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最終章
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カヌバレ領に行く傍ら、なぜあんなにも盛り上がったのかを説明してもらいました。この国ではオッドアイというものがアルフェスラン王国よりもかなり神聖視されるらしい。効率よく力ある子を集めるために、そういうことにして親が自ら子を差し出すような仕組みを作った、と。生まれたばかりの赤子に瞳の色を隠そうとかいった考えがあるわけないものね。それなら確実に見つかる。
で、その結果がさっきの反応。シントも宝石眼という時点で皇国では特別視されているみたい。まあ、もちろん皇帝が僕らの存在を認めているということが大きいみたいだけれど。皇帝……、結局直接会うことなかったけれど、どんな人なんだろう。そっちの方はシントが任せてって言っていたから、正直詳しくは知らない。
そして、その神聖視うんぬんに関係して、かはわからないが、なぜか領主の人に話す役目を仰せつかってしまった。いやいやいや、一番年下の平団員に任せないで!? と思うのだが、自分たちでは恐らく話を聞いてもらえない、というのだ。なんで僕が……、とは思うが話を聞く前に突き返されても困る。そして、なぜか団長たちが話すと突き返されるという確信があるらしい。え、これやるしかないの?
多少居心地悪い思いをしながら、なんとかカヌバレ領に着く。まあ、意外にもスムーズに進むことができたからよかったけれど。そして、領主の館への道で思わず驚いた。あまりにも変わっていない。もっと開発とか進んでいると思ったんだけれど……。
「あちらがカヌバレ領領主の館です」
ここも、変わっていない……。
「アラミレーテ様?」
「あ、いえ」
まるで時が止まったかのような町、屋敷。最後の時に僕たちが過ごした領だ。懐かしい感覚が嬉しくはある。でも、どうして? の方が優る。
「行きましょう」
他の人に屋敷のものを呼び出してもらう。すでに話は通してあったのだろう、すぐに少女が出てきた。
「ようこそ、いらっしゃいました。
領主様のところへご案内いたしましょう」
こちらが誰か訪ねることもなく、少女は私たちを中に招いた。大きな領主の館なのに、あまりにも人気がない。一体? 案内の少女に詳細を聞くこともできずに、ひたすらついていく。そして、案内された先はとある部屋だった。
「あの、本当にこちらに?」
「はい」
ここは、寝室……? どうして……。
「領主様、皆様をお連れいたしました」
「ああ、ありがとう、ラナ」
一礼して出ていく少女。この方が、領主様?
「客人を満足にもてなすこともできなくてすまないね。
こんな姿で失礼する」
「あ、いいえ。
あの、あなたは?」
「私はカヌバレ領領主、ティシベーラ・カヌバレだ」
「……お初にお目にかかります、カヌバレ領主ティシベーラ様。
私はアラミレーテ・か……、アラミレーテと申します」
っと、危ない。カーボ家としては、特にカヌバレ家に対して何か思うところはない。でも、逆はわからないものね。
「くっく、やっとか。
そなたはカーボ家のものだろう?」
「え、あ、はい」
「その腕輪、聞き覚えがあるよ。
そうか、カーボ家ではそれがいまだに続いているんだね」
ま、まって、意味が分からない。どうしてこの腕輪のことを知っているの?
「ここで、また巡り合えるとは思わなかったよ。
それで、そんな君がここに何の用だい?」
「あの、どういう意味ですか?
どうして、カーボ家の僕がここにいることをやっと、と?」
「ああ、まあ、これは我が家に伝わる噂、のようなものだから気にしなくていい。
それよりも、あまり長話はできないんだ。
手短に頼む」
あまりに不思議な雰囲気の方。もっと話を聞いてみたい。でも、時間がないのも確かだ。ひとまず用事を済ませてしまった方がいいか。
「あの、僕はカヌバレ王国の王家の血筋を探しているのです」
そう口にすると、途端に相手がこちらをにらんできた。一体……?
「どうしてだい?」
その雰囲気の変わりように思わず腰が引ける。でも、ここで負けてはだめだよね。今の僕は皇帝の名代を任された身、になっている。
「皇帝陛下が、探されているのです。
カヌバレ領の主権をそのお方に返すために」
「主権を……?
カヌバレを、再び王国として認めると、そういうことか?」
「はい」
「まって、待ってくれ。
意味が分からない。
そもそもそれが本当だったとして、どうして君が……?」
うん、そうなりますよね。その反応は至極まっとうだ。カーボ家の人とばれている僕は、つまりアルフェスラン王国の貴族だともばれている。こんな大事な話を、他国の僕が伝えに来ているって、まあ、おかしな話だよね。
「それは……」
「昨年、アルフェスラン王国とツーラルク皇国の間に友好関係が結ばれたことはご存じですよね?
その関係でアラミレーテ殿が手を貸してくださっているのです」
「だが、この話はこの国の問題だ。
他国の人間がかかわっていい話ではない」
そうだろう? そういうティシベーラ様に何も言えない。だって間違ったことは何も言っていないもの。どうしよう。
「ええ、そうですね。
ですが、皇国に差し掛かっている問題はすでに深刻。
一刻も早く解決への糸口を探る必要があります。
あなたもわかっているのでしょう?」
「その問題を引き起こしたのはそなたたちだろう?」
「ええ、そうです。
わかっていて、今まで行動に移せなかった我らの責。
ですが、あなた方は我らだけで来た場合、こうしてお会いいただけましたか?
