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第2章 帰れない、帰らない
第5話*
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「ん……はぁっ」
広いお風呂場に、僕の声と二人の息遣いが響く。向かい合って立ち、お互いを洗っている。彼の左手の指が、耳の後ろを這い、うなじを悩まし気に行き来する。右手は胸を円を描くように洗い、尖ったところをこりこりと刺激される。貪るようにキスをしながら、相手の反応を楽しんで……ああ、そうだ……今日は僕が、あれをやってみたい。
「ラトゥリオ様……足、洗いますね」
しゃがんで、泡を伸ばしていく。お目当てのモノにも、たっぷりと泡を纏わせてそっと触れる。
「レ、オ……」
「ふふ、流しますね」
手でお湯をかけ、さっぱりしたところで、硬く兆したモノに手を添えて見上げた。彼の瞳は、欲でギラリと光っている。そういえば勢いでこうなって、まだ肝心のことを言ってなかったけど、僕たちの関係は確実に一歩前進した。何よりもまず、お互いが欲しいから行為に及んでいるんだ。それを抑えず教えてくれるのが嬉しい。
口に含むと、その途端に大きさが増した気がした。感じてくれてるのかな。何度もしてもらったように、ここを舐めて……こっちも……。
「はぁっ……あ、ぁっ」
喘ぎ声が、快楽を得ていることを伝える。愛しい。僕の動きに、どんどん昂っているのが分かる。僕自身も、興奮して想いが高まっていく。好き、あなたが好き……。
「レオ、もうっ……あぁっ……」
「んっ」
熱いものが口の中いっぱいに広がる。一滴も零さないように吸い取った。体内に取り込んだ、彼の欲。下で受け止める時と同じで、この行為も僕を満たしてくれる。独占欲かな。僕のだーっ!って、強烈に思う。
「はぁ……。レオ、水を飲みなさい」
「はい」
肩で息をする彼は、苦悩から解き放たれ、晴れやかな表情だ。冷たい水を体中に染み込ませ、立ち上がって抱きついた。
「好きです、ラトゥリオ様」
「レオ……」
「僕、臆病でした。悩ませてごめんなさい。あと、僕のためにたくさん考えてくれて、ありがとうございます」
「お前を愛している、と……言ってもよいのだな」
「はい。いっぱい、聞きたいです」
「ああ。愛している……愛してる」
湯舟の中で向かい合って、彼に跨り、幸福に包まれて繋がった。ゆっくりゆっくり、お互いの熱い体を感じた。迷いを捨てたせいか、より深い部分で結ばれていると思えた。
久しぶりのベッドに移ってからも、何度も求め合った。箍が外れたように欲をぶつけられ、溶け合って本当にひとつになっているんじゃないかとさえ感じられた。
汗を浮かべた彼が、満足のため息とともに倒れ込んできたのを受け止め、背中を撫でながら意識を手放した。
目が覚めたのは二時間後。明け方というにはまだ早い時間。僕は長い黒髪を握りしめて眠っていたらしい。微笑む彼と、目が合った。
「あ……」
また子供みたいなことをして、恥ずかしい。手を放そうとすると、彼の手がそっと重ねられた。
「前から思ってたんですけど、これって、すぐ乾くのは魔力も関係あります?」
どうでもいいだろ、もっとロマンチックなこと言えよっ、と頭の中で別の僕が騒ぐ。ラトゥリオ様は、僕が子供っぽいところを見せるとフッと笑うんだ。かっこよすぎる。
「意識して使っているわけではないな。子供の頃からだ」
「便利ですよねぇ」
何が便利って、お風呂からベッドになだれ込んでもいいっていう。初対面の時、川に落ちたのにズボンがするっと脱げるくらい乾いてたのも、こういうことだったんだな。彼はクスクス笑って僕を抱き寄せた。まだ裸だけど、体はさらっとしてる。
「お風呂、入れてくれたんですね。ありがとうございます」
「一度起きたが、覚えていないか」
「え、お風呂で?」
「ああ。掻き出す時にな……おっと」
言葉にならない羞恥に、枕を取って振り回して抗議した。
「ハハッ、元気で戻ってくれて何よりだ」
「ラトゥリオ様が浮かれてる……」
「俺も一人の人間だ……一人の男に過ぎない」
「ん、ぅ」
前触れなく奪われる唇。俺のものだ、って確認するみたいに。僕も、あなたが大切だよってキスで伝える。
小さなリップ音とともに離れ、微笑み合う。彼は毛布を僕の肩まで引き上げて、自分も潜り込んだ。触れ合う手のひらが温かい。
「アントスのことを話してもよいか」
――レオはアントスとは違う。
中庭で聞いた言葉。話してくれるというのなら……少し怖いけど、聞きたい。頷いて、指を絡めた。
「あれは、そう……俺たちが、今のお前より少しばかり若かった頃の話だ」
