煙の向こうに揺れる言葉

らぽしな

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エピソード 15-1

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少し遅れて病院についたときに見えた妻の姿に僕は声もかけられず、また逃げ出した。
そして、こういうときにも発揮される不思議な能力で、初めてきたはずの病院の喫煙所へとたどり着いて逃げ込んだ。

そしてこんなときも僕の手はあらゆるポケットを弄り、タバコを探している。
鍵とスマホはあるがタバコは…どうしたっけ。

深い溜め息をついたとき、喫煙室に誰か入ってきた。

「佐々木さん、よかったらこれ。」
そう言って、高橋が自分のタバコを出してくれた。

一瞬、手を伸ばしかけたが
「…あ、ありがとう。でも、…いいや。」
といって、行き場のなくなった手で顔を覆った。

あれだけ、探していたのに高橋の顔を見た途端、吸いたい気分がどこかへと霧散した。
ああ、僕はいつから間違ったのだろうか。

良い夫でも良い父親でもない。
エセ夫、エセ父親なのかもしれない。

そういう事なのだと腑に落ちたところでやり直しがきくわけでもないと思い至り、落ち込んで帰ってきた足で僕は反省したのもつかの間、すぐには習性から離れられないようで、まっすぐいつもの場所に向かい、今日何本目かのタバコに火をつけてから、またひとしきり反省だけはしていた。

妻が黙々と今日の準備を一人でしていると気づいたのは、タバコを吸い終わったあとだ。
「思っているそばから、ダメだな僕は。」
ふとそう思った時、なにか動くものに気づいた。

洗濯物が風に揺れている。
普段はそれだけの感想だが、何気に触ってみると湿り気も感じない。

今日はいい感じに天気に恵まれ、風も程よくあったからもう乾いたのだろう。
「よし。」
変わろうと思ったそのタイミングで、手伝えることが舞い込んで来たのならこれはいいことだと思えて、干してあるものすべて触ってみる。

厚手のモノ以外、もう取り込んでいい状態になっていた。
これなら、僕にも手伝える。

厚手のモノ以外取り込んで、部屋に戻ると大人しく汐音が何かをしていた。
どうやら、お気に入りのものを部屋中に飾っているようだ。

まだまだ子供らしい一面を持っている。
邪魔しないように、そのまま寝室まで取り込んだものを持ち込んでそこで畳んだりして片付けた。

居間に戻っても、妻はいろいろ準備を進めている。
ここで、手伝おうかと言えたら良かったのだろうけど、思い立ってもなかなか声をかけられない。本当にヘタレすぎて、きっと妹が見たら呆れられるやつだ。

結局、ダラダラと過ごしてしまった。
気づけば、もうすぐ約束の時間に差し掛かるところだった。





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