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6章 学園
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しおりを挟むそして夜会当日。とうとうこの日がやってきてしまったか……。
「とてもよくお似合いですよ、アラン様」
「ありがとう、アベル」
姿見の前で背を伸ばしてみる。今までとは全く違う服装だ。今までは母上の意向があり、フリルやレースといったものに半ズボン、そんな服装が多かったけれど今日からは違う。この服はすっきりとしたデザインになっている。いやー、久しぶりにこういう服を着た!
「なんだか、一気に大人びて見えますね」
いや、ちょっとそこで涙ぐむのやめてください。昨日までの僕と中身は何も変わっていないのに、なんだかいたたまれない。
「これは失礼いたしました。
では、最後にこちらを」
そういって付けてもらったのは9歳の祝いにグレン先生に頂いたブローチだ。なんだか、もう懐かしく感じてしまう。グレン先生は王都までついてきてくれて、今は僕の側近となってくれている。僕には側近はいらなかったんだけれど、まあ、うん。
ちなみに腕にはもちろん腕輪をしています。
「ありがとう」
ホールへ行くと、すでに兄上は準備を整えていたようで、ホールにいた。後はリーサ義姉上か。よかった、女性よりも準備が遅いのはどうかと思うし……。
「アラン!
とてもよく似合っているよ!」
う、笑顔がまぶしい。兄上はこの年になって、ますますかっこよさが増している。細身に見えるのに、鍛えているからがっしりしている。顔はもともと整っているし。うぐぐ、僕もこんな風になりたい、けど無理な気がしかしない。
「えーっと、どうかした?」
「いえ、兄上がかっこよすぎてずるいなんて思っていません」
「え、え、え!?」
あ、ちょうどリーサ義姉上が来たみたい。姉上も一緒だ。本当は姉上も一緒に夜会へ行けたら、なんて思ってしまうけれど、婚約者が一緒でないならばいやな思いをするだけだ。本当にあの殿下は……。まあ、そんなことを言っても仕方ないのだけれど。
「まあ!
とっても良く似合っているわ、アラン。
本当に素敵になって……」
「本当に!
今までの年少のお姿もかわいらしかったですが、こちらの服装をされると印象が変わられますね」
「あ、ありがとうございます……」
う、圧がすごい。リーサ義姉上、おとなしい方という印象しかなかったけれど、こんなにぐいぐい来られることもあるんだね……。
「二人ともそこまで。
そろそろ行かないと」
「まあ、わたくしったら!
失礼いたしました」
「ごめんなさい、お兄様。
行ってらっしゃいませ」
行ってきます、というと使用人も頭を下げて見送ってくれる。すぐそばにいたサイガたちも一緒にお見送りをしてくれた。
「行ってらっしゃいませ。
おかえりをお待ちしております」
「うん、行ってくる。
……行きたくないけれど」
「聞こえていますよ」
あ、やっちゃった。そんな睨まないでよ。こういう時はさっさと逃げるに限る! ということでさっさと馬車に乗り込みます。
王城自体には何度も来たことがあるが、夜の王城は初めて来た……。明かりがともって荘厳な王城がきれいに浮かび上がっている。これは夜会が楽しみになる気持ちがわかるかもしれない……。
「いいかい、アラン。
変なことを言ってくる輩もいるかと思うが、気にすることはないよ。
堂々としていればいい」
「はい」
「それとファーストダンスは、そうだなリーサと踊るといい」
「まあ、光栄ですわ。
よろしくお願いいたします、アラン」
まだまだ社交ダンスに慣れていないから、身内が相手になってくれるならば心強い。何かしてしまったら、一生懸命謝ろう……。
「よろしくお願いします」
う、やばい。馬車が到着した瞬間一気に緊張が……。でもファーストダンスを踊ることが決まっているシントはもっと緊張しているはずだ。参加者全員が自分は踊らずにシントと相手の人のダンスを見守るのだ。僕だったら逃げ出していた。
そしてその相手はシェリー嬢。いや、もうシャーロット嬢と呼ばなくちゃいけないか。気を付けないと。今一番シントの婚約者と目されているのがこのシャーロット様。今日から婚約者を持つことができるようになったわけだけど、まあ僕にはあまり関係ないな。
「アラン?
早く降りないと後から来る人の邪魔になるよ」
「あ、すみません!」
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