聞かせてくれたのは、この上なく切ない恋の物語だった。
広いお風呂場に、僕の声と二人の息遣いが響く。向かい合って立ち、お互いを洗っている。彼の左手の指が、耳の後ろを這い、うなじを悩まし気に行き来する。右手は胸を円を描くように洗い、尖ったところをこりこりと刺激される。貪るようにキスをしながら、相手の反応を楽しんで……ああ、そうだ……今日は僕が、あれをやってみたい。
「ラトゥリオ様……足、洗いますね」
しゃがんで、泡を伸ばしていく。お目当てのモノにも、たっぷりと泡を纏わせてそっと触れる。
「レ、オ……」
「ふふ、流しますね」
手でお湯をかけ、さっぱりしたところで、硬く兆したモノに手を添えて見上げた。彼の瞳は、欲でギラリと光っている。そういえば勢いでこうなって、まだ肝心のことを言ってなかったけど、僕たちの関係は確実に一歩前進した。何よりもまず、お互いが欲しいから行為に及んでいるんだ。それを抑えず教えてくれるのが嬉しい。
口に含むと、その途端に大きさが増した気がした。感じてくれてるのかな。何度もしてもらったように、ここを舐めて……こっちも……。
「はぁっ……あ、ぁっ」
喘ぎ声が、快楽を得ていることを伝える。愛しい。僕の動きに、どんどん昂っているのが分かる。僕自身も、興奮して想いが高まっていく。好き、あなたが好き……。
「レオ、もうっ……あぁっ……」
「んっ」
熱いものが口の中いっぱいに広がる。一滴も零さないように吸い取った。体内に取り込んだ、彼の欲。下で受け止める時と同じで、この行為も僕を満たしてくれる。独占欲かな。僕のだーっ!って、強烈に思う。
「はぁ……。レオ、水を飲みなさい」
「はい」
肩で息をする彼は、苦悩から解き放たれ、晴れやかな表情だ。冷たい水を体中に染み込ませ、立ち上がって抱きついた。
「好きです、ラトゥリオ様」
「レオ……」
「僕、臆病でした。悩ませてごめんなさい。あと、僕のためにたくさん考えてくれて、ありがとうございます」
「お前を愛している、と……言ってもよいのだな」
「はい。いっぱい、聞きたいです」
「ああ。愛している……愛してる」
湯舟の中で向かい合って、彼に跨り、幸福に包まれて繋がった。ゆっくりゆっくり、お互いの熱い体を感じた。迷いを捨てたせいか、より深い部分で結ばれていると思えた。
久しぶりのベッドに移ってからも、何度も求め合った。箍が外れたように欲をぶつけられ、溶け合って本当にひとつになっているんじゃないかとさえ感じられた。
汗を浮かべた彼が、満足のため息とともに倒れ込んできたのを受け止め、背中を撫でながら意識を手放した。
目が覚めたのは二時間後。明け方というにはまだ早い時間。僕は長い黒髪を握りしめて眠っていたらしい。微笑む彼と、目が合った。
「あ……」
また子供みたいなことをして、恥ずかしい。手を放そうとすると、彼の手がそっと重ねられた。
「前から思ってたんですけど、これって、すぐ乾くのは魔力も関係あります?」
どうでもいいだろ、もっとロマンチックなこと言えよっ、と頭の中で別の僕が騒ぐ。ラトゥリオ様は、僕が子供っぽいところを見せるとフッと笑うんだ。かっこよすぎる。
「意識して使っているわけではないな。子供の頃からだ」
「便利ですよねぇ」
何が便利って、お風呂からベッドになだれ込んでもいいっていう。初対面の時、川に落ちたのにズボンがするっと脱げるくらい乾いてたのも、こういうことだったんだな。彼はクスクス笑って僕を抱き寄せた。まだ裸だけど、体はさらっとしてる。
「お風呂、入れてくれたんですね。ありがとうございます」
「一度起きたが、覚えていないか」
「え、お風呂で?」
「ああ。掻き出す時にな……おっと」
言葉にならない羞恥に、枕を取って振り回して抗議した。
「ハハッ、元気で戻ってくれて何よりだ」
「ラトゥリオ様が浮かれてる……」
「俺も一人の人間だ……一人の男に過ぎない」
「ん、ぅ」
前触れなく奪われる唇。俺のものだ、って確認するみたいに。僕も、あなたが大切だよってキスで伝える。
小さなリップ音とともに離れ、微笑み合う。彼は毛布を僕の肩まで引き上げて、自分も潜り込んだ。触れ合う手のひらが温かい。
「アントスのことを話してもよいか」
――レオはアントスとは違う。
中庭で聞いた言葉。話してくれるというのなら……少し怖いけど、聞きたい。頷いて、指を絡めた。
「あれは、そう……俺たちが、今のお前より少しばかり若かった頃の話だ」
聞かせてくれたのは、この上なく切ない恋の物語だった。
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