249 / 261
最終章
248 リディアとカルベア 5
しおりを挟む
「お嬢様……?」
久しぶりに我が家の門をくぐると、すぐに使用人が迎えてくれた。
私の顔を見て信じられないといったように驚き、そして隣にいたカルベアに少し怪訝な目を向ける。確かに使用人にとって、急に消えたお嬢様が知らない男性を連れて戻ってきたらそんな反応をするだろう。
これはカルベアに申し訳ないことをした。そっと彼の方を見ると、大丈夫といったように笑ってくれた。
「よくぞ帰ってこられました!
ですが、もう少し、もう少し早ければ……」
次に出てきたのは執事長だった。もう少し早ければ何があったのだろうか?
彼はそれ以上何かを言うでもなく、私を両親のもとへ案内した。
「リディアなのか……?
ああ、よく帰ってきたな!」
父様は私の顔を見た瞬間に、そういって涙を浮かべた。 母様はそっと私を抱きしめる。
思いがけない行動に一体何があったのかと、私はますます混乱した。
「ああ、すまない。
そちらの方は?」
「初めまして、カルベアと申します」
「彼は私と一緒に行動している方なの」
そう説明すると、そうかといって両親がカルベアを見る。どうしてだろう、なんだか緊張するな。
そして、父様は一つため息をつくと私をまっすぐに見た。
「リディア、落ち着いて聞いてくれ。
マーサが死んだ」
その言葉を聞いても、私は父様が何を言っているのかわからなかった。マーサが、妹が死んだとはどういうことなのだろうか。
「あの1件以降、ずっとふさぎ込んでいたのだが、急にな……」
そこまで言うと、父様はしたを向く。きっと、阻止できなかったことを悔やんでいるのだろう。
母も堪え切れずに涙をこぼす。
どうして、私はもっと早くこの家に戻ってこなかったのだろう。私の聖魔法ならば、闇に沈んでいった妹の心を、命を救えたかもしれないのに。
どうして。
「リディア」
沈んだ空気の中、彼の澄んだ声が部屋に響き渡った。
ああ、そうだ。ここに来た目的を果たしてはいなかった。妹の死を嘆いていては、この暗闇に世界が呑み込まれてしまうだけだ。
「お父様、本日はお願いがあってまいりました。
妹のためにも、皆のためにも、私はもう立ち止まるわけにはいかないのです」
こぼれる涙をふくこともなく私は両親を見つめる。その様子にわずかに驚いた様子を見せた。
「強くなったな、リディア。
聞こう」
久しぶりに我が家の門をくぐると、すぐに使用人が迎えてくれた。
私の顔を見て信じられないといったように驚き、そして隣にいたカルベアに少し怪訝な目を向ける。確かに使用人にとって、急に消えたお嬢様が知らない男性を連れて戻ってきたらそんな反応をするだろう。
これはカルベアに申し訳ないことをした。そっと彼の方を見ると、大丈夫といったように笑ってくれた。
「よくぞ帰ってこられました!
ですが、もう少し、もう少し早ければ……」
次に出てきたのは執事長だった。もう少し早ければ何があったのだろうか?
彼はそれ以上何かを言うでもなく、私を両親のもとへ案内した。
「リディアなのか……?
ああ、よく帰ってきたな!」
父様は私の顔を見た瞬間に、そういって涙を浮かべた。 母様はそっと私を抱きしめる。
思いがけない行動に一体何があったのかと、私はますます混乱した。
「ああ、すまない。
そちらの方は?」
「初めまして、カルベアと申します」
「彼は私と一緒に行動している方なの」
そう説明すると、そうかといって両親がカルベアを見る。どうしてだろう、なんだか緊張するな。
そして、父様は一つため息をつくと私をまっすぐに見た。
「リディア、落ち着いて聞いてくれ。
マーサが死んだ」
その言葉を聞いても、私は父様が何を言っているのかわからなかった。マーサが、妹が死んだとはどういうことなのだろうか。
「あの1件以降、ずっとふさぎ込んでいたのだが、急にな……」
そこまで言うと、父様はしたを向く。きっと、阻止できなかったことを悔やんでいるのだろう。
母も堪え切れずに涙をこぼす。
どうして、私はもっと早くこの家に戻ってこなかったのだろう。私の聖魔法ならば、闇に沈んでいった妹の心を、命を救えたかもしれないのに。
どうして。
「リディア」
沈んだ空気の中、彼の澄んだ声が部屋に響き渡った。
ああ、そうだ。ここに来た目的を果たしてはいなかった。妹の死を嘆いていては、この暗闇に世界が呑み込まれてしまうだけだ。
「お父様、本日はお願いがあってまいりました。
妹のためにも、皆のためにも、私はもう立ち止まるわけにはいかないのです」
こぼれる涙をふくこともなく私は両親を見つめる。その様子にわずかに驚いた様子を見せた。
「強くなったな、リディア。
聞こう」
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる