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六章 フルトの誕生祭

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 ミハルトさんが去ってからというもの、特にやることがない私はリュラとおいしそうな食事を食べていた。
 皆さんはそれぞれのグループを作って話しているんだよね。
 なんというか、兄様の学友チームと大人の男性チーム、大人の女性チームみたいな。
 ここには私の友人がいるわけがないから、話せる人が誰もいないのだ。
 パーティーってもっと楽しい感じのものを期待していたから、正直がっかりしている。

「アーネ、リュラ!
 こちらにいたのね」

 少しぼんやりしながらそんなことを考えていると、母様がどこか慌てたようにこちらにやってきた。
 どうしたのかな?

「探していたのよ。
 みなさん、フルトのことだけでなくアーネのことも聞いてくるんですもの。
 本人に聞いた方が早いわ」

「あの、お母様?
 もしかして、私にあの輪に入れとおっしゃっています?」

 ぎぎぎ、と見た先は何人かのご夫人がきらきらとした瞳でこちらを見ていらしてる。
 先ほどのことを思うと、あそこの輪に入ってしまうと質問攻めにあうのはわかりきっているのだ。

「ええ!」
 
 だが、母様にそんな風に答えられてしまうと従うしかないのだ……。 
 手を握るリュラの方を見ると眠そうに眼をこすっている。
 今日は朝からばたばたしていたし、慣れない場でいつもよりも眠気が早く来てしまったのだろう。
 もしかしたら、リュラを部屋に連れて行くという名目でこの場を離れられるかもしれない!

「あの、お母様。
 リュラが眠そうですわよ?」

「あら、そうね」

 そういうと、母様はたまたま近くを通った給仕に声をかけると、その人にリュラを連れて行ってもらった。
 これで私の逃げ道が無くなってしまったわけだ。
 
「さあ、行きましょうか」

「……はい」
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