終わらない夜-溺愛の果てに-

花宮守

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第3話 あなただから*

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 海音の体はしなやかで、瑞々しい。潮の香りがするのに、どこに口づけても甘かった。目を閉じ、熱い息を漏らしながら雅彦に応えている。
 はじめからひとつになれるとは思っていない。今日は自分が触れることに慣れてくれればいい……逸る気持ちを抑え、自分に言い聞かせる。
 胸の突起をかわいがり、脇の下から脇腹へと軽くさすっていく。太腿、膝の裏……普段、人に触れさせることのない場所への羽のような刺激に、恥ずかしがるのがかわいらしい。
「ンッ、そんな、とこ……」
「そうだ……君はここでも気持ちよくなれるんだよ。いい子だ……」
 彼の体のすべてを性感帯にしてしまいたい。できるはずだ。雅彦の心に、抱いたことのなかった種類の欲望が芽生えた。
 指の股をなぞり、「目を開けて」と囁く。
「はぁっ……雅彦さん……」
「かわいいよ、海音。ん? どうした……恥ずかしいのかな?」
「ん……何か、変、これ……あと、じっと見られて恥ずかしい……」
「ふむ、なぜだろうな? 私が今触っているのは君の指なのに」
「うぅ……」
 顔を真っ赤にして俯く姿に、欲望が燃え上がる。
「横を向いて、私と向かい合せになろう……そうだ」
「あ……」
 雅彦の怒張が、海音のそれと擦れ合う。より密着するように抱きしめ、キスをした。無意識なのか、腰をくねらせているのがこの上なく魅惑的だ。指先を口に入れてみると、それも夢中で舐めてくる。ゾクゾクと、背筋を駆け上がってくるものがあった。快感、支配欲……執着。
「そのまま、感じていなさい……」
 臀部を撫で回し、彼の唾液で濡れた指を、奥へと忍ばせていく。双丘の間へ割って入ると、しがみついてくる腕の力が強くなった。
「大丈夫だ……力を抜いて」
「ん……恥ずかしい……」
 消え入りそうな声は、もっと、と言っているようなものだ。未知の領域へと、指を進めていく。
「ここが行き止まりのようだ。今はまだ……な」
「まさ、ひこさんっ……」
 硬く窄まった蕾。海音は、おそらくはこれ以上ない羞恥心に必死に堪えている。
(こんなものではない……君は何もかも、私に見せてくれなくてはいけないよ)
 縁を、円を描くようになぞる。彼は、その動きに合わせるように息をしている。
「ん……はぁ、ん……」
「どんな感じがする? 教えてくれ」
 傷つけないように指の腹を押し込むようにすると、ほぅ、と甘い吐息。うっとりしているようにしか見えない。
「ン……恥ずかしくて死にそうだけど……あなただから、その……」
「うん?」
 わざと、指を止めて続きを促す。
「あの、もっと……触って、ほしい」
 その言葉に、全身に震えるような悦びが走った。指の動きを再開し、股間のものを意識して擦り合わせる。
「ありがとう……嬉しいよ」
「はぁ、はぁ……あっ……」
 昇り詰めていく姿を人に見せるなど、それこそこの子は初めてだろう。自分との行為だからこれほど気持ちよくなれるのだと、教え込まなくてはならない。
(君との行為だから私も興奮しているのだと……わかってもらわなくてはな)
 よみがえった性欲。生きるためのエネルギー。この世はまだ美しいのだと、生きる価値はあるのだと、この子だけが教えてくれる。
「海音、私はこれからは君のために生きよう……」
 上ずった声で、想いを伝える。限界が近い。
「え……あ、あぁっ……」
 驚いたような目は、ほんの一瞬。絶頂の渦に巻かれ、彼の体は激しく波打った。二人の欲が飛散し、混ざり合う。縋りついてくる体を抱きしめ、労り、「愛している」と告白した。

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