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3章 王都での暮らし
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しおりを挟む「やあ、よく来たね」
にこにこと僕を出迎えてくれたのはシント。エキソバート殿下ももう学園が始まっているのでこの時間は王宮にはいないらしい。正直安心した。そんな中、なぜ僕が王宮に来ているのか。
今日からとうとう魔法の授業が始まるのだ!
「おはよう、シント。
あ、そうだ……」
今日来たらシントに頼もうと思っていたことを思い出して、こそっとシントに近づく。内緒話がしたいと察してくれたのだろう。シントのほうからも近づいてくれた。そしてできるだけ声を小さくして伝える。
「今日の授業の後に隠し部屋で話ができないかな……?」
そういうとシントは一瞬驚いた顔をしながらも快諾してくれる。よかった、さすがに誰かに聞かれている可能性があるところでできる話ではないからね。急にお願いすることになったのは申し訳ないけれど、応じてくれたのは助かりました。
「ありがとう」
それだけ言うと離れることにした。サイガ達は少し不思議そうにはしていたけれど、特に何を話していたのか聞かれることはなかった。
「そう言えば、アランはお茶会には顔を出さないの?」
まだ授業が始まるまで時間があるということで、ひとまずお茶をふるまってもらう。相変わらずシントのところのお茶はおいしいよな、と思っているとそんなことを言われた。そっか、シントたちは出ているのか。
「はい。
体調面が不安だから無理に行く必要はないといわれていまして」
そう苦笑いすると、シントがああ、とうなずく。
「そういえば、アランはあまり丈夫ではなかったっけ。
僕はあまり知らないけれど、前に王都に出ていた時も何度か体調崩していたっけ?」
「ええ、まあ……」
なんだか素直にうなずきたくなくて、あいまいに返事をしておく。そして、何なら今回王都に出てきてからも何度か寝込んでいます、とは言いたくなかった。
「アランがお茶会に参加できるようになるのを楽しみにしているよ。
そうだ、初めて参加するお茶会が決まったら教えてよ。
僕もそれに行こう」
「シントが一緒にいてくれるなら安心するね」
「うん、同じように派閥間のことを考えなきゃいけない人がそばにいてくれたほうが楽できそう」
「え、そんな理由⁉」
「ふふふ、冗談だよ。
楽しみにしている」
いや、それ結構本気だったのでは? と思わずジト目で見てしまう。そんな僕にシントは視線をそらしたからやっぱりそういうことだろう。
そんな話をしていると鐘が鳴る。それから少しして、先生がやってきた。前に話していたように今回はリシュベン先生が一人で来たみたいだ。
「ごきげんよう、シフォベント殿下、アラミレーテ殿。
本日からよろしくお願いいたします」
「リシュベン先生、こちらこそよろしくお願いいたします」
二人そろって挨拶をすると、リシュベン先生は満足そうにうなずいた。そして執事二人に部屋を出ているように伝える。どうやら魔法に関する授業というのは不特定多数の人に対してやっていいものではないらしい。魔法という莫大な力を扱うすべを手にするという意味で、だれが扱えるのかは国が把握しているらしい。その話を聞いて、二人がひとまず部屋を出て行った。
「さて、初めて行きましょうか。
まずは魔力というものを感じてもらいましょう」
魔力を感じる。それを聞いて思い出していたのは『ラルヘ』の幼い時のことだった。あの時は魔力なんて名前はついていなかったし、そんな意識もなかったけれど、つまりはそういうことだったのだろう。その時も同じように魔力を感じようと、体の中で魔力を自分の意志で循環させることをから始めたっけな。
「ここでは少し危ないのですので、場所を移動しましょうか」
え? 魔力を感じるためにここではいけないのか。あまりピンとは来なかったけれど、おとなしく先生の後をついていった。そして移動した先は魔法師団の訓練場だった。
「ここでしたら多少暴走しても大丈夫です」
多少暴走? いやいや本当に何をする気なんだ……。不安に思いながらも指示を待つ。すると、先生がいきなり少し上げた指先からぼう、といきなり炎を出し始めた。いや、本当に何やっているの⁉
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