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番外編
番外編③ 秘められた真実⑦
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好きで働いている獣人ばかりではないのではないか。想像はしていたが、ルシュディーが、と考えると胸がちくりと痛んだ。
「あいつ、他の羊のΩと違って体でかいし、そのせいで客があんまりつかないんだ。だから外から来た荒っぽい犬族とか、変なシュミの客でも相手にしなきゃいけないこととかあって……何回も酷い目に遭わされてきたんだ。身体が頑丈だからって、俺みたいなのには絶対やらないようなこととかさ」
ルシュディーのことを思い浮かべると、快活に口を開けて笑う姿が一番初めに目に浮かんだ。そのことが余計に痛々しく思えた。
「十二で水揚げした時が、あいつが泣いた最初で最後の日。あの日以降弱音も吐いたことないよ。ルシは自分の人生の、全部を諦めて全部を受け入れることにしたんだ。ここから抜け出すには、客に高い金を払ってもらってもらわれるしかない。けど、その可能性が自分には無いって……」
ミーナーは僕の服を掴んで、再び僕を睨みつけた。しかしその目には涙が浮かんでいた。
「だから、その気がないなら、あいつが期待するような真似すんじゃねーよ……! お前にとってはただのその辺の一人の娼夫だろうけど、あいつにとってはたった一人の『運命』なんだよっ……!」
──『運命』。
初めてルシュディーと出会った日、彼は瞳を爛々と輝かせて僕を見詰めた。失ったはずの希望を見出したかのように。
涙を拭って、ミーナーは来た道を戻っていった。僕は一人呆然とその場に立ち尽くし、しばらくして店へと道を引き返す。
αに生まれた僕は、幼い頃は良いとは言えない環境だったが、今は国王の従者として幸せな生活ができている。
しかし、僕がもしΩに生まれていたら、僕もルシュディーと同じように娼夫になっていたはずだ。夜毎好きでもない相手に身を委ね、代金を受け取って生きる生活。ミーナーのように割り切れる器用さがあればいいが、そうでなければ心が先に擦り切れてしまう。
千切れそうな糸を繋ぎ止めるのは、彼や彼女達にとって『運命の番』という存在なのかもしれない。
考えたことがなかった。陛下にとっての『運命の番』がロポであったように、僕にもそんな相手が現れるなんてことは。
ルシュディーがそうだという確証は、正直なところ、ない。陛下はロポに出会った瞬間に解ったと仰っていたが、僕にはそれほど惹きつけられるような感覚がないからだ。出会った時にミーナーが言っていたように、客への「常套句」だったのでは、とさえ思ってしまう。
しかし、それなら尚更、僕がαである以上、必要以上に彼に関わるべきではない。両親のことを知るために、ルシュディーを利用しているだけの僕が。
店に戻ると、店の出入り口の前に見慣れない羊族の高齢の男女が立っていた。二人は僕を見ると驚いたように目を丸くし、特に婦人の方は涙を拭うような様子を見せた。
「話はルシュディーから聞いている。とりあえず中に入ってくれ。奥の部屋でお前さんの聞きたいことを話そう」
そう男性の方が店の戸を開けて招き入れる。すぐに、前にルシュディーが言っていた店主の「おやっさん」とその妻で表通りに店を構える「大姐さん」なのだと分かった。
店主に店の一階の奥にある応接間と思われる部屋に通された。テーブルを挟んで向かい合わせにソファに腰を下ろす。ついに、両親のことを知る人物に出会ったのだと思うと妙な緊張感があった。
「あんたを見た時、あの子の番かと思って驚いたよ。あまりにも父親に瓜二つだからね」
「僕の父を知っているんですか……⁉︎」
思わず前のめりになって大きな声を出してしまった。咳払いをして座り直す。
「忘れるもんかね。あんたの母親もよく知ってるよ。何せうちの店の子だったんだからね」
