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6章 学園
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しおりを挟む「今のって、さ」
「告白、みたいだね」
「やっぱり!?」
うん、それしか考えられない。うなずくと、シントが頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。大丈夫か?
「シェリーが、僕に……?
ダメ、だめだよ」
「どうしてだめなの?」
シェリー嬢なら、幼い時から一緒だし、お互いのことも多少はわかっているはず。それに身分も釣り合っている。婚約相手にはかなり適任だと思うけれど。
「アランはさ、知らないことなんだけれど。
僕は前世でいろんな過ちを犯した。
アラン、君にはもちろんだけれど、他の人にもたくさん。
その中の一人が妻となってくれた女性なんだ。
僕が至らなかったせいで、ずいぶんとつらい思いをさせてしまった。
だから、僕はせめて今回はって」
「妻を、娶らないってこと?」
「そうするつもりだった。
でも、今はそうもいかない」
「王太子に、未来の王に、なってしまったものね」
「そう。
だから、せめて、そんな僕でも傷つかない女性を、娶るつもりだった。
でも、でも……」
「シェリー嬢が告白してきた、と。
ああいうことを言ったうえで、それでも共に歩みたいといってくれたシェリー嬢の想いを無駄にすると?」
「その言い方は、ずるい」
むすっとするシントはずいぶんと幼く見える。それなのに、彼の、そう遠くない将来には国の未来がかかってきてしまうのだ。それはどんな重圧だろう。そんな道を一人で歩むなんて無理だよ。誰かが、すぐそばで支えてくれないと。
そんな人に、シェリー嬢はなってくれると言うのだ。
「これ以上いい人いるわけないと思うよ」
「……、わかっている。
もともとシェリー嬢は婚約者の第一候補だったから、周りも反対しないだろうね。
ためらってしまうのは、本当に僕でいいの? って思ってしまうんだ」
「シントがいいって、言ってくれているんだよ」
そう返すと、シントはそっか、と小さくつぶやいた。結婚、か。なんだか近頃はそういう話題が多い。兄上はそれで幸せそうだから本当によかったと思うし、姉上もいやいや嫁ぐわけではないことを知っている。でも、自分の話にはできないんだよね。
「……部屋、見てみようか」
「あ、うん」
気持ちが落ち着いたのか、一旦後回しにしたのか、シントがそう話しかけてきた。まあ、確かにそれぞれの部屋が気になるから、それは歓迎だけれど。
部屋は全部で8つ。多くても一家二人くらいだろう、という計算かな? 現在在学中なのは5人だから、部屋は未だ余っているということだ。
「他の人たちにも許可はもらっているから、部屋入ってみよう」
まずは一つ目。ここはトラヴィリス様の部屋。とても整っていて、初めて足を踏み入れた僕でも何がどこにあるのかわかる気がするくらい。さすが。館の見た目からしてかなり大きかったが、個人部屋もかなり広めに作られている。ここで執務をやることもあるみたいだし、そういうものか?
そして次はフレン兄上の部屋。こちらも整っている。本棚にはなんだか難しそうな本が並んでいる。各地の資料やらなんやらがたくさん。フレン兄上は未来の宰相だから、いろんな知識が必要なのだろう。
そして、ハール様の部屋。こちらはうん、という感じだ。今までかなり整った部屋ばかりだったから、余計に汚れて見える。いろんなものが部屋に散らばっていて、それに加えてトレーニング用と思われる器具が置いてある。
まさに十人十色といった感じの部屋。最後に入ったのはシントの部屋になるところだ。まだ家具のみが運び入れられた部屋は閑散としている、
「……なんでベッドが?」
「うん、なんでだろうね」
しかもしっかりと寝具揃っている。あまりの準備万端さに思わず笑ってしまった。まあ、憂いあれば備えなしというやつかな? まあ、手伝えるところは手伝って、いけるといいが……。
さすがにシェリー嬢の部屋に入るのは気が引けるということで、遠慮しました。
「来たいときにいつでもきていいからね。
アランだったら誰も文句言わないでしょう。
なんなら余っている部屋使ってもいいんだし」
「いや、そういうわけにもいかないよ」
そこまで特別扱いされてしまうと、ちょっと気まずい……。丁重にお断りさせてもらう。僕がここに来るのは、シントとか、ここを使う権利がある人と一緒の時だけ!
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