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陽川花火編
第三話 再会⑤
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「……君に、私と一生共に居たいと思わせられなかった。それは、私が不誠実だったからです。脩君には何の非もありません」
俺は今どんな顔をしているのだろう。少なくとも先生に、気を遣わせるような顔をしているのだと思う。
と、先生がソファから立ち上がって、俺の正面に片膝をついて座った。そして右手を差し出し、優しく微笑む。
俺はその瞳を真っ直ぐに見据えた。虹彩の中に瞬くように燃える熱情を認めて、心臓の音が高鳴る。
「今、君がまだ……私を想う気持ちが少しでもあったなら、どうか手を取ってくれませんか。私は生涯を賭けて、君への愛を証明してみせます」
――ああ、俺はこの人のことが、どうしようもなく好きなのだ。
視界が端の方から歪んで、先生の顔もろくに見えない。差し出された手と先生の顔を交互に見て、俺は膝の間で組んだ手を、強く握った。
「俺は今でも、あんたが……芳慈さんが好きだ……」
溢れ出る感情と同時に思い出したのは、泣きながら俺に訴え掛ける高校生の姿だった。
「……でも、駄目だ……その手は握れない……!」
自分で蒔いた種だ。罪を犯した。俺はまだ、その罰を受けていない。
「俺は芳慈さんと別れてから、一人の人間の心を踏みにじったんです……到底許されることじゃない……! 俺だけ、幸せになろうだなんて……虫が良過ぎるでしょう」
先生――芳慈さんは、「そうですか」と少し寂しそうに笑んで立ち上がり、俺から少し離れたベッドの上に腰を下ろした。
「でも君が、まだ私を好きでいてくれたこと、そして私と生きる未来を幸せだと思ってくれているのだと分かって、嬉しいです」
ジャケットのポケットからハンカチを取り出して、俺に手渡す。結構酷い顔になっているんだろう。居酒屋でおっさんがおしぼりで拭うように、顔全体を両手で乱暴に拭くと、芳慈さんはふっと噴き出すように笑った。
「……君が、自分の罪が許されたと思う時まで、待っていてもいいですか」
俺はその問いに適当な言葉が思い浮かばず、俯く。そんな日が来ると、今はまだ思えないから。
「できれば、私の身体が元気なうちが良いのですが。脩君はまだまだ若いですけれど、私はもうすぐ知命ですから」
そう言った後、「年齢のことで見限られるかもしれませんね」と苦笑する。
「では、そろそろ出ましょうか。まもなく最終電車が出てしまう時間でしょう?」
「……そう、ですね」
もうそんな時間なのかと名残惜しさを覚えながら、重い腰を上げる。
「私も泊まるホテルを探さなければなりませんし」
俺のジャケットを取り、手渡す芳慈さんを見て目が点になる。
「あの……それなら、このままここに泊まればいいんじゃないですか」
この広いベッドを椅子代わりに使っただけで数千円払って別のホテルに泊まるよりも、明らかにこのまま一泊した方が楽だし、得だ。ラブホだからと言って、ビジネスホテル程度の設備やアメニティはある。
「ええと……ここは一人でも泊まれるのですか? 見たところオートロックになっていたので、脩君だけ部屋を出ることはできるのかどうか……いえ、一度代金を支払ってから、もう一度入り直せばいいんですかね?」
俺は今どんな顔をしているのだろう。少なくとも先生に、気を遣わせるような顔をしているのだと思う。
と、先生がソファから立ち上がって、俺の正面に片膝をついて座った。そして右手を差し出し、優しく微笑む。
俺はその瞳を真っ直ぐに見据えた。虹彩の中に瞬くように燃える熱情を認めて、心臓の音が高鳴る。
「今、君がまだ……私を想う気持ちが少しでもあったなら、どうか手を取ってくれませんか。私は生涯を賭けて、君への愛を証明してみせます」
――ああ、俺はこの人のことが、どうしようもなく好きなのだ。
視界が端の方から歪んで、先生の顔もろくに見えない。差し出された手と先生の顔を交互に見て、俺は膝の間で組んだ手を、強く握った。
「俺は今でも、あんたが……芳慈さんが好きだ……」
溢れ出る感情と同時に思い出したのは、泣きながら俺に訴え掛ける高校生の姿だった。
「……でも、駄目だ……その手は握れない……!」
自分で蒔いた種だ。罪を犯した。俺はまだ、その罰を受けていない。
「俺は芳慈さんと別れてから、一人の人間の心を踏みにじったんです……到底許されることじゃない……! 俺だけ、幸せになろうだなんて……虫が良過ぎるでしょう」
先生――芳慈さんは、「そうですか」と少し寂しそうに笑んで立ち上がり、俺から少し離れたベッドの上に腰を下ろした。
「でも君が、まだ私を好きでいてくれたこと、そして私と生きる未来を幸せだと思ってくれているのだと分かって、嬉しいです」
ジャケットのポケットからハンカチを取り出して、俺に手渡す。結構酷い顔になっているんだろう。居酒屋でおっさんがおしぼりで拭うように、顔全体を両手で乱暴に拭くと、芳慈さんはふっと噴き出すように笑った。
「……君が、自分の罪が許されたと思う時まで、待っていてもいいですか」
俺はその問いに適当な言葉が思い浮かばず、俯く。そんな日が来ると、今はまだ思えないから。
「できれば、私の身体が元気なうちが良いのですが。脩君はまだまだ若いですけれど、私はもうすぐ知命ですから」
そう言った後、「年齢のことで見限られるかもしれませんね」と苦笑する。
「では、そろそろ出ましょうか。まもなく最終電車が出てしまう時間でしょう?」
「……そう、ですね」
もうそんな時間なのかと名残惜しさを覚えながら、重い腰を上げる。
「私も泊まるホテルを探さなければなりませんし」
俺のジャケットを取り、手渡す芳慈さんを見て目が点になる。
「あの……それなら、このままここに泊まればいいんじゃないですか」
この広いベッドを椅子代わりに使っただけで数千円払って別のホテルに泊まるよりも、明らかにこのまま一泊した方が楽だし、得だ。ラブホだからと言って、ビジネスホテル程度の設備やアメニティはある。
「ええと……ここは一人でも泊まれるのですか? 見たところオートロックになっていたので、脩君だけ部屋を出ることはできるのかどうか……いえ、一度代金を支払ってから、もう一度入り直せばいいんですかね?」
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