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十四章 不穏な空気
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その日は結局そのままお開きとなった。私は本当はこの力で救える人を救いたい。でも、神官長への嫌悪感はどうしてもある。どうしてこうもうまくいかないのだろう。
そんなもやもやとした感情を抱えたまま、私は今日師匠のもとを訪れていた。聖魔法のことを聞こうと思ったのだ。
師匠の部屋でノックすると、返事はすぐに返ってきた。部屋に入ると丁度休憩中だったようだ。
「お邪魔でしたか?」
「いえ、大丈夫ですよ。
何か御用ですか?」
やっぱり、師匠の部屋に行くとどこかほっとする。もうここに通い出して8年か……。柔らかに笑う師匠にほっとして、私は師匠の前に座った。するとすぐに私にも紅茶を入れてくれる。
「師匠は聖魔法をご存知ですか?」
紅茶を一口飲み、一息つくと私は本題を切り出した。突然の問いに少し驚いたように眉を上げた。
「聖魔法ですか?
基礎的なことしか存じませんが……」
「教えてください」
少し必死になってしまっただろうか。師匠が不思議そうな顔をしたが説明を始めてくれた。
「聖魔法とは闇を浄化する魔法のこと、といえばわかるでしょうか。
はるか昔にこの世界は闇に包まれたと言います。
その時に二人の男女が立ち上がりました。
彼らは聖魔法をもって闇を払い、人々を救ったと言います。
確か、彼らは闇の根源を封印した後、息を引きとったそうです。
どうやら聖魔法はほかのものと比べても、生命に直結するようですね。
ちなみに神殿にある聖剣は、彼らが自分の中にある聖魔法を剣に移したもののことを言います」
その一連の話にどこか聞き覚えがあった。今まで聞いたことはないはずなのに、だ。
「どうしましたか?」
「あっ、いえ……。
なんだか聞いたことが、あったきがして……」
「そうなのですか?
あまり出回っている話でもないような気がしますが、オリベルトさんならそういうこともあるかもしれませんね。
そうだ、今頻発している事件、聖剣で正気にもどるようですね。
もしかしたら、封印が解けかかっているのかもしれませんね……」
瞳を伏せた師匠は、心配そうにそういう。きっと師匠もどうにかしたいとは思っていたのだろう。
「師匠、私が魔法属性を三つ持っていることは覚えておいでですか?」
「ええ、もちろん。
光属性と、空間属性と、いまだわからないもうひとつですよね?
……まさか」
「父様と兄様が、最後のひとつは聖魔法ではないかと……。
もしも、本当にいま悪の根源が復活しようとしているなら、私がそれを倒しに行きたい。
この力を、誰かのために使いたいのです」
でも、そう区切った言葉の先をきっと師匠は察してくれたのだろう。どうして、と唇噛み締めて、こぼれそうになる涙を必死におさえる。そんな私を師匠はただ見守ってくれた。
そんなもやもやとした感情を抱えたまま、私は今日師匠のもとを訪れていた。聖魔法のことを聞こうと思ったのだ。
師匠の部屋でノックすると、返事はすぐに返ってきた。部屋に入ると丁度休憩中だったようだ。
「お邪魔でしたか?」
「いえ、大丈夫ですよ。
何か御用ですか?」
やっぱり、師匠の部屋に行くとどこかほっとする。もうここに通い出して8年か……。柔らかに笑う師匠にほっとして、私は師匠の前に座った。するとすぐに私にも紅茶を入れてくれる。
「師匠は聖魔法をご存知ですか?」
紅茶を一口飲み、一息つくと私は本題を切り出した。突然の問いに少し驚いたように眉を上げた。
「聖魔法ですか?
基礎的なことしか存じませんが……」
「教えてください」
少し必死になってしまっただろうか。師匠が不思議そうな顔をしたが説明を始めてくれた。
「聖魔法とは闇を浄化する魔法のこと、といえばわかるでしょうか。
はるか昔にこの世界は闇に包まれたと言います。
その時に二人の男女が立ち上がりました。
彼らは聖魔法をもって闇を払い、人々を救ったと言います。
確か、彼らは闇の根源を封印した後、息を引きとったそうです。
どうやら聖魔法はほかのものと比べても、生命に直結するようですね。
ちなみに神殿にある聖剣は、彼らが自分の中にある聖魔法を剣に移したもののことを言います」
その一連の話にどこか聞き覚えがあった。今まで聞いたことはないはずなのに、だ。
「どうしましたか?」
「あっ、いえ……。
なんだか聞いたことが、あったきがして……」
「そうなのですか?
あまり出回っている話でもないような気がしますが、オリベルトさんならそういうこともあるかもしれませんね。
そうだ、今頻発している事件、聖剣で正気にもどるようですね。
もしかしたら、封印が解けかかっているのかもしれませんね……」
瞳を伏せた師匠は、心配そうにそういう。きっと師匠もどうにかしたいとは思っていたのだろう。
「師匠、私が魔法属性を三つ持っていることは覚えておいでですか?」
「ええ、もちろん。
光属性と、空間属性と、いまだわからないもうひとつですよね?
……まさか」
「父様と兄様が、最後のひとつは聖魔法ではないかと……。
もしも、本当にいま悪の根源が復活しようとしているなら、私がそれを倒しに行きたい。
この力を、誰かのために使いたいのです」
でも、そう区切った言葉の先をきっと師匠は察してくれたのだろう。どうして、と唇噛み締めて、こぼれそうになる涙を必死におさえる。そんな私を師匠はただ見守ってくれた。
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