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第六話 嵐の後
第六話 嵐の後⑤
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唐突に目の前で九十度に上半身を倒し挨拶され、流星が面食らっている。
「えっと、この人もヤクザの人? 頭って……何だっけ?」
困惑した様子で俺に苦笑する。俺はミネラルウォーターを一本開けて、流星に手渡した。病院に行く前に、今まで隠してきたことを全て話す必要があるだろう。
「少し流星と話をしてから行く。桜庭と下で待ってろ」
「はい! 失礼します!」
林田はまた深々と頭を下げて部屋を出て行った。静かになった部屋で、流星が水を一口飲む。俺が話し出すのを待っているのだろう。
「昨日会って話すつもりだったんだ。こんなことになるとは思わなかったが」
「……うん、俺も全然意味分かんなかった」
伊玖磨の動きを捉えたのは纐纈君から連絡を貰った後、ソープ店に情報収集に向かったところだった。林田が店長から怪しい客の情報を得ていて、その客に嬢を経由して連絡を取った。
薬を買いたいと偽ったところ、男が運良く売人だったこともあり、伊玖磨の島に近い、辻倉組とは友好関係にある九条会の島のクラブの地下倉庫を指定された。そこに向かっているところで、纐纈君からその付近で車に巻かれたという連絡を受け、急行したのだ。
ずっと藤本さんが伊玖磨の動きを怪しんで調べていたにも関わらず尻尾を掴めなかったのは、辻倉組の島で薬の直接取引を行っていなかったことにあったのだと今は分かる。伊玖磨は頭の切れる男だが、しかし、最後の最後で詰めが甘かった。想定外の親父の実子の存在が、奴を追い詰めたのだろう。
「俺は辻倉組組長、辻倉一治の息子で、現若頭だ。しかし俺は妻の連れ子で、親父とは血の繋がりはない。俺の父親は辻倉組と友好関係にあった勝海組組長、旭海舟。三十三年前、辻倉組の跡目争いの仲裁に入って命を落とした」
流星が俺の方に顔を向ける。俺は気遣うような表情を浮かべる流星に大丈夫という気持ちを込めて笑みを返した。
「流星は親父とクラブの歌手だった女性との間に生まれた子だ。親父は俺の父親が抗争で死んだことを悔やんでたんだろう。母親が亡くなったことでリュウを施設から引き取ったが、リュウに火の粉が降りかかるのを憂いて、俺に実子の存在を隠し通すように命じた」
「……それで、兄ちゃんは俺を育てることになったってこと?」
「ああ、そうだな」
と、流星が視線を落としたので、言い方が悪かったと思い、流星の頭にぽんと手を置いた。
「命じられたのは確かだが、俺は俺の意志で決めた。父親の血が流れ、親父も母親も泣いていた。同じような悲劇を繰り返したくなかった。そして初めてリュウに会った時に、無邪気に笑うお前を見た時に、心に誓った。命を懸けてリュウを守る、と」
「何より可愛かったからな」と微笑み掛けると、流星は嬉しそうに笑った。
「しかし実際はリュウを守るどころか、逆に命を助けられちまったが」
「そんなことねえよ! 兄ちゃんが来てくれなかったら俺、今頃ヤクキメられて輪姦されてたし」
聞き流せない言葉に、思わず「あ?」と眉を顰める。
「あーいや、伊玖磨がそんなこと言ってたってだけで、実際どうかは知らねえけど」
「えっと、この人もヤクザの人? 頭って……何だっけ?」
困惑した様子で俺に苦笑する。俺はミネラルウォーターを一本開けて、流星に手渡した。病院に行く前に、今まで隠してきたことを全て話す必要があるだろう。
「少し流星と話をしてから行く。桜庭と下で待ってろ」
「はい! 失礼します!」
林田はまた深々と頭を下げて部屋を出て行った。静かになった部屋で、流星が水を一口飲む。俺が話し出すのを待っているのだろう。
「昨日会って話すつもりだったんだ。こんなことになるとは思わなかったが」
「……うん、俺も全然意味分かんなかった」
伊玖磨の動きを捉えたのは纐纈君から連絡を貰った後、ソープ店に情報収集に向かったところだった。林田が店長から怪しい客の情報を得ていて、その客に嬢を経由して連絡を取った。
薬を買いたいと偽ったところ、男が運良く売人だったこともあり、伊玖磨の島に近い、辻倉組とは友好関係にある九条会の島のクラブの地下倉庫を指定された。そこに向かっているところで、纐纈君からその付近で車に巻かれたという連絡を受け、急行したのだ。
ずっと藤本さんが伊玖磨の動きを怪しんで調べていたにも関わらず尻尾を掴めなかったのは、辻倉組の島で薬の直接取引を行っていなかったことにあったのだと今は分かる。伊玖磨は頭の切れる男だが、しかし、最後の最後で詰めが甘かった。想定外の親父の実子の存在が、奴を追い詰めたのだろう。
「俺は辻倉組組長、辻倉一治の息子で、現若頭だ。しかし俺は妻の連れ子で、親父とは血の繋がりはない。俺の父親は辻倉組と友好関係にあった勝海組組長、旭海舟。三十三年前、辻倉組の跡目争いの仲裁に入って命を落とした」
流星が俺の方に顔を向ける。俺は気遣うような表情を浮かべる流星に大丈夫という気持ちを込めて笑みを返した。
「流星は親父とクラブの歌手だった女性との間に生まれた子だ。親父は俺の父親が抗争で死んだことを悔やんでたんだろう。母親が亡くなったことでリュウを施設から引き取ったが、リュウに火の粉が降りかかるのを憂いて、俺に実子の存在を隠し通すように命じた」
「……それで、兄ちゃんは俺を育てることになったってこと?」
「ああ、そうだな」
と、流星が視線を落としたので、言い方が悪かったと思い、流星の頭にぽんと手を置いた。
「命じられたのは確かだが、俺は俺の意志で決めた。父親の血が流れ、親父も母親も泣いていた。同じような悲劇を繰り返したくなかった。そして初めてリュウに会った時に、無邪気に笑うお前を見た時に、心に誓った。命を懸けてリュウを守る、と」
「何より可愛かったからな」と微笑み掛けると、流星は嬉しそうに笑った。
「しかし実際はリュウを守るどころか、逆に命を助けられちまったが」
「そんなことねえよ! 兄ちゃんが来てくれなかったら俺、今頃ヤクキメられて輪姦されてたし」
聞き流せない言葉に、思わず「あ?」と眉を顰める。
「あーいや、伊玖磨がそんなこと言ってたってだけで、実際どうかは知らねえけど」
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