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彼②

ご褒美🎁

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「ご褒美、ちょーだい」



珍しく、
彼が包み隠さずに
心の内を素直に求めてきた。



 
いつもなら、




この状況じゃ、、、
今相手は大丈夫かな、、、



もちろん人として
大前提の配慮ではあるのだが、
全てをすっ飛ばして
重い感じもなく
ただピュアな思いが届けられた。




 
「お疲れさま……」





「本番初日が終わって
明日もあるのに
身体、大丈夫……なの?
本当に………?」




暫く黙ったあとに
こう答えた。



 
「君がいない………」




「え……」



大きな会場を埋め尽くす彼の魅力に
彼の、こんな闇が、潜むと
誰が想像するのだろうか……





「行けなくて、
ごめんね………」
急いで謝った。
前から分かってたじゃない、
当日は行けないよ!って。。。



 
だから、"気持ち"

いつでもあなたの側にいるし
全力で応援してるし
だから、
"安心"して……




 
あんなに会場が、人で埋め尽くされても
彼の心の空虚は埋まらなかったらしい。




やはり人の気持ちと言うのは
人の数では
どうにも埋まらないモノがあるようだ。




"量"より"質"と言う表現が適切かどうか疑わしいが、
今の私にはこの言葉以外
思い浮かばない。




 
「ご褒美、
あげるから、
頑張っておいでね」




 
彼はようやく満たされたようだった。




ステージの上で
何よりも輝いて
彼の光が一層にも増して
集まった全ての人、
またその周りの周りの周りの人たちまで
巻き込むくらいの
"光"を放って
見せつけておいで




そう伝えた。




あなたはたくさんの人に
"光"をみんなの前で与える人なんだから。
私とコソコソ陰で会って
ヒッソリ生きる人ではないんだよ。




こんな人が
私を心の支えにしてくれてると言うのだから、めちゃくちゃに自分が誇らしく感じられた。



「お前は生きてて良かったんだよ」
ってね。。。


 




 
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