Christmas Present.

花町 シュガー

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Christmas Present.

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「はぁぁー……」

断ったのに「家まで送る、から!」と食い下がるもさ男を連れて、近くの公園のブランコに座った。

「ぁあの」

「……隣、座れば?」

「は、はいぃ」

申し訳なさそうに座る、丸まった背中。

(ほんっと何考えてるかわかんない)

僕結構会話上手な方なのに……

「ねぇ、なんで最近僕のこと追いかけてたの?」

「ぁ、えぇっと……君のことが、好き…で、断られた、けど…諦めきれなくて……」

「はぁぁ……それ立派なストーカーだから。今後一切しないでくれる?」

「ご、ごめん…でも!き、今日は、危なかったし……」

「あんなの稀だよ稀っ!いつもはこんなことないの!!」

ほんっとどこで感覚鈍ったんだろ……
はっ、もしかしてもさ男に告白されてから? まさかそれが原因!?

ーーと、いうか


「大体、なんで僕のこと好きになったわけ?」


考えないようにしててもこいつのことが浮かんでしまって、結局悔しいことに忘れられなかった。

「ぁ、やっぱり…覚えてない、んだ……」

「? なに、何処かで会ったこある?」

「うん、君が…ぼ、僕の家を、訪ねてくれた」

「………ぇ、僕が、お前の家を?」

「そう。中3の…こ、これくらいの寒い、時期。

捨てられた犬を、持って……」


「ぁーー」



中学3年の冬。
帰り道で、段ボールに入った子犬を見つけた。

(わぁ出会っちゃった……)

段ボールの〝拾って下さい〟の文字からして、もう捨てた人は戻ってこない。
道行く人もみんな見て見ぬ振り。

僕も何事もなく立ち去ろうと思ったんだけど……でも、出来なくて。

(あぁもうっ!)

巻いてたふわふわの可愛いマフラーで震える子犬を包み、ガバッと持ち上げた。
それから、ありきたりではあるけど近所の家を一軒一軒訪ねて回って。

(そりゃ拾ってくれないよね)

ドラマとかでよくある光景。
けど、実際はやっぱりどこも冷たい。
まぁ当たり前だろうけど……

辺りは暗くなってきて。
いよいよ寒さで震えてきた指で次の家のインターホンを押すと、出てきたのは他校の制服の子。

『こんばんは!ぁの、犬飼いませんかっ!?』

『……ぇ』

(あ、なんかいけるかも)

髪がボサボサで根暗そうな分厚い眼鏡、小さな声。
こういうタイプは押しに弱い。

『ほら見てっ!この子こんなに可愛いんだよ!!』

『ほ、本当だ…可愛い……き、君の子、なの?』

『んーん違う、捨てられてたのを道端で拾っちゃって……でもすごく人懐っこいんだよ!抱っこしてみてっ!!』

近寄ってくれたその子の腕を取って、半端強引に抱かせてみる。

『わ…ぁ、あったかい……!』

『でしょっ!? あったかいよねぇ!あと口のとこ指持ってってみて……ほら舐めたっ!可愛いよねっ!』

『うん、そ、だね』

『どう? 飼ってくれない…かな……?』

『…君のとこは、駄目……なの?』

『……うん、うちは駄目』

育ててもらってるのに、これ以上お母さんに負担は掛けれない。
わがままは言わない、そう決めてる。

『そ、か……じゃ、いいよ。うちで飼う』

『っ!ほんと!?』

『ん。か、母さんも父さんも動物好き、だし…多分ばあちゃんも、喜ぶ』

『そっか……そっかそっか!
良かったなお前っ。もう1人じゃないね!!』

見上げてくる子犬の頭をよしよし撫でて『それじゃありがと!』と手を振る……と。

『ぁ、ぁあの!』

『? なぁに?』

『どうして、犬を拾っ、た…の……?』


〝どうして〟


『………ひとりぼっちは、寂しいから』


『え?』

『…ぁ、だ、だってそこに命が落ちてるんだよ!? 見て見ぬ振りする方がおかしいでしょ!これじょーしきだから!』

もしかして……もしか、したら

〝自分もあぁなってたかも〟なんて……思ってしまって。

(まだ僕は、捨てられてないけど)

