2 / 64
エピソード1-1
しおりを挟む
とある白昼。
目の前にはよく昔のドラマに出てくるような山積みにされた吸殻がある。
おそらくこれ以上積めないだろうというくらいで、むしろすごいと誰かに写真でも撮って送りたいくらいの状態だ。
まあ、友達もなく夫にも内緒で訪れた場所で見たこの情景を送る相手なんていないけど。
とにかく眼の前にあることでどうにも仕方なく目を奪われている。
なんせ、初めて訪れた場所だからむやみにあちこちに視線を送って値踏みしているように見えたら失礼だし。
ただ
(私はなんてこんな場違いな場所にいるんだろう。)
などと自分の足でここまで来ておいて、そんなことを佐々木千草は思っていた。
まあ、この時間帯にに夫がジェットコースターのような心境を送っているなんて、思いもしないけれど。
ここはあるビルの一室。
表通りから一つ次の通りにこのビルへと入る階段があるので、企業で働いていた頃ならともかく、普通の専業主婦が用事もなく立ち入らないような少し寂れた場所にあった。
ここの部屋の家主。
名前は、御幸 来夢という人の事務所。
自分から望んでここには来たが、最初からここを目的地にしてたわけじゃない。
ほんの小一時間前に渡された名刺にあった住所を検索し最寄りの駅まで来て、交番でよく分からずに聞いてたどり着いたのがここだ。
交番にあえて寄ったのは
(まあ、なんかあって事件に巻き込まれたら、思い出してくれるかも…)
という保険も兼ねてだ。
そんなこと、忙しい警察官は多分覚えているはずがないのに。
ビルの前を何度か行き来したが、表通りと違いそんなに人の姿はないから不審がられるということも多分ないと思う。
意を決して何事もないように、中に入りとりあえず郵便受けを流し見る。
きっとこういう仕草は誰かに見られたら、不審者に見えたかもしれない。
郵便受けは、どの面にも部屋番号は貼られてはいるが、会社名とかそういうのはなかった。
空き家と思われるところは、ガムテで塞がれている。
このビルが本当に目的地か自信がないのもあり、目的の部屋の郵便受けを覗くとDMが何通か見えた。
投入口から少しはみ出るように入れてあったDMをハンカチごしに少しだけ引っ張り出す。全部引っ張り出さないのは誰かに万が一見られたとしても、探している場所を確認したくてと言い訳するためだったが、ハンカチを取り出して触っている時点で不審者だったと思うが、そんなこと気づきもしなかった。
受取人名に御幸という文字を見つけた。おそらくここで間違いないようだ。
目の前にはよく昔のドラマに出てくるような山積みにされた吸殻がある。
おそらくこれ以上積めないだろうというくらいで、むしろすごいと誰かに写真でも撮って送りたいくらいの状態だ。
まあ、友達もなく夫にも内緒で訪れた場所で見たこの情景を送る相手なんていないけど。
とにかく眼の前にあることでどうにも仕方なく目を奪われている。
なんせ、初めて訪れた場所だからむやみにあちこちに視線を送って値踏みしているように見えたら失礼だし。
ただ
(私はなんてこんな場違いな場所にいるんだろう。)
などと自分の足でここまで来ておいて、そんなことを佐々木千草は思っていた。
まあ、この時間帯にに夫がジェットコースターのような心境を送っているなんて、思いもしないけれど。
ここはあるビルの一室。
表通りから一つ次の通りにこのビルへと入る階段があるので、企業で働いていた頃ならともかく、普通の専業主婦が用事もなく立ち入らないような少し寂れた場所にあった。
ここの部屋の家主。
名前は、御幸 来夢という人の事務所。
自分から望んでここには来たが、最初からここを目的地にしてたわけじゃない。
ほんの小一時間前に渡された名刺にあった住所を検索し最寄りの駅まで来て、交番でよく分からずに聞いてたどり着いたのがここだ。
交番にあえて寄ったのは
(まあ、なんかあって事件に巻き込まれたら、思い出してくれるかも…)
という保険も兼ねてだ。
そんなこと、忙しい警察官は多分覚えているはずがないのに。
ビルの前を何度か行き来したが、表通りと違いそんなに人の姿はないから不審がられるということも多分ないと思う。
意を決して何事もないように、中に入りとりあえず郵便受けを流し見る。
きっとこういう仕草は誰かに見られたら、不審者に見えたかもしれない。
郵便受けは、どの面にも部屋番号は貼られてはいるが、会社名とかそういうのはなかった。
空き家と思われるところは、ガムテで塞がれている。
このビルが本当に目的地か自信がないのもあり、目的の部屋の郵便受けを覗くとDMが何通か見えた。
投入口から少しはみ出るように入れてあったDMをハンカチごしに少しだけ引っ張り出す。全部引っ張り出さないのは誰かに万が一見られたとしても、探している場所を確認したくてと言い訳するためだったが、ハンカチを取り出して触っている時点で不審者だったと思うが、そんなこと気づきもしなかった。
受取人名に御幸という文字を見つけた。おそらくここで間違いないようだ。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる