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第3章 王子
第5話
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飲み物が運ばれてきて、お料理も順番に出てきた。彼は話題が豊富で、私が子供の頃に好きだったおとぎ話をいくつか挙げると、有名な場面をドイツ語で再現してくれた。仕事のことはあえて避け、私とお母さんを楽しませることを何よりも優先している。姿だけでなく、中身も完璧な王子様。こんな人がなぜ、私に会いたがっていたんだろう。
かわいいな、と思ったのは食後のコーヒー。小さなカップに注がれたのは濃い目のものだったけど、それにしてもそこまで、というくらいの量のミルクを足して、零れそうになった。
「お恥ずかしい。どうもこればかりは」
苦笑いをしたのに対して、微笑んで首を横に振った。魔法の国でのランチタイムは、もうじき終わり。時を惜しむように、お互いの目を見ながらコーヒーを飲んだ。
三人のカップが空になると、お母さんが思い出したように言った。
「そういえば、このホテルの散歩道は上の展望台に通じているんですって。衣純、どう? 二人で行ってきたら?」
「え? お母さんも行こうよ」
「何言ってるの、この子は。あとは若いお二人で、っていうやつよ」
「は?」
「では、衣純さん。お手をどうぞ」
「え?」
わけがわからなくても、王子にそう言われると従ってしまう。この部屋からは、散歩道へ直接出ることができる。無駄のない導線。
さすがに気付いた。外へ足を一歩踏み出しながら、後ろへ向かって叫んだ。
「お母さん、これお見合いじゃないの!?」
「だから、かわいくしてきてって言ったでしょ」
「そうだけどっ」
聞いてないーっ!
かわいいな、と思ったのは食後のコーヒー。小さなカップに注がれたのは濃い目のものだったけど、それにしてもそこまで、というくらいの量のミルクを足して、零れそうになった。
「お恥ずかしい。どうもこればかりは」
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三人のカップが空になると、お母さんが思い出したように言った。
「そういえば、このホテルの散歩道は上の展望台に通じているんですって。衣純、どう? 二人で行ってきたら?」
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