婦人は懐かしむように、少し悲しそうに遠くに目を遣ると、僕が生まれる前の話を語り始めた。
「あいつ、他の羊のΩと違って体でかいし、そのせいで客があんまりつかないんだ。だから外から来た荒っぽい犬族とか、変なシュミの客でも相手にしなきゃいけないこととかあって……何回も酷い目に遭わされてきたんだ。身体が頑丈だからって、俺みたいなのには絶対やらないようなこととかさ」
ルシュディーのことを思い浮かべると、快活に口を開けて笑う姿が一番初めに目に浮かんだ。そのことが余計に痛々しく思えた。
「十二で水揚げした時が、あいつが泣いた最初で最後の日。あの日以降弱音も吐いたことないよ。ルシは自分の人生の、全部を諦めて全部を受け入れることにしたんだ。ここから抜け出すには、客に高い金を払ってもらってもらわれるしかない。けど、その可能性が自分には無いって……」
ミーナーは僕の服を掴んで、再び僕を睨みつけた。しかしその目には涙が浮かんでいた。
「だから、その気がないなら、あいつが期待するような真似すんじゃねーよ……! お前にとってはただのその辺の一人の娼夫だろうけど、あいつにとってはたった一人の『運命』なんだよっ……!」
──『運命』。
初めてルシュディーと出会った日、彼は瞳を爛々と輝かせて僕を見詰めた。失ったはずの希望を見出したかのように。
涙を拭って、ミーナーは来た道を戻っていった。僕は一人呆然とその場に立ち尽くし、しばらくして店へと道を引き返す。
αに生まれた僕は、幼い頃は良いとは言えない環境だったが、今は国王の従者として幸せな生活ができている。
しかし、僕がもしΩに生まれていたら、僕もルシュディーと同じように娼夫になっていたはずだ。夜毎好きでもない相手に身を委ね、代金を受け取って生きる生活。ミーナーのように割り切れる器用さがあればいいが、そうでなければ心が先に擦り切れてしまう。
千切れそうな糸を繋ぎ止めるのは、彼や彼女達にとって『運命の番』という存在なのかもしれない。
考えたことがなかった。陛下にとっての『運命の番』がロポであったように、僕にもそんな相手が現れるなんてことは。
ルシュディーがそうだという確証は、正直なところ、ない。陛下はロポに出会った瞬間に解ったと仰っていたが、僕にはそれほど惹きつけられるような感覚がないからだ。出会った時にミーナーが言っていたように、客への「常套句」だったのでは、とさえ思ってしまう。
しかし、それなら尚更、僕がαである以上、必要以上に彼に関わるべきではない。両親のことを知るために、ルシュディーを利用しているだけの僕が。
店に戻ると、店の出入り口の前に見慣れない羊族の高齢の男女が立っていた。二人は僕を見ると驚いたように目を丸くし、特に婦人の方は涙を拭うような様子を見せた。
「話はルシュディーから聞いている。とりあえず中に入ってくれ。奥の部屋でお前さんの聞きたいことを話そう」
そう男性の方が店の戸を開けて招き入れる。すぐに、前にルシュディーが言っていた店主の「おやっさん」とその妻で表通りに店を構える「大姐さん」なのだと分かった。
店主に店の一階の奥にある応接間と思われる部屋に通された。テーブルを挟んで向かい合わせにソファに腰を下ろす。ついに、両親のことを知る人物に出会ったのだと思うと妙な緊張感があった。
「あんたを見た時、あの子の番かと思って驚いたよ。あまりにも父親に瓜二つだからね」
「僕の父を知っているんですか……⁉︎」
思わず前のめりになって大きな声を出してしまった。咳払いをして座り直す。
「忘れるもんかね。あんたの母親もよく知ってるよ。何せうちの店の子だったんだからね」
婦人は懐かしむように、少し悲しそうに遠くに目を遣ると、僕が生まれる前の話を語り始めた。
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