お母さんは『高校までは行っときな』って言ってくれてる
から、高校まではきっと大丈夫な…はず。
その後はちゃんと仕事に就けるように、路頭に迷わないように頑張らないと。

『……ね、君、もしかして、ひとrーー』

『その子の名前、どうするの?』

『えっ』

『名前だよ名前!どうするの? 家族になるんだよ!?』

何とか話をそらして、にこりと笑ってみせる。

『こんなに可愛いんだからいい名前付けてあげなきゃっ!ねぇ何にするの?』

『な、まえ…えぇっ、と…… じゃぁ、〝ムーちゃん〟』

『ムーちゃん? 何で?』

『僕の名前がオサム、だから…い、一音取って……』

『それでムーちゃん? あははっ、めっちゃベタだね!』

暫く笑って、少しだけオサム君と話をして。
『じゃぁ、幸せになりなよムーちゃんっ!』と今度こそ手を振って走り去った僕を……確か子犬片手に見送ってくれた、のはーー



「お前だったの!?!?」

「そう、ぼ、僕…オサム。古張 理(オサム)」

あの時の根暗くんが……まさかのこいつ。
ちょっと待って背伸びすぎだよねっ!? ってかあんな短時間の事今まで覚えてたの!?

その後は、高校の入学式でたまたま僕を見つけて、それから視線で追ってたら好きになってた……と。

(すーごいベタな展開)

こんな事現実に起きるんだぁ。
見られてるのも気づかなかったや。まぁ僕のこと見る人いっぱいいるしね、ちゃんと意識しないとわかんないか。

「ムーちゃんは元気?」

「ん、元気。大きく、なったよ」

「そっかぁ!良かった」

茶色の毛だったっけ? 確か大人になったらモコモコになるやつ。
いいなぁいいなぁ、可愛いだろうなぁ。

「会いに、来る…?」

「……いいや、辞めとく」

ブランコをキコキコ揺らして、真っ黒い空を見上げる。

本当は見に行きたいけど……行きたくない。
だって幸せそうなあの子の姿を見たら、きっとーー


「今も、ひ、1人……なの?」


「………え?」


ポツリと聞こえた声に、ブランコを止めた。

「初めて出会った時も、そうだった……さ、寂しそうで、消えそうで」

「なっ、もうあの時とは全然違うでしょっ!? 高校からスマホも買ってもらったし、お気に入りもいっぱいいて」

「それでも!ぼ、僕が見てる君は…誰と一緒でも、い、いつも、寂しそうだ……」

「はぁ? 馬鹿じゃないの? 僕の周りいっぱい人いるんだよ? なのに寂しそうに見えるとか、その眼鏡合ってる? ちゃんと見えてるのっ??」

「ちがっ、そういうの、じゃ…なくて……

〝心〟が、寂しそう……で………」


「ーーっ」


な、

何言ってんのこいつ?

(意味…わかんないんだけど)

心とか目に見えないじゃん、僕だって自分の心見たことないし。
え、頭逝っちゃってるのかな? 宇宙人なのかなっ??


「……帰る」

「ぁ、送っtーー」

「いいっ!!」

ガチャン!と鎖の音を立てて立ち上がり、背を向けた。

「金輪際僕に近づかないで。さっき言ったよね? ストーカーはやめてって。これ以上したら許さないから」

「っ、わか…た……でも!僕はーー」

「大体っ!僕が童貞嫌いなの知らないの!?
お前、見るからに童貞じゃんっ。女の子も抱いたこと無いような顔してさ、何様?

そんなんで、僕のこと気持ちくできるわけ……?」


「………っ」


「……はっ、だっさ」


思ったより乾いた、自分の声。
そのまま、ふらりと歩き出す。
もうあいつが追ってくる気配はなくて、歩いてた足が…だんだん早くなってきて。


『ちがっ、そういうのじゃ…なくて……

〝心〟が、寂しそう……で………』


(馬鹿馬鹿しい)

助けてもらったお礼にと思ったけど、やっぱりもさ男と話なんかするんじゃなかった。


「ーーっ!」


……あぁ、でもなんでかな?

全く意味がわからないのに


あいつにかけられた言葉が……痛い。









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