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「せーんせー!」「きゃはははっ」

わいわいした声がいつも通り響く、病院の庭。
ナースコールで呼んだ子も、もうすっかり元気になって先生たちと遊んでいる。

あの日落ちてた短剣は、直ぐにベッド横の引き出しへ入れた。
不思議と誰もそこを開けることはなく、バレてない。

どうして…この時代にあれがあるんだ……?

あの短剣があるということは、恐らく使うべきタイムリミットは次の満月の夜まで。

もし、使わなかったらーー


(僕っ……また、泡になっちゃうの………?)


ヒヤリと心臓が冷えて、カタカタ震えだす体を自分で思いっきり抱きしめた。

「凛くん、どうしたの? 体調悪い?」

すぐに異変に気付き、先生が近づいて来てくる。

〝ぁ……せ、んせ………っ〟

大きな手がゆっくりと伸びて来て、それにビクリと体が震えた。

「ぇ、凛…くん?」

〝ぁ、あのっ、ぼく先に部屋かえってます!〟

ジェスチャーで伝え、逃げるようにその場を去る。

(無理…無理だよっ)

先生を刺すことなんか…そんなのできっこない。

でも…もし刺さなかったら、僕はーーーー


〝~~っ、〟


答えの出ない堂々巡りを、延々と繰り返した。





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