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七章 学園生活 1-2

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 さて、先生の家についてからしばらく経ちました。
 家に着くと、先生は紅茶を用意してからご飯を作り始めた。
 その気遣いはなんだか申し訳なかったけど、せっかくだから甘えちゃった。
 先生の家は、なんというかシンプルだけどどこかほっとする。
 木の家具が多く、光もよく入ってきている。
 風通りがよくて心地いい。

 鉱石を採ってきた疲労もあるのか、私はご飯を待ちながらうとうとしてしまった。
 先生に起こされ顔を上げると、そこにはもう料理が広がっていた

「お待たせしました。
 できましたよ」

「あの、これ全部先生が?」

「はい、そうですよ」

 なんでもないように先生はそう言って、大皿から料理を取り分けてくれる。
 あの短時間でこれだけの量、というのもすごいが何よりとてもおいしそうなのだ。
 ミートボールのトマト煮に、生ハムのようなものがのったサラダ、スープにパン。
 さすがにパンは焼き立てではないと思うが、ふっくらとしていてとてもおいしそうだ。

「さあ、冷めないうちにどうぞ」

「いただきます」

 先生に勧められるまま、食事をいただく。
 手でちぎったパンをミートボールのソースに浸したくなる気持ちをぐっと我慢して、それぞれ口に運ぶ。
 うん、やっぱりおいしい。
 つい顔がほころんでしまう。
 パンもホカホカとしているけど、まさかこれ焼き立て?

「おいしいですか?」

「はい!
 とってもおいしいです!」

 にっこりと笑ってそういうと、先生は微笑んでくれる。
 なんだか自分が幼い子供になったみたいで恥ずかしいけど、まあ今は本当に子供だからよしとしよう!

「こうして誰かに食べてもらうのは久しぶりです。
 そんなにおいしそうに食べていただけると、作りがいがありますね」

「こんなにおいしいのにほかの方に振舞ったりしないのですか?」

 きょとんとしてつい聞いてしまう。
 一人暮らしをされているみたいだけど、ご家族の方に食べてもらうこともないのだろうか。

「機会がありませんので。
 よかったらまた何か作らせてください」

「いいのですか!?
 ぜひ、お願いします」

 まさかまた振舞ってもらえるとは思っていなかったから、ついはしゃいでしまった。
 先生が微笑んでくれているから、まあいいけど……。

「さあ、食べてしまいましょうか」

 そう言われて、味わいながらまた食べるのを再開した。

 ご飯を食べ終わると、また馬車で屋敷まで送ってもらった。
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