創られたこの世界で、僕は我流の愛を囁く。

花町 シュガー

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「ちょっと」

ドンッと押される体。
カーテンの閉ざされた窓、埃まみれの床、誰も近寄らないような薄暗い部屋。
これはーー

(なんだっけ?)


「うわ、っ」


もっと強くどつかれ、よろけながら尻もちをついた。
目の前のチワワみたいな生徒たちに、冷たい表情で見下ろされる。

(チワ、ワ……)

そうだ思い出した。
これは、お仕置きという名のボーナスイベントだ。

攻略対象を1人に絞らず、色んな人を攻略してるときに発生するもの。
親衛隊かファンかに呼び出され、文字通りお仕置きされる。その時、現時点で1番好感度の高い攻略対象者が助けにきてくれるという仕組みだ。
助け出されるとき一気に好感度が上がるから、ちまちまイベント消化するよりも早くエンディングへ近づく。だからボーナス。

ーー要するに、僕はこのイベントだけは絶対避けなきゃいけなかったわけで。

(あぁー!馬鹿!!)

先輩と結ばれたいのに、これ進めてどうすんだ!
なんにもいいことないじゃん!!
まずい、非常にまずいぞ…どうにかして逃げ……

「逃げられると思ってるの?」

「悪いけど、助けなんて来ないから。諦めなよ」

ふぐぅぅ違うんです、助けは来るんです!
でも僕的にも絶対来てほしくないんです!!


「あのさ、君最近ウザいんだけど」


カツンとローファーの音を立て、1人近づいてきた。

「僕らの好きな人の周りチョロチョロして…目障りすぎてイラつきっぱなし」

「そうだよ。お前が目に映ると思ってんの? 無理無理、諦めなよ」

「眼中にすらないって、きっと」

あはははっ!と笑いだすチワワたち。
それでも視線を逸らさないでいると、吐き捨てるよう言葉をぶつけられた。

「そんなに諦めきれないんならさ、僕らが諦めさせてあげるよ」

パチンと鳴らされた指で入ってきたのは、ラグビー部ですかというような黒光りした筋肉をお持ちの方々。

「やっちゃって」「痛い目見ればわかるでしょ」

わぁ、これ二次元でよく見るやつだ。
ほんとに今目の前で起こってる、すごいなー。てかこれまじで高校生?

あっという間に筋肉集団に囲まれ、チワワたちが見えなくなってしまった。
その様子にまた笑われながら「汚されちゃいなよ」という台詞を最後にドアの閉まる音。


シィ…ンと静まり返った部屋には、僕とこいつらだけ。


「おい、こいつライトってやつじゃん」

「まじ!? 俺結構気になってたんだよな、上玉だし」

「ほんとだ、可愛い顔してんな」

伸ばされた手に、抵抗しても捕まって床に押し付けられる。
くそっ、こんなの逃げるなんて無理ゲーだし!

(仕方ない…今回は大人しく攻略対象に助けてもらうか)

奴らが対峙してる時しれっと逃げれば大丈夫だろう。
あー誰が来るだろうなぁ…僕的には多分オレリアかアレックかーー



ビリビリビリッ!!



「………え」


眼下で、まるで紙のように破かれた制服。
ひんやりとした床の触感が直に伝わってきて、一気に現実へ戻された。

(ちょっと…待って)

これ、現実じゃん。
しかもこの舞台R18だし。
僕、結構やばくない……?

「ーーひっ、」

「お、なんか活きがよくなったぞ」

「いいじゃんそっちのほうが燃えんだろ」

ジタバタしてもまったく通用しない。寧ろ楽しませてるだけ。

(やばっ、待って!!)

そうだよ、今の僕にとってここはリアルそのもの。
ーーなに、いつまでゲーム感覚でやってんだ。

脇腹を撫でられる感覚に、一気に身体が震えてくる。
どうしよう気持ち悪い。同性になんか襲われたことない。

「ゃ、やだ…やめ……っ」

「こいつヤベェな、まじそそるわ!」

「しかもどこもかしこもツルスベ!」

「ラッキーすぎんだろこれ、やばすぎ」

「乳首ピンク色なんですけど」

「いた、ぃ……っ!」

乳首とか、自分でもそんな触ったことない。こんな小さいのを喜ぶのとかBL界ぐらいじゃん。
けど、実際に今弄ばれて身体がビクつくのが止められない。

やだ、なにこれ、知らないこんなの、どうしよう、怖い。
押さえつけられる腕も痛くて、気持ち悪さと絡み涙が浮かんできて。

(せん、ぱっ)

嫌だ、グレイ先輩、グレイ先輩
先輩とじゃないと嫌なのに

なのに、こんなのーー

「おい、下も見てみようぜ。ココと一緒でピンク色かも」

「それやばくね? 俺真っ先に突っ込むわ」

「待てよ、その前に舐めまわさせろ。貴重だろ」

「処女なんだろうな~初っ端指何本入っかな~」

カチャカチャ外されるベルト。
必死に抵抗するけど、びくともしない逞しい腕たち。

「ゃ、やめ……っ」

嫌、嫌だもうやめて
お願い、そこは 先輩だけ

先輩 だけ にーー


ガチャ!


「ライト!!」



「っ!せん、ぱ……」



集団の隙間から見えたのは、灰色ではない 髪。

屈強な男たちを次々薙ぎ倒してこちらに向かってくるのは、正にメインキャラクターのそれ。
正しく…スーパーヒーローの、ようで……


「アレッ、ク……」


「ライト!無事k……くそっ!」


「来るのが遅かった」というように歪められる顔。
起こしてくれ、制服のブレザーを脱ぎふわりと掛けてくれた。

(ぁ……)

そのあたたかさと温もりが、直に伝わってきてーー


「っ、ふ…うぇ」


今、伸ばされてるこの手を取ったら好感度が跳ね上がる。
だから絶対に回避しなきゃいけない。わかってる

のに……


「う、えぇ…え……ひっ」


「ライト、もう大丈夫だから」


縋りつこうとする手が、止められない。

(こわ、かった)

……本当は、先輩が来てくれるのを心のどっかで期待してた。
こんなに同じ時を過ごして、仲良くなれて。
先輩も、もう攻略対象と同じように動けるんじゃないかって。
でもーー

(グレイ…せんぱい……っ)

やっぱり、この壁を越えるのは難しいのかな?
禁断を可能にするのは…無理なのかな?

ねぇ、先輩……


「~~っ!!うあぁぁあぁ、あぁぁあ!」


惨めさと、悲しさと、悔しさと、恐怖と

全部が全部 ごっちゃになって襲いかかってきて


しばらく、アレックに抱きしめられながら大粒の涙を溢したーー





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