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3章 王都での暮らし
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しおりを挟む「申し訳ございません。
わたくしがなかなか予定を開けられずに……」
「お気になさらないでください。
方々からお誘いの声が絶えないルルベ侯爵令嬢をこうしてお屋敷にお招きでき、私は幸運です」
柔らかな笑みを浮かべながらそんなことを言うのはチェシフェラ様。対するルルベ様もまんざらでもなさそうだ。本当にどうしてこんなことに……。早く帰りたい。
そう、今日はとうとう謎の三人でのお茶会の日なのだ。なかなか折り合いがつかないとのことだから喜んできたのに、とうとう今日三人の予定があってしまったのだ。本当に残念。なんでこういうときに体調を崩さないのか……。これの話を聞いた母上がまた喜んで新しい服を送ってくださったきので、ありがたく着させていただいています、はい。
「あのわたくし、前の時から気になっていたのですが、もしかしてそちらのお衣装はフェルシア辺境伯夫人がデザインされたものではなくて?」
「え?
あ、は、はい!
そうです、これは母上がデザインしてくださったものです」
ずっとチェシフェラ様と話されていたからまったく気にしてなかったよ⁉ 急にこちらに話を振るのはやめてくれ……。何とか返した言葉に、まあ、と瞳を輝かせたルルベ様。そんなにも興味があるとは思いませんでした。
「フェルシア様といえば、淑女の鑑であり多くの者の憧れ!
あのお方のデザインされるドレスはどれも素敵なものばかりで……。
その上、近頃では男性の方の衣装もデザインされていて本当にすばらしいですわ」
ほぅ、とため息まではかれてしまった。母上がこんなにも人気があるとは思わなかった。何かのスイッチが入ってしまったらしく、ルルベ様は夢見心地で語っていく。こ、こんなに思いを持っていたのですね。そしてそのような方を母に持つ僕がうらやましい、と。はい、言いたいことはわかりました。
「そうだ、せっかくこのような縁に恵まれたのです。
お互いのことを名で呼びませんか?}
そんなルルベ様の言葉が止まったのはチェシフェラ家のメイドたちがお茶のお代わりを申し出た時だった。それまでは本当に夢中で語っていました。結構スパッと入って、お茶だけでなく、お菓子も足してくれる。そのタイミングで自分の先ほどまでの様子を思い返したらしく、すぐに僕たちにすみません、と少し顔を赤くして言う。そしていいえ、といった後にチェシフェラ家がそう提案したのだ。その提案にルルベ様はぜひ、とすぐに乗る。これは僕もうなずいておいた方がよさそうだ。
「ではアラミレーテ様、メゾランテ様とお呼びしますね」
ええ、とうなずくルルベ様。それに合わせて僕もうなずいた。その返事にチェシフェラ様、じゃなくて、エーハライズ! がうれしそうにしていた。
「宝石眼のものはめずらしく、機会が無いとこうして話すこともありませんからね。
きっと我々にしかわかりえないこともあるかと思います」
「宝石眼はめずらしいのですね……」
ぼつりともらした言葉は本当に無意識で、言ってしまってからはっとする。エーハライズ様の言葉にうなずいていたメゾランテ様は少し呆然としているし、エーハライズ様は苦笑している。
「ええ、そうなのですよ。
アラミレーテ殿はご兄弟が皆宝石眼ですから、身近なのでしょうけれど」
「ああ、お聞きしたことがありますわ。
本当に珍しいことですよね。
1番血が濃いはずの王族ですらそこまで多く生まれないのに」
その言葉にエーハライズ様がうなずく。そっか、僕の周りが特殊なだけか。この前のお茶会でも結局同じ席だったのは宝石眼のひとばかりだったから感覚がおかしくなっていたのでしょう!
「さあ、お茶が冷めてしまいます。
どうぞ召しあがってくだい」
微妙になってしまった空気をエーハライズ様が変えて下さり、この話はここで終わりとなってくれる。正直これ以上どうしたらいいのか分からなかったから助かりました……。
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