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観月脩編
第二話 出逢い③
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「シュウじゃん。ここ座っていい?」
特に同意など求めてないくせに、と舌打ちをする。その証拠にカウンター席に座っている俺の隣の椅子に即座に座った。
背が高く鍛えられた身体に短髪という、所謂ゲイ受けするタイプの男は、ケンという名前の売り専をしている奴だ。この辺りに来るようになった頃からの知り合いで、その頃ケンは未成年だった。
しかしその時からインターネットを介して商売をしていたが、今年十八になってようやく店に入った。最近はゲイビデオの方にも出演するようになったらしい。
「その様子だと、もしかして今日ボウズ?」
「うっせ。今日金持ってそうなおっさん居ねえんだよ」
グラスの中の氷をからからと鳴らして、ウィスキーを口に含む。あと二口くらいで無くなってしまいそうだ。
「だって今日四十オーバーの人って別のバーでイベントやってるから、そっちに行ってるっしょ。そのせいで俺金曜なのに休みだもん」
「……なんだよそれ。知ってたら今日来なかったっつうの」
一時間以上酒一杯で粘っていたが、これできっぱりと諦めて帰る気になれる。それほど欲求不満という訳でもないし。
「じゃ、俺としようよ」
「は?」
期待するようにケンは頬杖をついて俺の顔を覗き見る。まだあどけない少年の匂いを纏っていた一年前、普段金貰ってセックスしてる奴が俺に「ホテル代を出しても良いよ」と言ってきたのが不思議で、誘いに応じたことがあった。
が、十数分後にはその時の判断を後悔することになる。
ケンがバリタチだったために、俺はまだほとんど経験の無かったネコをやることになったが、ケンは見たことも無い大きさの兵器を股の間に隠していたのだ。
ベッドに押し倒されるまでそれに気付かなかったために、拒否する間もなく突っ込まれて、死ぬような思いをした。昇天の比喩では無く、文字通りの意味で。
「絶対嫌だ。死にたくない」
思い出すだけで気が滅入る。あの後数日鈍痛が襲って授業を受けるのにも、バイトするにも支障が出た。無論夜の街で遊ぶ余裕などある訳が無かった。
「えー、優しくするよ?」
「そういう問題じゃねえんだよ、てめえのチンコは……!」
「皆気持ちいいって言ってくれるけどなあ。一年前より確実に上手くなってるしさ、試してみって。俺もシュウの使われてないケツの具合確かめたいし」
お前の客にはドМの豚野郎しか居ねえだろうが、と口から出そうになった時、バーのドアが開いて、反射的にそちらに視線を向けた。瞬間、俺は慌ててドアの方に背を向けて縮こまりながら椅子に座った。
俺の様子を見て、入ってきた男と俺を交互に見て、「どうしたの? 知り合い?」とケンは顔を寄せて小声で話す。
まさか、そんな訳はないと思った。チェーン付きの金縁眼鏡、黒のスーツに白いシャツといういで立ちの長身の中年の紳士。
鳥海先生だった。流石にネクタイは外しているが、この場に不釣り合いなことには違いなく、悪目立ちしている。
「……あの人、大学の先生。バレたらやばい」
もう二十歳過ぎたし酒のことは問題ない。あとは俺の爛れた生活がバレなければ、大学を辞めさせられたりはしないだろう。
「マジか。でもここに来るってことはゲイでしょ? バレてもお互い様じゃね?」
言われてみれば、その通りだ。一瞬頭が真っ白になったが、冷静に考えれば同性愛者であることが分かったからと言って、俺に何か不都合があるかと言えば思い付かない。
寧ろ社会的立場のある鳥海先生の方が、アウティングによるリスクは高いだろう。
「でも先生さん、結構シュウの好みじゃん? すらっとした長身の人が好きなんでしょ?」
「……いや、でもあの人多分ノンケだぞ」
大体のゲイなら、話してみれば察しがつく。話し方や纏っている雰囲気、俺を見る目で、何となく分かるものなのだ。
