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エピソード15-2
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約束の時間が近いので、妻はキッチンとリビングを行き来して忙しそうだった。
忙しそう。
見て、気づいていたのに。
それを手伝おうということを完全に意識にないので、こういうところは父親からも夫からも程遠い。
BBQのときは役割として与えられていたので、動けたがここではそうもいかないのだ。
仕事は指示がなく動けていても、そこは長い期間で培った経験のもとで動けるようになっただけで、家事はもう妻の「聖域」だから、地雷を踏みたくないのだ。多分だけど。
だから、とりあえず洗濯物を片付け終えて、また手持ち無沙汰になったから、ベランダから続きになっているバルコニーへと移動して二人が見えないかとのんきに移動した。
すると部屋にいるはずの汐音が外に見えた。
いつの間にか勝手に迎えに出たらしい。
ちらっと妻を見る。
忙しくしている妻を、煩わせたくない。
きっと妻は、汐音は大人しく遊んでいると思っているだろうから。
なので、そっとスマホと鍵だけ持ってなるべく音を立てないように外に出た。
一緒に待って、戻ればいい。
僕にだってそのくらいならできるさ。
急いで降りてきたのに。
上で汐音が見えたところはこの建物の敷地内だったが、エントランスから見えるはずのその場所には汐音は見えない。
ここに降りてくるまでの間に移動したのだろうか。
まさか、敷地の外にでてしまったのか。
幼稚園に通う年齢の行動力は、匡尋の予想を超えているようだ。
そう思いながら敷地の境目にある垣根のところまで来たが、それでも汐音は見当たらない。
「汐音?」声をかけてみたが、応答がない。
垣根のあたりで左右を伺うと、通りの向こうに人影が見える。高橋と森さんだった。
のんきに手を振りながら近づいてきて
「佐々木さん、こんばんは。なんかすみません、お出迎え。ありがとうございます。」
と、高橋がいつもの調子で言ってきた。
「お出迎えというわけじゃないが…。」
時計を見ると、予定の5分前くらいだった。
視線を戻すと、不意に森さんが視界に入ったので
「ああ、いや。あ、昨日は…。」
声をかけかけたが、途中で辞めた。森さんから、その件はいいじゃないですかと言う眼差しを感じたからだ。
昨日のことを知らない高橋は、少しキョトンとしていた。
「あれ、どしたんです?二人、変ですよ。」
と、高橋が訝しがった。
「な、なんでもないよ。そうだ、汐音が待ちくたびれてその辺にいるはずなんだけど。」
「そうなんですか?」
とキョロキョロと探してくれている。
すると森さんが
「あ、あれそうじゃないですか?」と指差した。
その視線の先に、チョコンと座っている汐音が見えた。
「あ、あいつあんなところに…、おーい、汐音!二人が来たぞ。」
と、僕は大声で叫んだ。これが間違いだったのかもしれない。
汐音は気がついて、すくっと立ち上がりトコトコとこちらに向かって歩き出した。
その時である。
忙しそう。
見て、気づいていたのに。
それを手伝おうということを完全に意識にないので、こういうところは父親からも夫からも程遠い。
BBQのときは役割として与えられていたので、動けたがここではそうもいかないのだ。
仕事は指示がなく動けていても、そこは長い期間で培った経験のもとで動けるようになっただけで、家事はもう妻の「聖域」だから、地雷を踏みたくないのだ。多分だけど。
だから、とりあえず洗濯物を片付け終えて、また手持ち無沙汰になったから、ベランダから続きになっているバルコニーへと移動して二人が見えないかとのんきに移動した。
すると部屋にいるはずの汐音が外に見えた。
いつの間にか勝手に迎えに出たらしい。
ちらっと妻を見る。
忙しくしている妻を、煩わせたくない。
きっと妻は、汐音は大人しく遊んでいると思っているだろうから。
なので、そっとスマホと鍵だけ持ってなるべく音を立てないように外に出た。
一緒に待って、戻ればいい。
僕にだってそのくらいならできるさ。
急いで降りてきたのに。
上で汐音が見えたところはこの建物の敷地内だったが、エントランスから見えるはずのその場所には汐音は見えない。
ここに降りてくるまでの間に移動したのだろうか。
まさか、敷地の外にでてしまったのか。
幼稚園に通う年齢の行動力は、匡尋の予想を超えているようだ。
そう思いながら敷地の境目にある垣根のところまで来たが、それでも汐音は見当たらない。
「汐音?」声をかけてみたが、応答がない。
垣根のあたりで左右を伺うと、通りの向こうに人影が見える。高橋と森さんだった。
のんきに手を振りながら近づいてきて
「佐々木さん、こんばんは。なんかすみません、お出迎え。ありがとうございます。」
と、高橋がいつもの調子で言ってきた。
「お出迎えというわけじゃないが…。」
時計を見ると、予定の5分前くらいだった。
視線を戻すと、不意に森さんが視界に入ったので
「ああ、いや。あ、昨日は…。」
声をかけかけたが、途中で辞めた。森さんから、その件はいいじゃないですかと言う眼差しを感じたからだ。
昨日のことを知らない高橋は、少しキョトンとしていた。
「あれ、どしたんです?二人、変ですよ。」
と、高橋が訝しがった。
「な、なんでもないよ。そうだ、汐音が待ちくたびれてその辺にいるはずなんだけど。」
「そうなんですか?」
とキョロキョロと探してくれている。
すると森さんが
「あ、あれそうじゃないですか?」と指差した。
その視線の先に、チョコンと座っている汐音が見えた。
「あ、あいつあんなところに…、おーい、汐音!二人が来たぞ。」
と、僕は大声で叫んだ。これが間違いだったのかもしれない。
汐音は気がついて、すくっと立ち上がりトコトコとこちらに向かって歩き出した。
その時である。
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