様、本日はお願いがあってまいりました。
 妹のためにも、皆のためにも、私はもう立ち止まるわけにはいかないのです」

 こぼれる涙をふくこともなく私は両親を見つめる。その様子にわずかに驚いた様子を見せた。

「強くなったな、リディア。
 聞こう」


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