それだけのことを、あなた方に強いてきたことは認めます」
深くため息をつくティシベーラ様。つまり、この人たちが言っていることは正しいということか。僕としては完全にシントに頼まれたから来ただけ、という。申し訳ない。
で、その結果がさっきの反応。シントも宝石眼という時点で皇国では特別視されているみたい。まあ、もちろん皇帝が僕らの存在を認めているということが大きいみたいだけれど。皇帝……、結局直接会うことなかったけれど、どんな人なんだろう。そっちの方はシントが任せてって言っていたから、正直詳しくは知らない。
そして、その神聖視うんぬんに関係して、かはわからないが、なぜか領主の人に話す役目を仰せつかってしまった。いやいやいや、一番年下の平団員に任せないで!? と思うのだが、自分たちでは恐らく話を聞いてもらえない、というのだ。なんで僕が……、とは思うが話を聞く前に突き返されても困る。そして、なぜか団長たちが話すと突き返されるという確信があるらしい。え、これやるしかないの?
多少居心地悪い思いをしながら、なんとかカヌバレ領に着く。まあ、意外にもスムーズに進むことができたからよかったけれど。そして、領主の館への道で思わず驚いた。あまりにも変わっていない。もっと開発とか進んでいると思ったんだけれど……。
「あちらがカヌバレ領領主の館です」
ここも、変わっていない……。
「アラミレーテ様?」
「あ、いえ」
まるで時が止まったかのような町、屋敷。最後の時に僕たちが過ごした領だ。懐かしい感覚が嬉しくはある。でも、どうして? の方が優る。
「行きましょう」
他の人に屋敷のものを呼び出してもらう。すでに話は通してあったのだろう、すぐに少女が出てきた。
「ようこそ、いらっしゃいました。
領主様のところへご案内いたしましょう」
こちらが誰か訪ねることもなく、少女は私たちを中に招いた。大きな領主の館なのに、あまりにも人気がない。一体? 案内の少女に詳細を聞くこともできずに、ひたすらついていく。そして、案内された先はとある部屋だった。
「あの、本当にこちらに?」
「はい」
ここは、寝室……? どうして……。
「領主様、皆様をお連れいたしました」
「ああ、ありがとう、ラナ」
一礼して出ていく少女。この方が、領主様?
「客人を満足にもてなすこともできなくてすまないね。
こんな姿で失礼する」
「あ、いいえ。
あの、あなたは?」
「私はカヌバレ領領主、ティシベーラ・カヌバレだ」
「……お初にお目にかかります、カヌバレ領主ティシベーラ様。
私はアラミレーテ・か……、アラミレーテと申します」
っと、危ない。カーボ家としては、特にカヌバレ家に対して何か思うところはない。でも、逆はわからないものね。
「くっく、やっとか。
そなたはカーボ家のものだろう?」
「え、あ、はい」
「その腕輪、聞き覚えがあるよ。
そうか、カーボ家ではそれがいまだに続いているんだね」
ま、まって、意味が分からない。どうしてこの腕輪のことを知っているの?
「ここで、また巡り合えるとは思わなかったよ。
それで、そんな君がここに何の用だい?」
「あの、どういう意味ですか?
どうして、カーボ家の僕がここにいることをやっと、と?」
「ああ、まあ、これは我が家に伝わる噂、のようなものだから気にしなくていい。
それよりも、あまり長話はできないんだ。
手短に頼む」
あまりに不思議な雰囲気の方。もっと話を聞いてみたい。でも、時間がないのも確かだ。ひとまず用事を済ませてしまった方がいいか。
「あの、僕はカヌバレ王国の王家の血筋を探しているのです」
そう口にすると、途端に相手がこちらをにらんできた。一体……?
「どうしてだい?」
その雰囲気の変わりように思わず腰が引ける。でも、ここで負けてはだめだよね。今の僕は皇帝の名代を任された身、になっている。
「皇帝陛下が、探されているのです。
カヌバレ領の主権をそのお方に返すために」
「主権を……?
カヌバレを、再び王国として認めると、そういうことか?」
「はい」
「まって、待ってくれ。
意味が分からない。
そもそもそれが本当だったとして、どうして君が……?」
うん、そうなりますよね。その反応は至極まっとうだ。カーボ家の人とばれている僕は、つまりアルフェスラン王国の貴族だともばれている。こんな大事な話を、他国の僕が伝えに来ているって、まあ、おかしな話だよね。
「それは……」
「昨年、アルフェスラン王国とツーラルク皇国の間に友好関係が結ばれたことはご存じですよね?
その関係でアラミレーテ殿が手を貸してくださっているのです」
「だが、この話はこの国の問題だ。
他国の人間がかかわっていい話ではない」
そうだろう? そういうティシベーラ様に何も言えない。だって間違ったことは何も言っていないもの。どうしよう。
「ええ、そうですね。
ですが、皇国に差し掛かっている問題はすでに深刻。
一刻も早く解決への糸口を探る必要があります。
あなたもわかっているのでしょう?」
「その問題を引き起こしたのはそなたたちだろう?」
「ええ、そうです。
わかっていて、今まで行動に移せなかった我らの責。
ですが、あなた方は我らだけで来た場合、こうしてお会いいただけましたか?
それだけのことを、あなた方に強いてきたことは認めます」
深くため息をつくティシベーラ様。つまり、この人たちが言っていることは正しいということか。僕としては完全にシントに頼まれたから来ただけ、という。申し訳ない。
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