150年後の敵国に転生した大将軍

mio

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最終章 

169

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 ざくざくと音がする。一歩進むごとに道をかき分けないといけないくらい、自然であふれている。まあ、あれだけ放置したらこんなことにもなるかな。でも、なんでだろう。こんなにも変わってしまっているのに、懐かしい。見覚えがある。

 確かこっち……。

 ああ、あった。ツタが絡んでしまっているけれど、外景は崩れていない。入り口である門をくぐる。その先はかなり荒らされていた。ああ、そうだよね。だって、襲われて、火も放たれたんだもの。

 確か、こっちのほう……。祭壇があったはず。そのさらに奥に、族長しか入ってはいけないと言われた空間がある。そこがたぶん、最も重要な場所。一番神様に近いところ。

 うわ、がちがちに植物が絡みついている。仕方がない。きっと今後ここに来る人もいないだろう、と予想して一気に切ってしまおう。風の刃で扉のところを切り取る。少しして、重い音を立てながら扉が倒れこんだ。

 そこから、道なりに進んでいくと、意外なほどきれいなまま残っている祭壇が。まだほのかに光っている。ああ、やっぱりこれはあの白爛石と同じものだ。本当はここに力を注いだ方がいいのかもしれないけれど、さすがにここで倒れるわけにはいかない。ひとまず進んでいこう。

 奥の扉、『ラルヘ』も入ったことがない場所に入る。ここの扉はまだ侵食されていないみたいだ。……どうしてだろう? 『ラルヘ』がここに入ったことがないのは確かだ。いろんなこともここを出た後、母に教えてもらったくらいだ。でも、なぜか見覚えがある。ここを知っている。

 ここだったら、たぶんメリケリアース神に会える。

 奥にしまいこまれた神像。その前に膝をつき、願う。メリケリアース神に会えるように、と。そのまま少しすると、意識がふわりと浮かぶ。
 

『ああ、やっと帰ってきてくれましたね!
 私の愛し子!』

 うわっ、っぷ! な、何!? いきなり何かに抱き着かれた!? い、一体何事?

『ああ、本当によかった……』

 この声……、僕が僕になる前に出会った人? いや、人ではないかもしれないけれど。

「あの、あなたは?」

『私はメリケリアース。
 私に会いたくてこちらに来たのでしょう?』

 ……メリケリアース神。本当に? 本当に来れたの? いける、とは思っていたけれど、本当に会えるなんて……。さすがに驚いてしまう。

『あなたがあそこに戻ってきてくれて、本当にうれしかったのですよ? 
 あそこは私の忠臣を守るためのところ。
 あそこに入れさえすれば、あなたは安全に暮らすことができます』

「ち、違う! 
 僕は安全に暮らしたくてここに来たのではないのです。
 どうしたら、もう一度調律ができるのかを聞きに来たのです」

『調律?
 なぜですか?』

 なぜって……。だって、そうしないとどんどん崩壊していく。だから。

『あなたは、調律したいのですか……?』

 どうしてそんなに不思議そうな顔をして問いかけるの? だって、この世界を作ったのは紛れもないこの人なのに。そんな、興味がないみたいな。

『でも、そのためには正しい形に戻す必要があります』

「正しい、形?」

『ツーラルク皇国、あそこが世界の形をいびつにしてしまった。
 皇国ではなく、王国に戻ることで正しい形を取り戻せます』
 
 皇国ではなく、王国。……そういえばずっと前はツーラルクは確かに王国だった。それが、隣の三国を取り込むことで皇国と名乗るようになった。それをもとの形に、ということは取り込んだ国に、主権を戻すということ?

「あそこが、各国に主権を戻したらいいのですか?」

『正しい形に戻したうえで、しばらくは各国に血族をできるだけ多く置く必要があるでしょう。
 あなたのような、オッドアイ、それが叶わないならば、せめてその瞳のものを。
 そうして、私の力を各地に直接いきわたらせることで、なんとか取り戻せるかもしれません』

 それだけで終わらないのか……。僕がほかの国に行くこと自体はいい。でも、他にも巻き込まなくてはいけない。世界に国は13か国。全員が協力してくれるのならば、きっとどうにかなるが……。でも、やるしかない。

「わかりました。
 どうにかします。
 そうしたら、元通りになるんですね?」

 また、元のように豊かな、何の不安もない世界に。

『きっと。
    ……ねえ、我が愛し子よ。
    私はあなたに守られる人生を与えたかった。
    暖かく、包まれるような人生を。
    ……それなのになぜ、あなたはまた戦うんですか?』

 どうして、そんな悲しそうな顔をしてそんなことを言うの? そんなことを思いつつ、急に意識が浮上する感覚に襲われる。ああ、戻ってきた。

「行かないと」

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