しかし、先生からは一切何も感じなかった。とすれば、ますます俺の存在を知られるわけにはいかない。
特に同意など求めてないくせに、と舌打ちをする。その証拠にカウンター席に座っている俺の隣の椅子に即座に座った。
背が高く鍛えられた身体に短髪という、所謂ゲイ受けするタイプの男は、ケンという名前の売り専をしている奴だ。この辺りに来るようになった頃からの知り合いで、その頃ケンは未成年だった。
しかしその時からインターネットを介して商売をしていたが、今年十八になってようやく店に入った。最近はゲイビデオの方にも出演するようになったらしい。
「その様子だと、もしかして今日ボウズ?」
「うっせ。今日金持ってそうなおっさん居ねえんだよ」
グラスの中の氷をからからと鳴らして、ウィスキーを口に含む。あと二口くらいで無くなってしまいそうだ。
「だって今日四十オーバーの人って別のバーでイベントやってるから、そっちに行ってるっしょ。そのせいで俺金曜なのに休みだもん」
「……なんだよそれ。知ってたら今日来なかったっつうの」
一時間以上酒一杯で粘っていたが、これできっぱりと諦めて帰る気になれる。それほど欲求不満という訳でもないし。
「じゃ、俺としようよ」
「は?」
期待するようにケンは頬杖をついて俺の顔を覗き見る。まだあどけない少年の匂いを纏っていた一年前、普段金貰ってセックスしてる奴が俺に「ホテル代を出しても良いよ」と言ってきたのが不思議で、誘いに応じたことがあった。
が、十数分後にはその時の判断を後悔することになる。
ケンがバリタチだったために、俺はまだほとんど経験の無かったネコをやることになったが、ケンは見たことも無い大きさの兵器を股の間に隠していたのだ。
ベッドに押し倒されるまでそれに気付かなかったために、拒否する間もなく突っ込まれて、死ぬような思いをした。昇天の比喩では無く、文字通りの意味で。
「絶対嫌だ。死にたくない」
思い出すだけで気が滅入る。あの後数日鈍痛が襲って授業を受けるのにも、バイトするにも支障が出た。無論夜の街で遊ぶ余裕などある訳が無かった。
「えー、優しくするよ?」
「そういう問題じゃねえんだよ、てめえのチンコは……!」
「皆気持ちいいって言ってくれるけどなあ。一年前より確実に上手くなってるしさ、試してみって。俺もシュウの使われてないケツの具合確かめたいし」
お前の客にはドМの豚野郎しか居ねえだろうが、と口から出そうになった時、バーのドアが開いて、反射的にそちらに視線を向けた。瞬間、俺は慌ててドアの方に背を向けて縮こまりながら椅子に座った。
俺の様子を見て、入ってきた男と俺を交互に見て、「どうしたの? 知り合い?」とケンは顔を寄せて小声で話す。
まさか、そんな訳はないと思った。チェーン付きの金縁眼鏡、黒のスーツに白いシャツといういで立ちの長身の中年の紳士。
鳥海先生だった。流石にネクタイは外しているが、この場に不釣り合いなことには違いなく、悪目立ちしている。
「……あの人、大学の先生。バレたらやばい」
もう二十歳過ぎたし酒のことは問題ない。あとは俺の爛れた生活がバレなければ、大学を辞めさせられたりはしないだろう。
「マジか。でもここに来るってことはゲイでしょ? バレてもお互い様じゃね?」
言われてみれば、その通りだ。一瞬頭が真っ白になったが、冷静に考えれば同性愛者であることが分かったからと言って、俺に何か不都合があるかと言えば思い付かない。
寧ろ社会的立場のある鳥海先生の方が、アウティングによるリスクは高いだろう。
「でも先生さん、結構シュウの好みじゃん? すらっとした長身の人が好きなんでしょ?」
「……いや、でもあの人多分ノンケだぞ」
大体のゲイなら、話してみれば察しがつく。話し方や纏っている雰囲気、俺を見る目で、何となく分かるものなのだ。
しかし、先生からは一切何も感じなかった。とすれば、ますます俺の存在を知られるわけにはいかない。
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